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ランスロットの衝撃的な発言に会場中が静まりかえった。対戦相手のコンスタンチン卿もあんぐりと口を開けている。
言われた本人であるアーサーもぽかんとしたままだ。
「な……!!何を不躾な事を……!!」
最初に口を開いたのはウーサーだ。わなわなと怒りで身体を震わせている。
ウーサーに指さされたランスロットは貴賓席のウーサーに頭を下げ、笑顔を見せた。
「はい。勿論、今すぐ殿下の騎士にしてほしいなど、失礼極まりない願いであることは百も承知しております。だからこそこの大会で、どうか殿下に僕の力を見ていただきたいと思ったのです」
アーサーを見上げるランスロットの爛々と輝いた瞳に嘘偽りは無さそうだ。
アーサーはその瞳をただ静かに観察している。
「この者……!」
「父上」
今にも怒鳴り出しそうなウーサーをアーサーが押さえ込んだ。コンスタンチン卿も突然の出来事に驚き、事の成り行きを見守っている。
「コンスタンチン卿、しばし時間を」
「は、はい。殿下」
「湖のランスロットと、言ったな」
「はい」
アーサーに名前を呼ばれ、ひどく嬉しそうに笑うランスロット。その笑顔はどこまでもあどけない。
「今は神聖なる大会の最中。雑事に捕らわれず、己の最良の力を見せることに最善を尽くせ」
「……はい」
アーサーの威厳ある声色に、立ち上がりかけていたウーサーも席に着いた。観客も皆固唾をのんで見守っている。
怒られたランスロットは素直にしょげて肩の力を抜いた。
「……最善を尽くした結果、開ける道の可能性も増えよう。それは貴殿の意志の強さによる」
「……殿下!」
「アーサー!何を!」
「審判!試合の再開を!」
ウーサーの反論を遮り、アーサーが開戦の合図を審判に送った。慌てて審判が再開の鐘を鳴らす。
「コンスタンチン卿、すまなかった。貴殿の全力も、私に見せてくれ」
「はい、殿下!」
「ランスロット、おまえもだ」
「はい!」
改めて二人が向かい合う。この余興に観客は大盛り上がりだ。
こうなってしまっては今さらウーサーがごちゃごちゃ割って入れるはずがない。不服満々の様子で荒く腰かける。
ウーサー古参の剛腕の騎士と、アーサーの騎士を目指す若い少年の勝負が、今一度始まった。