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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第二章 足がかりの騎士
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page.41

       ***



「ここもダメかぁー」


 もう何件目かもわからない宿屋のドアから出ながら、思わず溜息をついた佐和の横でマーリンも心なしか疲れたような顔をしている。


「すごいね…全滅だよ……」


 最初に尋ねた宿も次の宿もその次の宿もその次も、尋ねた宿全てが満室だった。


「どうしよう…もう夕方だよ……野宿かなぁ……」

「そこのお嬢さん!どうだい一つ!」


 途方に暮れていた所に唐突に呼びかけられ、声の主を探してきょろきょろ辺りを見回すと、宿の向かいに出ていた出店にいたガタイのいいおじさんが何か果物を手にしながら佐和に向かって突き出していた。


「いえ、結構です」

「まあまあ、というか今聞こえちゃったんだが、野宿はやめとけ。危ねえから」

「危ない?なんでですか?」


 おじさんの何気ない発言が気になり、店先に近寄るとおじさんがこそこそと話しだした。


「今な、王都に人さらいが出るんだよ」

「人さらい?」


 マーリンも店主の話が気になるのか佐和の横に立っておじさんの話に聞き入っている。


「ああ、戦争が終わっただろ?こういう混乱時には出るんだよ。人攫って奴隷商人に売り渡す奴がな。夜はそいつらが町をうろついているから野宿なんてしようものなら、即捕まるぞ、こんなキレイな姉ちゃんなら特にな」


 そう言って似合わないウィンクをしたおじさんが、なんだか妙に御茶目に見えて思わず笑ってしまう。


「ありがとうございます」


 リップサービスだとわかっているので佐和もあえて真面目にはとらえず、気軽な返事を返した。


「んで、一つどうだ?」


 そう言いながら店主がにやっとして果物をもう一度目の前に掲げた。

 その含んだ笑みに佐和は苦笑するしかない。

 そういう意味か!


「情報料ってことですか……」


 佐和のその言葉に店主は口角をさらにあげた。

 これはもう払わざるをえない雰囲気である。


「えっと……その……私、お金持ってなくて……」

「あ?」


 途端、店主の機嫌が悪くなる。


「え……いや。その」


 勝手に話しかけてきたのはそっちなのに……商売人なら相手の懐具合まで読んでよ……!

 険悪な雰囲気をどうにかしたいけれど、一銭も持っていないのは本当のことなのでどうしようもない。


「えっと……」

「俺が払う」


 横から見かねたマーリンが店主に見たことのない小さな硬貨を払った。

 それを受け取った店主は佐和とマーリンを交互に見比べてから、渡された硬貨を握りしめるとさっきまでの雰囲気を全く感じさせないほど破顔した。


「こいつはまいった!確かに男の連れがいるなら金のない振りをしないとな!できる女じゃねえか!」


 そう言って豪快に笑った店主は佐和に持っていた果物を一つ渡した。見た目はリンゴだが、色は―――グロい紫……。

 持った感じはリンゴほど固くはない。どちらかというと桃みたいな質感だ。


「えーっと……」

「もしかして食べたこと、ない?」


 渡された果物に戸惑っている佐和の様子を見たマーリンが、佐和の手のリンゴみたいな果物を取り上げると上のヘタの部分を折った。そのまま紫の皮を剥いていく。バナナみたいに綺麗に皮が剥けていくのが面白い。

 上半分を剥いたところでマーリンは佐和に果物を返してくれた。


「…………食べないのか?」

「…………」


 せっかく買ってもらったものだ。大事に食べなきゃいけない。

 それはわかってる。けど――――皮以上に中身がグロい。茶色というか黒いというか。とても食欲をそそる色ではなかった。

 けど……。


「…いただきます!」


 意を決して一口かじった。


「……なにこれ!?お、おいしい!!」


 口にいれた瞬間信じられない味がした。一言でいうと―――チョコだ。ベリーソースのかかったチョコ…というよりチョコフォンデュにつけたいちごみたいな甘さとみずみずしさがある。


