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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第十一章 アヴァロンの島
303/398

page.302

       ***



 水面に映るアーサーとマーリンはただ静かに島に向かっている。その間に佐和は少しだけ目を離して、ダーム・デュ・ラックに向き合った。


「さっきの話、続き聞いても良いですか?私が唯一の抵抗って……」

「あら?聞いていませんか?あなたの役割は創世の魔術師マーリンを導き、アーサー王の新しい御代(みよ)を築きを導く事」

「それは聞いてます」


 佐和はあっさりとランスロットの前でダーム・デュ・ラックがマーリンの正体が魔術師だとばらした事に肝を冷やしたが、ランスロットは我関せずといった態度で明後日の方向をぼんやりと見ている。

 どうやら本当に見ざる、聞かざる、言わざるを貫き通すようだ。


「でも、私には……よくわからないんです。何が正解なのか。二人をどう導けばいいのか。そもそもどうすればアーサーの新しい時代が創られたって言えるんでしょうか?」


 佐和の矢継ぎ早の質問に、湖の妖精は「あらあら、まあまあ」と手を口に当てている。


「『あの方』はご説明してくださらなかったのですね。ふふ、相変わらず手厳しい御方」


 何が楽しいのかわからないが、湖の妖精はそう言って笑いを堪えている。

 『あの方』って……多分、マーリンの持ってる『創世の魔術師の杖』の事だよね……?


「私がお話できる事は限られていますが、湖の乙女、あなたの存在は我々つまり『こちら側』からの最大の干渉なのですよ」

「干渉……?」

「はい、先ほどもお話した通り、世界の均衡は今まさに崩れかけています。その中で本来訪れるべきだったアーサー王の世―――『こちら側』の力が溢れ、生と希望に満ちた時代の訪れ。それを阻む存在が現れました」

「……それが、インキュバス……?」

「そうです。彼は『あちら側』全ての存在の具現。故に『こちら側』からの生半可な手助けでは何も意味を成さず、アーサー王は死に、『あちら側』のみが勢力を増す。そして最後には『こちら側』と『あちら側』の境の無くなった虚無の世界が訪れる事を私達は危ぶみました」

「インキュバスがキャメロットで言い残した『アーサー王の時代の破壊』って言うのはつまり……」

「はい。『あちら側』のみの世界。もっと言えば『こちら側』を『あちら側』が飲み込んだ世界を目指していると思われます」

「そうなるとどうなっちゃうんですか?皆暗くなるとか、世界が絶望で覆われるとか」

「……わかりません。しかし予想できる結末は二つ。一つはおっしゃるように『あちら側』のみで構成された世界への変革。絶望、死、怨嗟、貧困、憎悪、悲しみ、そういったもののみが溢れる世界になるか。もしくは―――あちらとこちらの境目が消えるということは、裏も表も無くなるという事。先程私が述べたように境界線を取り払った世界―――何も無い世界になるか。この二つが大きく予想されています」

「な……」


 前者も持っての他だが、後者の世界も(たま)ったもんじゃない。

 ずっと白い空間にいるような、何もできず、何も考えられず、ただ存在しているだけなんて暇な世界、苦痛以外の何物でもない。


「そんなの……」

「ええ……許容できるものではありません。ですから私達の望み、あなたの知りたがっている事に答えるとするならば」


 湖の妖精は佐和の顔を真正面から見つめてきた。


「アーサー王と創世の魔術師がインキュバスを世界へ還す時、アーサー王の時代が開けるのです」



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