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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第九章 望まれる騎士であれ
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page.240

       ***



「え……?何で?あれ?二人?」


 佐和の横で霧に映ったアーサーとマーリンを見ている老婆と、アーサーとマーリンと闘い始めた老婆はどう見ても同一人物だ。


「あの……」

「あれだけではありません」


 老婆が指さした先にケイ、イウェイン、ランスロットも各々老婆に剣を向けている。老婆の周囲の霧が槍の形状へと変化し、彼らを襲っていた。


「どういう事ですか!?何であなたがあんなにいっぱい?というか、本当に……敵……なんですか?」

「……違います」

「え?」


 横にいる老婆の声は弱々しい。


「どういうわけかあなたになら、多少お話できるようです」

「どういう事ですか?」


 老婆の言葉は難解で、曖昧だが、彼女自身も戸惑っているように佐和には見えた。


「私は待っているのです」

「誰をですか?」

「この霧を抜けて来られる人を……」


 老婆はもう一度、霧に映る騎士達の姿を見つめた。



       ***



「アーサー……どうする?」

「闘うしかあるまい」


 確かに向こうが攻撃してくる以上、防戦一方と言うわけにはいかない。

 それにマーリンも、モルガンやゴルロイスとはまた違った禍々しさをこの老婆からは感じ取っていた。


「……アーサー、……殺す……のか……?」


 アーサーはちらりとマーリンを横目で振り返った。マーリンの問いの真意はわからないようだが、質問には小声で答えてくれた。


「相手の出方次第だな。できれば貴重な情報源だ。生かしたまま捕らえたいが……」


 霧の槍の数が見る見る増えていく。アーサーは剣を構え、老婆に向かって走り出した。


「マーリン!下がっておけ!!」


 いくつもの霧の槍を交わし、隙間を縫ってアーサーは老婆に斬りかかる。しかし振り切った切っ先は虚空を斬っただけだ。


「消えた……!?」

「アーサー!右手だ!」


 老婆はまるで蜃気楼のようにアーサーの刃から逃れ、いつの間にか他の場所に移動している。驚いたアーサーにすぐさま霧の攻撃が襲いかかるが、すぐに体勢を立て直したアーサーはその攻撃を華麗に避けてみせた。


「やはり魔術師か……!?」

「どうか、剣をお納めください」

「それなら先にこの霧の攻撃を止めろ!」

「できません」

「無抵抗でやられろと?」

「……」


 堂々巡りだ。

 マーリンは二人の闘いを見守る事しかできない。

 霧深いとはいえ、アーサーからマーリンの姿は丸見えだ。魔術を使ってどうにかするわけにもいかない。

 それにこの霧は俺の魔術じゃ、晴らせそうにない……。

 まるでそう……あの城と同じで、この霧も最早呪いの類だ。共感魔術がいくつも絡み合い、その縁が複雑すぎて、マーリン一人の力で無理矢理魔術を解くことは難しい。

 アーサーに任せるしか……。

 霧の攻撃はさらに苛烈さを増して行く。アーサーも剣で受け止め避けながら反撃をするが、捉えたと思った瞬間、老婆の姿はまた蜃気楼のように霧散し、別の場所に現れる。

 このままじゃ……アーサーの体力が先に尽きる……。

 実際、息があがり始めたアーサーに向かって霧がいくつもの鋭い切っ先を創り、アーサーの周囲を取り囲んだ。逃げ場が無い。


「……絶体絶命だな」

「アーサー!!」


 霧の棘がアーサーに向けて放たれた瞬間、その霧がすべて弾けた。




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