「マーリン!すっごいおいしい!!」


 もう見た目は気にならない。夢中になって食べ始めた。

 こっちの世界に来て、もちろんチョコレートなんて物はないので食べられていなかったけれど、何を隠そう佐和はチョコレートが大好きだ。

 特に落ち込んだ時や、体調の悪い時には食べたくなる。だから、本当はすっと食べたくてしょうがなかったこの味は余計においしく感じる。


「わー!おいしいよぉー!って、何!?」


 なぜか店主とマーリン二人ともが佐和をじっと見つめている。


「あ、ごめん!マーリン」


 呆然とする二人の様子を見てようやく自分が意地汚く食べまくっていることに気付き、慌てて果物を半分に割って口をつけていなかったほうをマーリンに差し出した。


「はい、マーリンの分」

「え?」

「食べないの?っていうか、もともとマーリンのお金だし、ごめん、残り全部食べる!?私結構食べちゃったんだけど…」

「……いや、いい。全部食べて」

「え、でもこんなおいしいのに…」

「……いい……俺は……」


 なぜかマーリンは言い淀んでいる。

 口数の少ないマーリンの気持ちは察しないといけないと思い、気持ちを読み取ろうと佐和はマーリンを観察した。


「もしかして……マーリン、これ嫌いなの?」

「……え?ああ、まぁ」

「そっか」


 それなら無理強いするのも悪い。

 佐和は差し出していた果物をひっこめるとそれも頬張った。

 うん、やっぱりおいしい。

 思わず顔がにやけるのを止められない。

 うわー、甘いよー。身体に糖分が染み渡るー。


「いやー、そんなにおいしいって言われると行商冥利につきるね!…お嬢さん、もう一本向こうの通りの酒場に行くといい」

「え?」


 ちょうど食べ終わり、浮かれていた佐和は店主の言うことが理解できずに首を傾げた。


「今この町の宿は戦争で地方から出てきた兵士や傭兵で満室だろう?さっきからあんたらがここらへん行ったり来たりしてるの見ててな。向こうの酒場なら二階を宿として提供してる。地元の人間以外知らないから運がよけりゃ入れるぜ」

「あ…ありがとうございます!」


 頭を下げると朗らかに笑っていた店主の手にはまた果物が握られていた。


「……もう一個ってことですか?」

「いや、その必要はねえよ。お嬢ちゃんのおかげで売れそうだしな」

「え?」


 店主の意味ありげな視線に振り替えると、いつの間にか佐和たちの後ろに人だかりができて果物を覗き込んできている。


「おっさん、こっちにも一個」

「私も一つ」

「ほいよ!じゃあな、お嬢ちゃん達者でな」

「あ」


 もう一度お礼を言う間もなく店主と佐和たちの間に人が割り込んでくる。あっという間に店先には人だかりができてしまった。


「いやー、なんかよくわかんないけど、良いこと教えてもらえたね」

「……すごいな」

「そうだね、すごい人気になったねー」

「いや…そっちじゃなくて」

「ん?」


 人ごみから抜け出し、店主に教えられた店を目指して歩き出す。

 歩きながらマーリンは人だかりのできたさっきの出店を目を細めて眺めた。


「サワが食べたら行列ができた」

「ああ、なんか私の一家って皆そうなんだよ、良いなとか面白いなって思ったものが後から流行るんだよねー」


 佐和が好きになった小説は大抵その後メディアミックスされるし、父親が買った時計は流行になったりするし、母親が買ってくる新商品のお菓子もすぐ人気が出る。海音が気に入った服がその年の流行になったなんてこともあった。だが、別に全部が全部そうとは限らないし、人よりも当たるぐらいの感覚だ。


「いや…というよりも今のは佐和に起因していると…思う」

「私?何で?そんなに声デカかった?」


 感動して周りが見えなくなっていた自覚はあったので、そうだとしたら恥ずかしい。

 一気に青ざめた佐和をなだめるようにマーリンが手を振った。


「いや…そうじゃなくて……おいしそうに食べてたから」

「え?だっておいしかったし」

「いや……その表情が……」

「え?そんなに私の顔やばかった!?」


 マーリンが人目を引くと思うくらいやばい顔つきになってたってこと!?

