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第53話:まさかの再会

「それでは、私は少し出掛けてきます」

「うむ。此方は我に任せておけ」


 屋敷に着いた次の日。


 一通り人が住める程度まで家具やら食材などを用意し、一日を終えた。


 入試までの五日間はリディスとヨルムをメイド長に預けて、俺は自由となる。


「大丈夫だと思いますが、何かあればブロッサム家の者と名乗りなさい。ジャックから身分証も貰っているのでしょう?」

「ええ。それでは」


 朝食……全員分の朝食を作り終え、昼食の準備を終えて屋敷を出る。


 オルトレアム王国の王都の名前は学園の名前と同じく、ローデリアスと言う。


 王城を中心とした円形の都市であり、衛星都市になっている。


 中心である此処は王城を始め、学園や住宅街。


 商店街など生活するための都市であり、生産や加工については他の都市でやっている。


 全く生産していないわけではないが、他に比べれば微々たるものだ。


 また学園や騎士の訓練用に、北側には広大な森が広がっている。


 ついでにかなり広いので、屋敷のある貴族街から店やレストランのある場所に行くのは一苦労である。


 普通ならば。


 異世界らしくやはりスラムもあるみたいだが、昔あった事件により、所謂マフィアやヤクザの類は少ないとか。


 生活保護があるならともかく、落ちた人間を拾い上げる政策がない以上、スラムが出来上がるのは必然か。


 元の世界では人口が足りなくて、何かしら仕事ややれることがあった。


 身体が欠損しても治すことができ、義手なども妖精のおかげでハイクオリティとなっている。


 人が足りている状況とは、なんとも羨ましいものだ。


 適当な路地裏に入り、鎖で天井の上に登る。


 そこから一直線に貴族街の外を目指す。


 今回向かうのは商店街の区画であり、馬車ならば二十分ほどで着く。


 しかし一直線に向かうことで、五分に短縮する。


 因みに服装はメイド服のままである。


 下手な私服を着るより、こちらの方が安全だろう。


 メイドとは貴族に使えるものであり、少女だからと侮る奴も少ない筈だ。


 目的の周辺となり、眼下には人通りが多くなる。


 適当な路地裏に音もなく降り立ち、服を叩いて埃や皺を伸ばす。


 別にやらなくても自動でやってくるのだが、気分である。


 人混みに紛れるように道へと出て、周りを見ながら歩く。


(何だか不思議な感じだな)


『時代の進歩が違うし、人口もハルナの居た世界より多いからね。同じ魔法でも、最初からあるかないかでも変わるものだよ』


 この世界は元々魔力があり、魔力を活用しながら成長していった。


 俺の世界は科学が進歩し、新たなエネルギーを作り出す過程の事故で魔力が世界に散布され、それから魔法と科学の両方を取り入れながら成長していった。


 とは言っても魔法に関しては人間は素人であり、魔法の分野は妖精におんぶに抱っこである。


 現実さながらの戦いが出来るシミュレーター。地球の時差を無くし、日にちを一定にする魔法。


 地球と妖精界を繋ぐテレポーター。


 たかが五十年だが、本当に様変わりしたらしい。


(道路はレンガが敷き詰められているが、アスファルトやコンクリートは無いんだな)


『技術的には可能だろうけど、大量生産するには時代がもっと進まないとだね。それにハルナの世界みたいに魔法で何でも直せるわけじゃないからね』


(まあ建築系魔法少女や、治水系魔法少女とか居たからな)


 魔物と戦うのが魔法少女の役目だが、魔物の被害が出た建築物や土地を直すのも魔法少女の役目だった。


 ショベルカーやダンプカー等を使うよりも、魔法少女の方が安く素早く出来上がる。


 勿論普通の人の協力も不可欠だが、造られている途中に魔物が襲ってくることもあるので、魔法少女は不可欠である。


 まあ壊すのも大体魔法少女なので、自業自得ではあるのだが。


『レンガなら素人でも補修が出来るから、理には適っているんだよね』

 

 ……ああ、そもそもレンガのつなぎにはセメントが使われているな。


 コンクリートを大量に作るのは大変だが、つなぎ程度のセメント作るのは簡単だ。


 補修もアクマが言う通り適当にセメントを塗ってレンガを嵌めれば終わりである。

 

(レンガと言えば、結構街並みが綺麗みたいだが、清掃とかってどうなっているんだ?)


『生ゴミや廃品回収の業者や、冒険者ギルドで清掃の依頼とか出してるみたいだね。後は新兵に訓練としてやらせたりとか』


 なるほど……そう言えばさっき降りた路地裏にも。大きなゴミ箱があったな。

 

 人力ではあるが、しっかりと綺麗に保てているのは凄い。


 これだけ多くの種族の人が居ると言うのに、清潔な状態を保てていると言うのは、国力の象徴にもなる。


 平和とは悪くないものだが……おや? なんだか妙にざわついているな……。


 周りの会話に耳を傾けると、どうやら凄い冒険者がこの国に来ているらしいが……どうやら商店街ではなくて冒険者ギルド付近に居るようだな。


 アクマと会話しながらふらふらとしていたせいで、違う所に向かっていたみたいだ。


 冒険者が冒険者のせいで騒がしくなるのは仕方ないだろう。


 折角だし、少し覗いて行くか。

 

 流石に神程強くはないだろうが、それなりに楽しめる相手かもしれない。


 人と人の合間や股の下を潜り抜け、前に進んで行く。


 身体が小さいだけの事はあり、人ごみの中でもすいすい進む事が出来る。


(あの建物が冒険者ギルドか?)


