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割りきり 梨沙編
おっちゃん、携番教えてくれへん?
出会いは偶然だったのだろうか
必然だったのだろうか?
今となっては、そのどちらでもかまわないのだが
確かにその日、その場所で梨沙はタクシーに手を挙げたのだ。
白水のファミマまで
ん?あぁ、あのホテルの横ですね。
そうや。悪い?
別に悪くはないですよ。わかりました。
何で、うちなんかに敬語なん?
お客さんですから。
ふん。
17か8だろうか? ほとんど素顔にちかいメイクに
無造作に束ねた、セミロングの黒い髪。
上下色違いのジャージ。
キティのサンダル。
ありがとう。
料金を支払い、タクシーを降りた彼女は
電話をしながら、停まっていた黒いプリウスに乗り込んだ。
動き出したプリウスは、向かいのラブホへ。
やっぱりか…
何故か少し寂しい気持ちでタクシーを動かしだした。




