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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第七章 その男の名は
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page.165

       ***



 マーリンと別れた佐和は命令されていた仕事を手早く片づけ、貸し与えられている侍女部屋にこっそり戻っていた。

 持ってきた手荷物の一番底に隠しておいたアーサー王伝説の本を取り出す。

 マーリンが感じている予感を裏付ける何かがわかるかもしれない。そう思ったのだ。

 ゴルロイス……ゴルロイス……は……駄目だ。ウーサーとかアーサーとかの項目に名前が出てくるだけだ。

 しかも書いてある内容は既に佐和がこちらの世界に来て、マーリンから聞いている内容そのまま。

『イグレーヌの前の夫で、アルビオン王国が一つになる以前、ティンタジェル城という城の城主でウーサーの盟友だった一人。そして玉座に着いたウーサーを祝う宴で自分の妻を紹介したところ、ウーサーがイグレーヌに一目で恋に落ちてしまう。そして、ウーサーは魔術師の力を借りて、イグレーヌを自分の物にして、ゴルロイス本人を殺した』

 それ以上の事はなんも書いてないか……。

 それなら次に調べる対象は一人だ。

 グィネヴィアは…………。

 登場人物を紹介しているページで彼女の名を探す。

 ようやく見つけたグィネヴィアのページには美しい貴婦人の挿絵が描かれている。その横にある文字を指で追った。


「グィネヴィア……カメリアド領ロデグランスの一人娘……巨人に捕らえられていたが、アーサーによって救い出される。後にアーサーと結婚し、王妃となる……やっぱり、結婚するんだ……」


 佐和の心臓がなぜかはやる。

 何かが心にひっかかって、そのささくれが次第にひどく剥がれていくような。

 不安感がどんどん膨らんでいく。

 その気持ちの加速に後押しされるように佐和は続きを読み進める。

 そして、次に目に飛び込んで来た一文に佐和の頭が真っ白になった。


「しかし、後にアーサー王の騎士ランスロットと道ならぬ恋に落ち、アーサー王宮廷の崩壊の一端を招く……何、それ……」


 アーサーの騎士にランスロットなんて人物はいない。けれど、もし、(のち)に仲間になるのだとしたら……。

 ランスロットのページにも同じような事が書いてある。

 これをマーリンは感じ取ってた……?

 もし、これが本当だとしたら……将来的にアーサーの王宮は滅ぶ事になってしまう。しかし、この文に書いてある事が杖の言った『正しき運命』ならば。


 私は……将来、アーサーやマーリンが悲しい結末を迎える事を知っていて、見ないフリをしないといけないの……?

 どうする事が正しいのか。

 佐和になんかわかるはずがない。

 大判の本はひどく重く、抱えたまま佐和は途方に暮れて立ち尽くした。




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