 だとしたら恥ずかしい。

 自分の頬筋をぐいぐいと手でこねていた佐和の顔を見たマーリンがなぜか視線を外した。


「……もういい」

「え?ちょ、諦めないでよ!マーリン!?私、気になるんだけど!」

「店主が言ってた酒場はここだな」


 ちょっと。と止めたいが、目的地に着いてしまってはしょうがない。佐和は口をつぐんだ。

 他の家と外観は変わらない。ぼろい木造の二階建ての建物だ。頭上で風に揺れているすすけた看板にはお酒の絵が描いてある。

 見上げた視線の先の空はもう夕暮れから夜に変わりつつあって、オレンジと紺の水彩絵の具を混ぜたような色が広がっていた。もう日が落ちるまで時間がない。

 ここが駄目なら本当に人攫いにおびえる夜を過ごすかもしれなかった。緊張しながらマーリンに続いて扉をくぐる。

 店内に入った瞬間、感じたむわっとした熱気に佐和は顔をしかめた。

 何ここ、蒸し暑いっていうか……男臭い!

 狭い店内はかなり賑わっている。いかつい武装をした男から農民の男までが肩を組んで勢いよく酒を飲み合っていた。大学のサークルでよく行った居酒屋独特の騒がしさがなんだか少し懐かしいような気もする。


「いらっしゃい!奥に座んな!」


 扉が開いたことに気付いた店員が顎で奥のテーブルを指した。

 とりあえず言われたとおりの席を目指すが、よっぱらいだらけの中を進んで行くのはなかなか困難だ。妙にふらふらとした足取りの人を避けようとしても、そいつも突然避けた方向にふらついたりして危ないことこのうえない。


「サワ」


 あやうくよっぱらいに足を踏みつぶされそうになった所をマーリンが腕を引いて助けてくれた。そのままマーリンに引っ張られるようにして席に向かう。


「ありがと、マーリン」

「ここで待っててくれ。店主に部屋が空いてないか聞いてくる。何かあったらすぐ呼んで」

「ありがとねー」


 なぜか後ろめたそうに去っていくマーリンに佐和はのんきに手を振った。

 たぶんこんな喧騒の中に佐和を置いていくのが心苦しいのだろうが、とても二人で出歩けるような状況ではないほど酒場は混み合っている。下手に二人で動くより安全だろう。

 佐和の予想通り、混み合った店内でマーリンの背中はすぐに見えなくなった。

 手ぶらになった佐和だが、下手に辺りを見まわすと酔っ払いにからまれるかもしれない。大人しくテーブルの木目を見つめることにして、年季の入ったテーブルの年輪を目で追っていると自分の向かいに突然、誰かがコップを置いたのを視界の端に捉えた。


「よ、お嬢さん、一人?」


 なんてベタな話しかけ方……。

 そう思って顔を上げた佐和は目の前に座った男を見て驚いた。

 てっきりさっき入口で見た兵士みたいないかつい男を想像していたら、目の前の男は全く違っていた。

 白いよれたシャツにこれも古びた茶色いジャケットを着ている佐和より少し年上ぐらいの男だった。酒場の薄暗さでは正確にはわからないが、茶色の髪が無造作にはねている。ただ不衛生な感じはしない。

