page.226
***
「ようやく着いたかー……!!」
ガウェインがそう言うのも無理はない。桟橋は果てしなく長かった。
どれだけ歩いたのか。霧の中では太陽の位置もよくわからないので、時間の経過も曖昧だ。
遠くから見た時には黒い影でしかなかった城だったが、近付いて見上げた城の外壁は白い。霧が晴れていれば、湖上の城は美しい景観をしているに違いなかった。
「気を抜くなよ、ガウェイン。ここからが本題だ」
「ここって誰か住んでるんですか?」
佐和の質問にアーサーは首を横に振った。
「ここはペンドラゴン家の領地内に当たる。恐らくは昔、アルビオン王国統一前の領主の城だな。単なる古城のはずだ」
「えっと……」
「つまりサワー、アルビオン国ができるまでは、小国に分かれて争ってただろ?この城もその時の物をそのまま放置してるんだと思うよって事」
「なるほどー」
相変わらずケイの説明はわかりやすいなー。
それに霧のせいかわからないけれど、言われてみれば遺跡とか、文化財とかに近い雰囲気がある。
空気が涼しくて、静かというか。
「殿下、この城や地域の以前の領主に心当たりはありますか?」
佐和と違ってイウェインの質問は核心に触れる物だ。
もし、この城の以前の主が隠れ家としてゴルロイス達に城を提供していれば、関係者の可能性がある。
しかし、アーサーはイウェインの問いかけに眉間に皺を寄せた。
「いや……全く。恐らくかなり小さな領地だったのだと思う。聞いた覚えが無い」
「それに、昔の領主がそのままここにいて、何かしてるとは限らないしな。空いた古城を勝手に魔術師や盗賊が使ってるのは、よくある事だから」
「訪ねてみればわかるのではないですか?ね、殿下」
「……まぁ、ケイやランスロットの言う通りだな。『訪ねる』など穏やかな訪問になるかは怪しいが……」
そう言ったアーサーが腰にある剣に触れた。他の騎士も同様に自分の武器に手を添える。
もしゴルロイス一味が本当に隠れ家にしていたら、即座に戦闘になりかねない。全員に緊張が走る。
一度アーサーは全員の顔を見まわした。騎士達もマーリンもアーサーに頷き返す。それを確認したアーサーが力強く頷いた。
「ガウェイン、お前が先頭だ。次いでケイ、ランスロット、俺、サワとマーリン、イウェインの順で突入する。サワ、マーリン、イウェインの三人は扉から離れるな。背後を守りつつ、退路を確保しておけ」
「承知いたしました」
「了解だぜ!アーサー!」
「行くぞ」
アーサーの掛け声でガウェインが城の大きな両扉を開いた。