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窓の向こうの景色が煙る。
霧雨がキャメロットの街の輪郭をぼやけさせる灰色の光景を、離塔の窓からイグレーヌは見ていた。
まるで、そう。あの人のような雨。
「もう少し……」
もう少しで。
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「ガウェイン!止めろ!!」
アーサーの制止の叫び声が聞こえる。けど、もう振り切った腕は止まらない。
目の前の光景が目に焼き付く。
「―――」
『彼女』が何かを言っている。
次の瞬間―――、
***
「―――っ!!」
ガウェインは自分の叫び声で飛び起きた。
静かな部屋の中で、荒く繰り返す自分の呼吸だけがよく聞こえる。
起き上がった身体は、全身冷や汗でぐっしょり濡れていた。
「はぁ、はぁ……」
薄暗い部屋で、自分の人より大きな掌を見つめる。
また……あの時の夢か。
何度も。
何度も。
何度も見る夢。
まるでガウェインにあの時の事を忘れるなと囁くように、この悪夢は定期的に自分の眠りを妨げていた。
「……忘れたくても、忘れられねぇよ……」
呪いは未だ、この身体に。
第九章、開幕です。