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第75話:おーい緑茶

「最初の種は風通しがよく、日の当たる場所で育ててください。場所はなるべく暖かい所でお願いします。後の事は一度収穫が終わってから話します」


 豆の種類によって適した場所があるのだが、神様印の特殊な種なので、多分大丈夫だろう。最初に植えた物は、全てのところで実をつけてくれたしな。


 何とか印と聞くと昔見た猫型ロボットのアニメを思い出すな。


 アルカナもあれ位可愛げがあればいいのに。

 

「分かりました」

「特殊な種なので、成長速度がかなり早いです。実が生ったら私に連絡をください。加工法等を知っている者を派遣します」

「あ~。もしかしてあの子?」

「知っているのはあれしかいませんので」


 何の事か分からないニーアさんには悪いが、ヨルムしか加工方法を知っているのはいない。


 おそらくヨルムがRISドラゴンだと気付くだろうが、どんな反応をするか今から楽しみである。


「連絡はどの様にすれば良いですか?」

「ブロッサム家の別邸が貴族街にあるので、そこにお願いします。もしくはシルヴィーを使ってください」

「そんな畏れ多いことは出来ません!」


 冗談なので、睨まないでほしい。


 多分シルヴィーなら何も考えないで承知すると思うが、本人に聞くのは止めておこう。


 その代わり……。

 

「因みにその種から作られる飲料は、シルヴィーの好きなものなので、しっかりと育ててくださいね」 

「……」

「頑張ってね~」


 本当はもっとしっかりした人なのだろうが、神であるシルヴィーが居ては形無しだな。


 弄ぶのも中々楽しいものである。


 一対一で会った時には無下にするのか、それとも今みたいな態度を取るのか……謝ってもらって許したが、俺が何もしないとは言っていないから、もう少し遊ぶとしよう。


「話は変わりますが、エルフとハイエルフの違いとは何でしょうか? それと、どの様な種族なのか教えて頂けませんか?」

「シルヴィー様?」

「ハルちゃんには話しても問題ないよ~。ハルちゃんは人間だけど人間じゃあないからね~」 

「一言余計です」


 一応この身体の判定は人間だが、世間一般的な認識では人間と呼べる様なものではない。


 まあ何も準備をしていない状態で、首を落とされれば死ぬので、分類上人で良いだろう。


「それでは少し話が長くなりますので、ハルナさんの飲み物を用意してきます。しばらくお待ちください」


 ニーアさんは入ってきた時とは別の扉を開けて部屋から出ていく。 


 数分もしないで戻ってきたニーアさんは、お盆に湯気が上る湯呑を三つ載せていた。


「あ~。いつもの奴ね」

「話をするのに丁度良いと思いまして。苦いので無理そうなら此方の砂糖を入れてください」

「分かりました」


 湯呑の中には緑色の透明な液体が見え、香ばしい匂いがする。


 これはあれだな。十中八九緑茶か玄米茶辺りだろう。


 シルヴィーが苦い飲み物である、コーヒーを好きだったのはこれのせいかもな。


 熱いので一口だけ飲むが、日本で味わっていた緑茶そのものだ。


 これは後で買いだな。


「その歳で飲めるのですね……」

「私が頼むのは、これよりも苦い飲み物となりますので、この程度は問題ありません。またの機会とはなりますが、今度は私が淹れましょう」

「それは楽しみですね」


 俺とニーアさんの会話を他所に、シルヴィーは音を立てながら茶を飲む。


 飲んでいる表情から、寛いでいるのがよく分かる。


 叩いてやろうか?


「それでは本題に入らせていただきます。先ずエルフとハイエルフですが、まったく別の種族となります」


 上位種とかではなく、まったく別なのか……。


 質問するよりも、まずは話の続きを聞くとしよう。


「エルフは人や獣人みたいに自然に産まれ、そして増えてきた種族ですが、ハイエルフは神や天使の使徒として産まれた存在となります。地上のバランスを保つのと、天使では気付けない変化を見付ける役割を持っています」


 俺が思っている以上に、この世界は管理されている……ってところかな。


 基本的には自由意思に任せるが、取り返しのつかない事態となる前に調整する。

 

 そんな役割だが、ここで一つ嫌な疑問が湧く。


「ハイエルフの様な存在は他にも存在するのですか?」

「居ますね。 ハイドワーフや精霊女王。仙人や確か……レッドアイズスタードラゴンもそうですね。私を含め個体数は少ないですが、皆それぞれ頑張っています」


 …………どうやらあの時ヨルムを殺すのを止められたのは、神様の子供だからってだけではなかったわけだ。


 理由なんてどうでも良いが、ヨルムはあれで良いのだろうか?