 そして、何より顔がなかなかかっこいい。だが、どこかだらしないような、悪巧みをしていそうなニヒルな笑いを茶色の目に浮かべている。

 不思議と汚い恰好をしているのに、どこかしっかりしているようにも見える。清廉とした雰囲気をまとっている男だった。

 顔のレベルがそこそこ高い。こういうタイプは自分に自信がある分、めんどくさそうだ。


「違いますけど?」


 あからさまに不審者を見る眼付になった佐和の顔を見た途端、男は愉快そうに笑った。


「ここらへんじゃ見ない顔つきだよな?どこから来たの?」

「あの辺の星」


 素直に答えるとまた面倒なことになりかねない。

 そう思った佐和は窓の外にいつの間にか出ていた夜空の星を適当に指さしてあっけなく言った。


「ぷっ、あははははは!!」


 何が面白いんだがわからないが男のツボには入ったらしい。お腹痛いと言いながら腹を抱えて爆笑している。


「はー、笑った笑った。でもほんと見ない顔つきだね、かわいいねえー」

「はあ、どうも」


 頬杖をついてこちらを見てくる男の笑顔は人当たりがよさそうだが、どうも佐和には胡散臭く見える。

 いや、そもそも酒場で女に声をかけてくる時点で警戒対象だ。

 こういう相手の褒め言葉は心から可愛いと思っているわけではなく、そう言ってひっかかったらいいな程度のものだ。嫌悪にしろ照れるにしろ反応するのが一番悪い。そっけなく、かつ相手が興味を失うようにするに限る。


「つれないなー」

「すみませんー」

「いやー、謝る気ゼロだねー」


 またも男はくくっと口に手を当てている。

 そんなに面白いものじゃないと思うけど。

 しかし、男には佐和の対応がよほど面白かったらしい。体を乗り出し佐和の顔をじろじろと見てくる。

 対応しくじったかな……。

 居心地が悪いが目をそらしたら負けた気がして、真っ向から見つめ返した。


「うん、やっぱ変わった顔。ふんふん、いいねいいね」


 何かうんうんと一人で納得している。

 早くマーリンが帰ってこないかなと思ったが、戻ってくる気配はない。


「名前なんていうの?」

「エリザベス」

「堂々と偽名名乗るねー」


 なんで見ず知らずの男に本名を教えると思っているのかが理解できない。

 けれど、佐和が最初に考えていたほどどうやら相手も馬鹿ではないらしい。佐和の嘘を的確に見抜いてくる。


「じゃあ、エリザベス。ちょっと頼みたいことあるんだけど、どうかな?」

「あ、無理そうです。ごめんなさい」


 たっぷりと申し訳なさそうに言うと、またまた男は笑った。


「取りつくしまがないなー」

「おい」


 背後からまるで刃物を突き付けられたみたいな殺気と低い声が降ってきた。佐和の横に着いた手の持ち主が前の男を睨みつけているのだとわかった。


「悪いが、俺の連れだ。失礼する」

「あ、マーリン」


 マーリンが佐和の手を取って立たせてくれると、わざと男に見せつけるように肩に手を置いて誘導してくれた。

 おう、マーリンよくわかってるじゃないか。

 こういう相手には、売約済みだと見せつけるのが手っ取り早い。


「行こう、サワ」

「へー、サワちゃんって言うんだー。またねー、サワちゃん」


 マーリンのドスの効いた声も男には効果がなかったらしい。

 始終変わらないへらへらとした笑いを浮かべたまま、佐和に向かって手をひらひら振り続けていた。


「サワ…大丈夫?何かされたりしてない?」


 佐和を引っ張ってマーリンが向かったのは酒場の奥の階段だった。そこを上がって行くと下の喧騒が遠ざかり、かなり静かになる。

 三つ並んだ部屋の一番奥の扉の前まで来てようやく足を止めたマーリンが心配そうに振り返った。


「うん。大丈夫だよ。マーリン、ありがとね。助かったよ。まあ、酔っ払いが絡んできただけだから」


 こういうことなら大学の飲み会でもしょっちゅうある。どちらかというと佐和はかわいい顔立ちではないので絡まれている友人を助けることのほうが多いのが悲しいが。


「本当に平気?」

「大丈夫だってー」


 マーリンは過保護だなあー。

 でも、きっとそれは彼の優しさから出ていることだ。でなければ最初、佐和と会った時に佐和を見捨てていたはずだろう。


「で、部屋とれたの?ここ?」

「ああ」


 扉を開けると六畳ぐらいの大きさの部屋だった。シングルベットが一つと大きな三人掛けの古いソファが一つ。それだけで圧迫感がある狭い部屋だ。奥の窓から入る月明かりだけが部屋を照らしている。


