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ガウェインが強くラグネルの腕を引いた瞬間、ラグネルを包み込んでいた光が発光し、城のホールが淡く黄色い光に包まれていく。
眩しい……!
佐和も、横でこの事態を見守っていたアーサー達もそのあまりの眩さに目を閉じた。
やがて光が鎮まると、ホールは何事もなかったようにただの古城の姿に戻っていた。
おかしな圧迫感も不思議な魂の光も何も無い。
ただ、その中央でガウェインが一人、丸まった背をこちらに向けている。
駄目……だったの……?
生死をひっくり返すなんてそんな事できるはずがなかった。
でも、大切なのはそんな事じゃないのかもしれない……。
ガウェインの心は、ラグネルの心は、生ききった。
精一杯、自分の命を叫んだ。
それで……それだけで……
「……ガウェイン」
代表してアーサーがガウェインに歩み寄った。その足が不意に止まる。
「……アーサー?どうし」
続いて近寄ったマーリンもガウェインを見て言葉を失くした。
すぐに佐和達も駆け寄る。
「……ガウェイン!」
ガウェインの丸まった背。その腕の中にラグネルが包まれていた。
瞼を強く閉じていたラグネルが恐々と目を薄く開き、自分の今いる場所に気付いて目を丸くしている。
「……ガウェイン様?」
「……そうだよ」
ガウェインは少しだけ身体を離してラグネルと視線を合わせた。途端、ラグネルの目から涙が流れる。
「どうして……?私は……本当は……」
「んー……理屈はよくわからん。ま、あれだ」
そう言ってガウェインはお日様のような笑顔をラグネルに向けた。
「愛は勝つってやつだな!」
「全く……人騒がせな……」
呆れながらも暖かくアーサーが見守る中、しっかりと互いを見つめ合うガウェインとラグネル。
マーリンもケイもイウェインもランスットも勿論佐和も感無量に胸を打たれていた。
良かった……本当に……。
「……なら、ラグネルはまだ……ガウェイン様の……お傍にいられるのですか?」
「おう」
「一緒に……ご飯を食べたり、お話ししたり……できるのですか……?」
「おう」
「もう……一人ぼっちじゃ……ないのですか?」
「……そうだぞ。ずっと、一緒だ」
涙に暮れるラグネルの頬をガウェインが優しく撫でた。
「お前の兄さん達の分も姉さんの分も、俺が幸せにしてやるからな」
そう言って笑ったガウェインはラグネルに口づけた。