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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第八章 湖のランスロット
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page.199

      ***



 ランスロット。


 それはグィネヴィアに不安を覚えた佐和が、元の世界から唯一持ってきたアーサー王伝説の本を調べた時に載っていたグィネヴィアと不義を犯し、アーサーの王宮の崩壊の原因を作る騎士の名だ。


 卿を付けて呼ばれてない……っていうことは、やっぱりまだ騎士じゃない。

 だが、問題はそこではない。

 もし、彼が本当にあの本にあるランスロットなら、佐和が未だにどうするべきか悩み続けている悩みの種が遂にキャメロットにやって来てしまったということだ。


「……サワ?どうした?」


 佐和の異変にいち早く気付いたマーリンに顔を覗きこまれて佐和は飛び上がった。

 あまり顔に出しているつもりはなかったのに。


「マーリン……」


 どうしよう?言うべき?マーリンに?

 グィネヴィア様の事をどうするかもちゃんと話し合えてない状況で?

 それに例え相談するとしても今は無理だ。試合に夢中になっているので今はまだ気付かれていないが、残り三人の騎士も感が良い。これ以上、マーリンと佐和がこそこそしていれば、感づくかもしれない。


「……マーリン、後で」


 その言葉だけでマーリンにはしっかり伝わったようだ。

 それまでとは違い、マーリンは真剣な目で会場に目を戻した。


「どっちかだけ、教えて」

「……少年の方」


 小声の問いかけに佐和も返す。

 後で、と言ってしまった以上後戻りはできない。それに……。


『いいか、決めるのはお前だけじゃない。一人で決められる事などないんだ』


 アーサーの言葉が蘇る。

 紆余曲折があって、マーリンを傷つけて、今も無理な事をマーリンにさせ続けている佐和は罪深い。

 それでも、その言葉が本当なら。

 ……やっぱり、マーリンには相談するべきだよ……ね……。


「おお!あの若いの、よくやるなぁ!!」


 ガウェインの歓声につられて顔を上げると、ちょうどランスロットがコンスタンチン卿の一撃を剣で受け流したところだった。

 その動きは剣術素人の佐和にもわかるほど無駄がなく、流れるように相手の剣が滑り落ちて行く。


「ふむ。ただ夢見る年頃の少年のノリで参加したというわけでは無さそうだな」


 さすがウーサー王古参の騎士、コンスタンチン卿がランスロットのことを舐めてかかったのは最初の方だけだった。すぐに目の前の相手が全霊をかけるべき敵と認識したのだろう。気迫が一変する。


「少年―――いや、ランスロットといったか。なぜこの大会に出場した?金貨か栄誉か?」


 問われたランスロットは隙なく構えていた剣から少しだけ力を抜き、コンスタンチン卿に微笑んだ。


「僕はアーサー殿下の騎士になりたくて、キャメロットにやって参りました」


その言葉に会場が波を打ったように静まりかえった。




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