「じゃあ、隣が私の部屋?」

「いや……それが一つしか空いてないらしくて」


 目を泳がせたマーリンの顔を見返すと、バツが悪そうに目を伏せている。


「あ、そうなの?」

「他の部屋も埋まってるらしくて……」

「そっかー、じゃ、しょうがないね」


 部屋に入った佐和はベッドに近寄ると掛布団をめくった。掛布団の下には毛布がある。毛布だけ持ち上げてソファに下ろした。


「マーリンはベッド使ってねー」

「は?」


 ソファで寝られるように毛布を整えていた佐和を見たマーリンが我に返って、慌てて部屋に入ってきた。


「何言ってるんだ。俺がソファで寝る。というか、俺が廊下で寝る」

「マーリンこそ何言ってるの!?廊下でなんてダメだって!下、酒場だよ!?危ないし、風邪ひくし」

「ダメ」

「なんで?ソファとベッドで寝ればいいじゃん」

「ダメだろ!……わかってるのか?……男と女なんだぞ」

「うん?そりゃそうだ。マーリン男だし」


 首を傾げた佐和を見たマーリンが盛大に溜息をついた。「わかってない」と溜息まじりに呟いているのを見てようやくマーリンが何を危惧しているのか思い当たった。


「え?もしかして、マーリンそういうこと言ってる!?やだな!マーリンのこと信頼してるし、大丈夫だよ!」


 本音を言えば出会ったばかりの男女が一部屋で寝るなんて、全く抵抗がないとは言い難いが、マーリンを廊下に寝かすわけにはいかないし、こんなに優しい人が佐和の意思を無視したことをするとは思えない。ベッドとソファなら佐和的にはぎりぎりセーフだ。


「……それともなんかまずい?やばい感じ?男の人って感情と関係なく現象もあるもんね」

「…………大丈夫」


 佐和のあけすけな言い方に、マーリンは眩暈を感じたように手を顔に当てて苦悩しているようだった。

 とても大丈夫には見えないけれど、佐和もさすがに自分が廊下で寝るのは嫌だし、これしかない。


「大丈夫だってマーリン!私なんか絶対無理だから!マーリンにはもっとお似合いの可愛い女の子がいるって!」

「……もういい」


 顔を覆っていたマーリンは佐和の手から毛布を引っぺがすとそのままソファに横になった。


「え!?ちょ!マーリン!私がソファで寝るって!」

「もう寝てる」

「返事してるじゃん!!」

「もう寝た」


 マーリンから毛布を引っぺがそうと試みるが、びくともしない。

 うんうんしばらく唸った後、仕方なく諦めた佐和は靴を脱いでベッドにもぐりこんだ。


「……マーリン私、寝言とかうるさくても許してね……」

「……わかった」


 今さらだけれど、同年代の男の子と同じ部屋で寝ることが気恥ずかしくて、佐和は布団を胸元まで引き上げたまま、マーリンの背中を見つめた。

 マーリンは反対側を向いて寝てくれているが、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。


「あと、寝顔見ないでね。絶対やばいから」

「……わかった」

「ありがと!おやすみ」

「……おやすみ」


 マーリンなら約束したことを破ったりしないだろう。

 安心した佐和は布団にくるまって目を閉じた。なかなか寝付けないかと思ったが、気が付けば意識が遠のいていた。




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