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ぼくはげんきです。

作者: 丸屋嗣也

 ぼくの朝は、ゆうびんうけをのぞくことからはじまります。

 朝もやが、みちにたちこめるようなじかんにベッドからおきて、ゆうびんうけをのぞきます。でも、中にはインクのにおいがしみついたしんぶんしか入っていなくて、たいていはざんねんな気持になります。そして、しんぶんをおばあちゃんにわたして、朝ごはんをたべて、ランドセルをせおってがっこうに行くんです。

 そして、ひろしくんとみちくさをしていえにかえったときも、ゆうびんうけをのぞきます。でも、たいていはなんにも入っていません。せいぜい、どこかのおみせのおしらせか、へんなことがかかれたチラシが入ってます。やっぱりぼくはざんねんな気持になるのです。

 そしていつも、きまってぼくはゆめを見るんです。ゆうびんうけをのぞいたそのときに、まっ白なふうとうにはいった手紙が入っている。そして、それをぼくが、えがおでかかえているゆめです。

 

 そのゆめのはなしをすると、おばあちゃんはきまってこわいかおをします。いつもはやさしいおばあちゃんなのに。

「手紙なんて来やしない」

 もしかすると、もしも手紙がとどいても、きっとおばあちゃんが先に見つけたならやぶいてしまうんじゃないか、そんな気がして、ぼくの早おきはやめられないのです。


 ある日、ぼくは思い立ちました。

 そうだ、手紙をまっているんじゃなくて、こっちから出せばいいんだ!

 ぼくのてもとには、一年前にもらった手紙があります。今でも大事にとってあります。一年前、ぼくはひらがなしかわからなくて手紙なんて書けませんでした。でも今はちがいます。漢字もすこしはおぼえました。

 ぼくは、おばあちゃんにかってもらったえんぴつと、おこづかいでかったはがきで、お手紙をかきました。おばあちゃんにばれないように、夜おそくに書きました。手をえんぴつでまっくろにして、けしごむのかすをたくさん出しながら。



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 おげんきですか。ぼくはげんきです。

 ぼくはいま、二年生です。ようやくおてがみも書けるようになりました。

 がっこうはたのしいです。ぼく、クラスでも頭がいいほうです。えっへん。

 おばあちゃんもやさしいです。ぼくのだいこうぶつのハンバーグをよく作ってくれます。遠足の時には、三色べんとうなんかをつくってくれます。

 まいにちがたのしいです。

 でも。

 ぼくは、お父さんに会いたいです。わがままかな。

 お手紙ください。まってます。


 お父さんへ                       へいた


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 どこかでくらしている、お父さん。

 お母さんが死んで、おばあちゃんにぼくをあずけたっきりどこかに行ってしまったお父さん。

 一度だけ、ぼくに手紙をくれたお父さん。

 おげんきですか。

 ぼくは、手紙をポストの中に入れました。


 それからすうじつして、ぼくのいえに、手紙がとどきました。

 でもそれは。

 ぼくが書いた、お父さんあての手紙でした。

 でも、そこには赤いハンコがおされていました。

「受取人不明につき差出人へ差し戻し」

 ぼくにはあまりにむずかしいことばでした。だから、じしょを引いて、しらべてみました。

 

 でも、ぼくは、それでも手紙を書いています。

 いつか、お父さんにとどくかもしれないから。

 ほんとうは、とどくことなんてぜったいにないのかもしれないけれど。


 いつかお父さんの手紙がやってくる。

 その日のことを思いながら、ぼくはお父さんに、てがみを書いています。


 おげんきですか。ぼくはげんきです。


本作の狙い:リドル・ストーリー

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― 新着の感想 ―
[一言]  色々考えてひねりまわしてみたけど、どこが謎かけなのか気付けませんでした。まいった! 降参!
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