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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第九章 呪われた城と騎士
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page.222

       ***



 闘技大会でゴルロイス一味を誘い出すという作戦はうまくいった。ネントレスが持っていた短剣は間違いなく魔女モルガンの創った魔法具だ。

 けれど結局、モルガンもゴルロイスも会場には姿を現さなかった。捕えられなかったという意味では失敗に終わったのだ。


「呪われた城……ですか?」


 いつも通り謁見から戻って来たアーサーの報告に、佐和は聞いた言葉をそのまま繰り返した。


「ああ、そう呼ばれているらしい」


 未だにゴルロイス達が潜んでいる場所はわかっていない。キャメロット周辺から捜索の手を広めてはいるものの、何の手がかりも掴めずにいた。

 そこに、謁見の申し込みをしてきた村人から興味深い情報が寄せられたらしい。


「受付で魔術に関する事と述べていたから、優先して謁見に連れて来るよう命じたんだが、その者が言うには、キャメロットとカーマ―ゼンの間辺りの小さな村に呪われた城があるらしい」

「初耳だ」


 マーリンも聞いたことが無いというその話をアーサーは続けた。


「湖の真ん中に城が建っており、いつも周囲は深い霧で覆われているとの事だ。気味悪がって村人は誰も近寄らないようにしていたらしいが、今回のお触れを受けて、情報を提供しに来たとの事だった」

「そのお城にアーサーが行くんですか?」

「ああ、父上の命令でな」


 そう言ったアーサーの顔が渋い。その様子から佐和は事情を何となく察した。

 なるほど……嫌がらせか。

 普通そんなあやふやな情報だけで、王子であるアーサーをわざわざ出向かせたりはしない。一般兵を先に送って怪しかったら、そこで初めてアーサーが行けば良い話だ。

 しかし、前回の大会でネントレスに公衆の面前で過去の恥を晒され、アーサーの騎士イウェインにウーサーの騎士は敗北を喫し、ウーサーの機嫌は底辺まで下がっている。


 はっきり言えば、憂さ晴らし。体の良い追っ払う口実。


 今はアーサーの顔も見たくないのだろう。

 アーサーは悪い事してないのに……。

 それどころかネントレスに突きつけられた言葉は、アーサーの胸を深く(えぐ)ったはずだ。

 でも……それにしてはアーサーが荒れてないんだよね……。

 ボーディガンのカリバーン事件の時は、マーリンが魔術師と知っただけであれだけ荒れていたのを思えば大した進歩だ。

 それに、イウェインだって実力でウーサーの騎士を負かしただけ。

 それに比べてウーサーの行動は、まるっきり拗ねている子どもと何も変わらない。


「今回は誰と行く?」

「俺、お前ら、それから俺の騎士、全員だ」

「え?噂を確かめに行くだけなのに、全員で行くんですか?」

「……それも父上の命令だ」


 完全な嫌がらせにも程がある。

 佐和は呆れて言葉を失った。


「というわけで明日、雨が上がっていればすぐに出発する。支度をしておけ。それから全員に出立を伝えて来い」

「全員ってことは、ケイとガウェインとイウェインと……」

「……ランスロットもだ」


 指折り数えていたマーリンにアーサーが疲れ切った様子で付け足した。

 三人に沈黙が流れる。


「……めんどくさい旅になりそうだな」

「マーリン、珍しく気が合うな」


 アーサーの騎士きっての問題児にここ数日、アーサーは頭を抱え続けている。




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