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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第八章 湖のランスロット
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       ***



 ランスロットの衝撃的な発言に会場中が静まりかえった。対戦相手のコンスタンチン卿もあんぐりと口を開けている。

 言われた本人であるアーサーもぽかんとしたままだ。


「な……!!何を不躾な事を……!!」


 最初に口を開いたのはウーサーだ。わなわなと怒りで身体を震わせている。

 ウーサーに指さされたランスロットは貴賓席のウーサーに頭を下げ、笑顔を見せた。


「はい。勿論、今すぐ殿下の騎士にしてほしいなど、失礼極まりない願いであることは百も承知しております。だからこそこの大会で、どうか殿下に僕の力を見ていただきたいと思ったのです」


 アーサーを見上げるランスロットの爛々と輝いた瞳に嘘偽りは無さそうだ。

 アーサーはその瞳をただ静かに観察している。


「この者……!」

「父上」


 今にも怒鳴り出しそうなウーサーをアーサーが押さえ込んだ。コンスタンチン卿も突然の出来事に驚き、事の成り行きを見守っている。


「コンスタンチン卿、しばし時間を」

「は、はい。殿下」

「湖のランスロットと、言ったな」

「はい」


 アーサーに名前を呼ばれ、ひどく嬉しそうに笑うランスロット。その笑顔はどこまでもあどけない。


「今は神聖なる大会の最中。雑事に捕らわれず、己の最良の力を見せることに最善を尽くせ」

「……はい」


 アーサーの威厳ある声色に、立ち上がりかけていたウーサーも席に着いた。観客も皆固唾をのんで見守っている。

 怒られたランスロットは素直にしょげて肩の力を抜いた。


「……最善を尽くした結果、開ける道の可能性も増えよう。それは貴殿の意志の強さによる」

「……殿下!」

「アーサー!何を!」

「審判!試合の再開を!」


 ウーサーの反論を遮り、アーサーが開戦の合図を審判に送った。慌てて審判が再開の鐘を鳴らす。


「コンスタンチン卿、すまなかった。貴殿の全力も、私に見せてくれ」

「はい、殿下!」

「ランスロット、おまえもだ」

「はい!」


 改めて二人が向かい合う。この余興に観客は大盛り上がりだ。

 こうなってしまっては今さらウーサーがごちゃごちゃ割って入れるはずがない。不服満々の様子で荒く腰かける。

 ウーサー古参の剛腕の騎士と、アーサーの騎士を目指す若い少年の勝負が、今一度始まった。




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