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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第九章 ニワトコおばさん
234/398

page.233

       ***



 翌日、その村は見つかった。

 一目で村の暮らしが楽でない事がわかる。民家も、着ている服もぼろぼろ。かろうじて道らしきところも藁が散らばっている。カーマ―ゼンよりも小さく質素な村だった。


「ここか……」


 入り口付近に馬を繋いだ佐和達は、アーサーの周囲に集まった。


「手分けして情報を探るぞ。ガウェイン、おまえは……」

「ん?大丈夫だってー!一晩寝たらばっちりだぜ!」


 無理矢理作った笑顔が痛い。見た目にはいつもと何も変わらないが。

 でも、わかる。わかってしまう。

 ガウェイン……すっごく無理してる……。

 アーサーは腕を振り回してみせるガウェインを見つめていたが、すぐに視線を反らし、判断を下した。


「……わかった。マーリン、サワ。俺に付いて来い。他の組み合わせは、ケイとガウェイン、イウェインとランスロットだ。イウェイン、ランスロットの御守りを頼んだぞ」

「御守り……ですか?」

「でんかー」


 困った様子のイウェインの横で、ランスロットが良い笑顔で笑っている。

 いやいや、ランスロット。反応おかしいから。褒めてないから。

 ここまで来ると人が良いのを通り越して、のんびりすぎる。

 その様子を見て佐和も他のメンバーも皆苦笑してしまう。おかげで変な風に緊張していた全員の肩の力が抜けたようだった。


「よし……正午前には、ここに再集合だ」


 アーサーのかけ声で各々分かれて、情報収集に出発した。



       ***



「さて、どこから手をつけるか……」

「それより……ガウェイン、大丈夫なのか?」


 マーリンが不安に思うのも無理はない。どう見てもガウェインは昨日から無理をして、明るく振る舞っている。


「本人が大丈夫と言っている以上……仕方無いだろう」


「それに意地でも張らせておかないと、余計に崩れ落ちる可能性もあるからな」と付け足された言葉は小さい。

 ここでガウェインを外さなかったのは、アーサーの優しさだ。

 確かに一人にしたら、それこそ何するかわかったものじゃないし……。


「アーサー……」

「そういう事だ。マーリン、俺たちは情報収集に精を出すぞ。さっそくあそこの村人に話を聞いて来い」

「精を出すのは俺じゃないか」


 二人がいつも通り言い合いし始めた後ろで、佐和はぼんやりとアーサーの背中を見ていた。


 全く……相変わらず、分かりづらいんだから。


 マーリンにはこんな風に言っているが、アーサーの心配りはしっかりしている。この情報収集のメンバーの割り振りが良い証拠だ。

 アーサーに私達がついて行くのは当たり前だとしても、経験の差を考えれば、ケイとガウェインを分けて、それに後輩に当たるイウェインとランスロットをそれぞれ付けるのがパワーバランス的には正しい。

 でも……アーサーは、今日はガウェインにはケイを付けた。

 イウェインやランスロットと一緒になれば、ガウェインは絶対に無理して明るく振る舞う。だが、ケイなら当時の事も知っているし、個人的にもあの二人は仲が良い。二人きりならガウェインも気を張らなくて済むだろう。

 偉そうな態度のせいで霞んでしまうだけで、アーサーは本当にマーリンや佐和、騎士達全員に心を砕いてくれている。

 アーサーも、マーリンも、どうしてこう、男の人って、不器用なんだろうなー。

 二人ともわかりにくい。

 でも、わかりにくいだけで、確かにそこに暖かいものは存在するのだ。


「おい、サワ。何をしてる。早く行くぞ」

「あ、はい」


 そんな状況ではないのに、なんだか微笑ましい気持ちになりながら、佐和はアーサーとマーリンに合流した。


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