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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
最終部 第十三章 ティンタジェル城攻防戦
376/398

page.375

すみません。先週投稿したと思ったらできていませんでした……。本日アップさせていただきます!

      ***



 ブレイズの作った隠し通路は薄暗かったが、前を歩くアーサーの背中が全く見えないという程では無かった。進んで行くのに支障は無い。しかし、潮の引いた跡なのか所々に水溜まりができていて、どうしても水を掻き分ける足音が反響してしまう。

 やだな……相手に居場所を知らせてるみたいで……。

 サワの考えが正しければ、インキュバスはこの隠し通路の存在を知らないはず。足音のせいで居場所がバレるとは思えないが……。

 やっぱ、私ビビりだなぁー……。

 本当にほとほと冒険には向かない性格だと痛感する。その証拠に他のメンバーは周囲を警戒しつつも、怯えている様子は全く無いというのに。


 「術で作り上げたとはとても信じらない……まるで自然にできた洞窟のようだ」

 「うん、本当にそうだね……」


 背後のイウェインの意見に激しく同意する。

 しゃべった方が気が紛れる。黙って進んでいると、このまま真っ暗な通路の先が冥府へと続いているような錯覚に陥りそうだ……。

 佐和が怖がっていることにイウェインは気づいてくれているのかもしれなかった。

 薄暗い中でも微かに見える洞窟の壁は、どこからどう見ても人の手が入ったようには見えない自然そのままの状態だ。本当に魔術で作った風には思えない。


 「もしかしたら、元からそれらしい物があったのに手を加えたのかもしれませんね。水を引く用水路だったとか」

 「塩水飲むのかー?しょっぱくね?」

 「お前ら……潜入任務だというのに、気の抜ける会話をして……」


 会話に加わったランスロット、ガウェインの声にアーサーが頭を抱えた。その顔を横目で確認したケイが苦笑する。


 「まぁまぁ、無駄に緊張してないのは良いことだって。だけどガウェイン、ランスロット。お前ら二人はちょっと気を付けろよー。先頭と最後尾が一番危険なんだからなー」

 「もちろんです、ケイ殿。今のところ……背後から何かが追ってきたり、仕掛けや魔術が発動したような感じはしません」

 「こっちも同じくだー。多少暗ぇから判りづらいけど、なんか仕掛けがある感じはしねぇな。つーかどこまで続くんだ?これ」


 一本道なので迷いようはないが、無駄に通路が長い気がする。早くもガウェインは代わり映えのしない景色に飽きてきたようだ。


 「もう少し行った先に城の内部に通じる扉までの階段があるはずだから……」

 「マーリン、この隠し通路の道がわかるの?」

 「サワと一緒に日記を見たのと、それからここに来る前にムルジンに散々城の構造を叩き込まれた」

 「へ……へぇー」

 「おっ、マーリンの言う通りだな。先の方に階段が見えるぜー」


 先頭のガウェインの視線の先に、洞窟と同じ岩でできた階段が伸びている。アーサーの後ろから覗きこんだ佐和はその暗さに内心、一歩引き下がった。

 ここまで歩いて来た洞窟とは決定的に何かが違う。上に向かって伸びているはずなのに、登って行けば行くほど濃い暗闇に向かって行くように感じられた。


 「あれがそうだな……。ここからは声を潜める。ガウェインの先行に従って潜入するぞ」


 アーサーの指示にしっかりと皆が頷く。

 ……佐和以外が。


 なに?この……感じ……。

 あぁ、いやだ。

 すごく、すごく行きたくない。

 ぽっかりと口を開けた登り階段をガウェインが踏みしめた。それについて行く皆にそのまま流され、佐和も昇る。

 誰も話していない。足元の潮溜まりも消えた。

 それなのに、佐和の耳に痛いほどの警鐘が鳴り響く。

 それでも……


 行くしかないんだ……。




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