メビウス
最近流行りの乙女ゲームが題材の小説です。
色々拙く文章も短めですが、宜しければ読んでいってください。
デジャヴ、と言う言葉を知っているだろうか。
例えばふと見たある光景を、1度夢の中やどこかで見たような気がするという、つまるところの既視感のことである。
いきなり何故そんな話をしたかというと、最近の私が既視感を感じることが多いからだ。
「ねぇ、悠子」
「ん?なぁに?」
「そんなに大切な考え事?もしかして、ようやく僕に告白してくれるの?」
私に話しかけてくるこの少年は、緑橋雪斗。最近特に仲の良いクラスメイトであり、美少年である。まるで雪のように白い肌に艶やかな黒髪、そしてしなやかな四肢。嫉妬なんて烏滸がましいと思うくらいの美少年。
「おい緑橋。自惚れたこと言ってんじゃねーぞ。悠子は俺様のものだ」
この明らかに傲慢な俺様系男子は赤井雄斗。こちらもまぁ見事な強気な美少年である。割と細めな体躯であるのに、見事な筋肉……シックスパックをお持ちである。
「全く、二人共意味のわからないことを言わないで貰えませんか?悠子さんは私のモノです。ねぇ?そうでしょう、私の愛しい悠子さん。私以外の誰かのモノになるだなんて、そんなの許しません」
カチャリ、と眼鏡をクイッと上げ知的そうに振る舞うこの少年は青山 湊という名前である。少し、いや、大分思い込みの激しい性格である。そして勿論美少年。かつては誰に対しても笑顔を絶やさずどこか嘘臭さを纏わせていて、近寄り難い雰囲気であった。
「ねぇ?」
「いい加減に」
「「してよねぇ」」
「ゆうちゃんは」
「ぼくらの」
「「大切な人なんだから!」」
見事なユニゾンで頭の痛くなりそうな会話に割り込んできたのは黄島 春明とその弟の晴良である。瓜二つな彼らは常に行動を共にしていて、大変仲良しで美少年な双子である。彼らはお互い身につけるものを全て統一していて、見分けることが大変困難なのだ。慣れてくると些細な癖で見分けることが出来る。
「ゆーこ……こんなやつら……放っておいて……ふぁ……寝よ……?」
この欠伸をしながら妙な色気を醸し出している美男子は黒川 楓人。なんというか、猫に似た雰囲気で常に気ままに行動している人である。話ベタ、と言うほどでもないがゆっくりたっぷり時間をかけて喋っているので、気長に待つのがコツである。
「「「「「「ねぇ、誰を選ぶの」」」」」」
次の瞬間、私は全てを思い出した。その思い出した内容量が多過ぎたのか、私はふらりと体をぐらつかせた。
「そう、だ……そうだった……なんで、どうして、忘れていたの?」
そう、この世界は
ーーー乙女ゲーム、「キミイロ」の世界だ。
どうして今まで気付かなかったのだろう。かつての私の大好きなゲームだったというのに。というか、どうして、今思い出してしまったのか……。
だって今、エンディング終わった瞬間だよ!?
ありえないよね!?自分の大好きな乙ゲーの世界にトリップ?というか、転生?したのに、それが終わった世界なんて……。しかも最後の皆のセリフから察するに大団円ルート、つまり逆ハールートが終了した瞬間。ああ、なんて惜しいことをしてしまったのか!!ガッデム!!
道理でデジャヴを感じるはずだったんだ。そりゃあ、以前の私が散々プレイしていた乙ゲーの世界、気に入ったセリフ一字一句覚えるなんて朝飯前だったから、記憶にも残っているだろう。
て、あれ?以前の、私……?
私は、悠子だよね?そう、ただの女子高生。
じゃあ、以前の私って何?あれ?でも、乙ゲーって、キミイロの世界は。
まだ混乱してるのかな、考えが纏まらないや……。
「「「「「「悠子ッッ!!?」」」」」」
そして私の意識はそのままフェードアウトしてしまった。
続く……のかもしれません。