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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第三章 呪われた愛しいプレゼント
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page.77

      ***



 しばらくして、ほんの少しだけマーリンの容体が落ち着いた頃、アーサーが部屋に戻ってきた。


「……殿下」

「そのままで良い。横になっていろ」


 起き上がろうとしたマーリンを、アーサーが手で制した。

 それでも、アーサーの前で横にはなっていられないのか、マーリンが上半身を起こそうとしたので佐和が手助けする。


「具合はどうだ」

「大丈夫です」


 マーリンの返事にアーサーがバツが悪そうに顔をしかめた。

 マーリンから目をそらし、あっちこっちに視線を彷徨わし、「あー」とか「その」と唸っている。


「……マーリン。すまなかった」


 まさかの謝罪に佐和は目を剥いた。

 あの、アーサーが謝った!?


「殿下……」

「お前の言う事に……耳を傾けるべきだった。それに、お前が庇わなければ……呪われていたのは俺だ」

「え?」


 魔術の矛先はイグレーヌに対して向けられたのではなかったのだろうか。


「あの時、床に倒れ込んだ際、呪われたリボンが蛇になったのを俺は見た。その蛇が俺に狙いを定めていたのも気付いた。あれが噛みついてきた時、お前が手を伸ばして、俺を庇ってくれなければ、噛まれていたのは俺だ」


 どうやら、発動はイグレーヌが必要だったが、誰を狙うかまでは組み込まれていない魔術だったらしい。

 もし、アーサーが噛まれていたら、確実にもうアーサーはこの世にいない。


「お前に救われた。礼を言う」

「……殿下」

「それで……悪いんだが。陛下がお前から直接話を聞きたいとおっしゃっている。出られるか?」

「何言ってるんですか!?相手は重病人ですよ!!」


 しかも、普通の人なら死んでいるような!

 マーリンを庇って立ち上がった佐和に、アーサーも申し訳なさそうに目を伏せた。


「……わかっている」

「わかってるなら、なんで……!」

「サワ」


 佐和が抗議を続けようとしたのを、マーリンが引き止めた。


「大丈夫です。行きます。殿下」

「マーリン!!」

「……悪い」


 悪いのはアーサーじゃないとわかっていても、苛立ちは隠せない。

 アーサーとイグレーヌを助けて、こんな状態になったマーリンを呼びつけるなんて……。

 佐和の中で、ウーサー王の株が大暴落していく。

 王様だからといって、何をしても許されるわけじゃない。むしろ、アーサーを助けたマーリンを気遣うべき立場なのに。どうしてそんな事も考えられないのか。

 ベッドから立ち上がろうとしたマーリンを佐和は横から支えた。反対側をバリンが支えてくれる。


「私も行きます。殿下」


 こんな状態のマーリンを放っては置けない。


「……ああ」


 アーサーは反対しなかった。

 マーリンの速度に合わせてゆっくりと歩き出す。

 魔術師を憎み、魔術師のみに圧政を敷く冷酷な王。

 一度見かけたけれど、今度は違う。マーリンは直接、ウーサーと言葉を交わすことになる。

 自分の両親と親友を、間接的に死に追いやった原因の人物と、こんな状態で。

 何かができるわけではないけれど、側にいることだけは佐和でもできる。

 ぐっと佐和は力を込めて、マーリンを支えて歩いた。




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