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「……こんな男に」
ネントレスは息を引き取ったウルフィンの身体から離れ、その躯を静かに眺めている。あまりにもあっけない死に、行き場を失くした思念が漂う。
「これはおまけに過ぎないわ。そなたの役割は明日、油断している内にウーサーを殺す事。それに何も変わりは無い」
この大会の開催が宣言されてすぐに罠だとモルガンも気付いた。しかし、敵の誘いに乗ったのは、リスクよりもウーサーを殺す事のできる貴重な機会を逃す手はあるまいと考えたからだ。
「彼の光の王は強い。しかも、私達が来ることを予想している。しかし、ウーサーは違うわ。警護の騎士も大会最中は王の至近距離には控えられない……選手の方がよほど王に近い」
モルガンはローブの内から小さな短剣を取り出してネントレスに手渡した。受け取ったネントレスがその短剣を観察している。
「これは……?」
「ウーサーを確実に殺すための物よ。使いなさい」
短剣には以前、ボーディガンやバリンに渡した物よりも遥かに強い呪詛をかけている。刺さるどころか掠れば、すぐに即死する得物だ。
「そなたと、私の悲しみを愚かなる王の胸に突き刺しなさい」
モルガンの言葉にネントレスは頷いた。
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