 ここ三ヶ月は普通に人の中で生活しているのだが…………まあ問題が起きていない間は自由にしていても良いのだろう。


「使徒にはそれぞれ役割がありますが、私は自然を調整する役割を持っています。後はエルフと各種族の取引もですね。この店もその一つです。お金を稼がなければ、生きてはいけませんからね」

「正確にはお金が好きなだけだけどね~」

「シルヴィー様?」


 ニーアさんは笑みを浮かべるが、その顔には何も言うなと書かれている。

 

「因みに使徒の種類は神様方と同じですが、個体数はバラつきがあります。ハイエルフならば約二十人程ですね。この店の系列には役員として、私を含め五人居ます。大まかな説明はこれ位になりますが、何か質問はありますか?」


 ヨルムが思いの外この世界にとって大事な存在ってのは分かったが…………まあ何かあればクシナヘナスが何か言ってくるし、このままで良いか。


 質問だが、気になっていた事は殆ど聞く事が出来た。


 だが、折角だし先程の事を聞いて見るとしよう。

 

「シルヴィーに助けて貰ったと言っていましたが、何があったんですか?」

「それは……その……何と言いますか……」

「店を開ける時のお金を、私が出しただけだよ~」

「……その通りです。私もまだ世間的な事をあまり知らなかったので、色々と四苦八苦している時に色々と手伝って頂きまして」


 何故恥ずかしがっているか分からないが…………いや、そう言う事か。


 支えるべき相手なのに、自分が助けられたからって奴だな。

 

「なるほど、そう言う事でしたか。話は変わりますが、この飲み物はどの様にして作っているのですか?」


 先程から上下しているニーアさんの、耳だが、話を流されたせいで下向きに変わる。


 そんなに感情を出していて、普段は大丈夫なのだろうか?

 

「植物の葉を蒸して揉んだものを、お湯で濾したものになります。エルフの中でも飲むのは限られていますね」


 完全に緑茶だな。


 それならば、ほうじ茶にすることも出来そうだ。


 夜に飲むほうじ茶は、コーヒーとはまた違った暖かみがある。

 

「買うことは出来ますか?」

「店では販売していませんが、少量ならお売りできます」

「それでしたら売れるだけお願いします」

「分かりました。明後日までに用意しておくので、都合のいい時に受付で受け取ってください。それから料金は大丈夫です。これも迷惑料としておきますので」


 くれると言うのならば、ココアと同様に貰うとしよう。


 需要が無いだけで、そんなに希少な物でもないだろうからな。

 

 いつの間にかシルヴィーは、勝手に二杯目を飲んでいるし。


 エルフ全体は分からないが、ニーアさんは有益な人となりそうだ。


 コーヒーに必要な器具や、栽培関係の問題も解決できるかもしれない。


 金には困っていないし収入も問題ないが、自分の手で稼いでいない状態はやはり落ち着かない。


 いや、メイドも立派な職業なのかもしれないが、俺が求めているものとは違う。


「ありがとうございます。次会う時は少し商売の話をしましょう。作って頂きたい物がありますので」

「分かりました。実を付けたらまた連絡させて頂きます。それと、少しお待ちください」


 ニーアさんはソファーから立ちあがり、棚から上質な紙を取り出して何かを書いていく。


 最後に魔法で紋様を刻み込んだ。


「このお店での買い物の際にこの紙を提示して頂けば、色々とサービスを受けられるようになります。それと、私と会いたい時にも使用してください」

「分かりました」


 シルヴィーのせいで面倒な事になったと思ったが、思いの外有意義な時間を過ごすことが出来た。


 山の方は天使がどうにかしてくれる予定だし、エルフ達に使って貰うのは本当に少量で良い。


 どちらかと言えば、コーヒー用の器具を作って貰いたいのだ。


 物的にはドワーフの方が良いかもしれないが、まだ知り合いもいないし、多分どうにかなるだろう。


 駄目ならその時はその時だ。


 結局三時間程話してしまったので、 外に出かける時間を取るのは難しそうだな。


 適当にぶらついてから帰るとするか。


 ソファーから立ち上がり、帰ろうとしたその時、突如扉が音を立てて開かれた。

 

「汚らわしい人間がニーア様に何をしている!」


 そう怒声を上げながら、エルフの女性が入って来た。


 ……無駄な事を聞かないで、さっさと帰ってれば良かったな。

 

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― 新着の感想 ―
トラブルさんの登場です(笑) ハルナにわからされるのでしょうか?
あれ? もしかしたらレッドアイズはRED EYESじゃなかったりした……?
神もいるし神の使いとも言える生物もいるんですねぇ…というかヨルムもそうなんですね。 そう考えると本来の役割がなんかんだろうときになるところですね。なんか駄々をこねた挙句少女に擬態までして付いてきてます…
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