『そうだけど、まさか見に行く気なの?』


(どうせ五日間暇だし、野次馬根性を出しても良いだろう?)


『いや……うん……別に良いんだけどね?』


 なんか煮えた切れないが、何か隠しているのだろうか?


 まあ気にしても仕方ないし、さっさと進もう。


「知ってるか。何でも伝説の魔物を倒したらしいぞ」

「それは凄いな……てっことはランクが上がったのか?」

「いや、どうも固辞しているらしい。しかもこの国に急いで来たとか」

「なんだそりゃ?」


 ふむ……似たよう話を聞いたことがあるような……。


 聞き耳を立てていたら聞こえてきたのだが、何か忘れている気がする。


 こう、喉のところまで出かかっているのだが……。


 人混みを抜け冒険者ギルドに入ると、四人の冒険者が遠巻きに見られている。


 四人は受付と話しているようだが……。


「依頼としては問題ありませんが、本当に宜しいのですか?」

「ああ。どうしてもその少女に会いたいのだが、何か問題が?」

「いえ、侯爵様なので場合によっては受けてくれない可能性があるだけです。それと、魔法少女と呼ばれる方は……」

「いや、そちらは気にしなくて良い」


 ――ああ、やっと思い出した。


(なるほど。言い淀んでいたのはそう言うことか)


『まさか本当に忘れているとは思わなかったよ……』


(既に二ヶ月以上経っているからな。まさか律義に来るとは思わなかった)


 ヨルムを倒す際にデコイとして冒険者パーティー。


 確か暁の調(トワイライト)って名前だったかな?


 リーダーがカイルで、他の名前がエメリナ。ガッシュ。アンリだったな。


 あまり見立ちたくないが、どうせ後々会うことになるし、先に手を打ってしまうか。


 下手にスティーリアの方に連絡を取られても面倒だしな。


「お話の途中宜しいでしょうか?」

「っ! 君は……誰だい?」


 普通に近寄って声を掛けると、受付とカイル達が驚きながら一斉に見てくる。


 そんなに驚くことだろうか?


 特にアンリさんは目を見開いている。


「先ずは聞き耳を立ててしまったことの謝罪を。私はブロッサム家で、アインリディス様のメイドをしている、ハルナと申します」

「……俺はカイルと言う。アインリディス様を知っているのだね?」

「はい。何のために依頼を出そうとしていたか存じませんが、何かご用でしょうか?」


 魔法少女に変身している時と、今の俺は全く別であるため、カイルが俺の正体に気付くことはない。


 身長だけはどうしようもないが、そもそも変身している時は基本的にフードを被ったままなので、カイル達は魔法少女と言う単語以外分かることはない。


「とある人に頼まれて、面倒を見るように言われたんだ。まさか侯爵様とは思わなかったけど、取り次いでくれないだろうか?」

「構いませんよ。案内をしますので付いてきて下さい。それと、依頼は取り下げておいてください」


 カイルが受付に断りを入れ、俺を先頭にして冒険者ギルドを出る。


 こう言った視線を集める場所では、やはりフードが恋しくなる。

 

(コイツらとメイド長だと、どっちが強いんだ?)


『何でもありの戦いならこの四人だろうね。ルールや場所次第ではゼルエルでも勝ち星を拾える可能性があるよ』


 流石Sランク冒険者は伊達じゃないって事か。

 

 そう言えば空を飛んでいるヨルムに対して、跳んで攻撃をしたりしていたし、身体の鍛え方間違うのだろう。


「ねえ。ハルナって言ったかしら?」

「はいどうかなさいましたか?」


 歩き始めて直ぐに、アンリが話しかけてきた。


 髪は緑色で、黒と青のメッシュが入っている。


 この世界の法則に当て嵌めれば、三属性使える可能性があるな。


 まあ魔法と言っても、貴族ならば使えて当たり前の風潮だが、使えない人間もそれなりに居る。


 ただ魔力自体は誰にだってあり、練習をすれば一応誰にだって使える。


 この使えないって言うのは、魔法を使う努力をしていなかったり、使える魔法が特殊なため、普通の訓練では使えなかったりしている人のことを指す。

 

 細分化すればもう少し色々とあるが、魔力は誰にだってあるって事が、この世界では当たり前なのだ。


「あなた、もしかしてずっと魔法を使ってたりする? あなたから変な反応がするんだけど?」

 

 流石Sランク冒険者の一人だ。


 これでも一応隠蔽みたいなことをしているのだが、よく分かった。


「流石ですね。いつでも対処できるように、魔法を待機させています」

「……それってどんな魔法なのか見せて貰うことって出来るかしら?」

「アンリ、あまりそう言ったことは……」

「構いませんよ」


 エメリナが止めに入るが、俺としては全く問題ない。


 もしかしたらだが、魔法の改善点がみつかるかも知れないしな。


  

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― 新着の感想 ―
前回、律儀に名乗りましたからねぇ(笑) 人気のないところで正体をバラしてから口止めしておかないと、厄介事が大量に降り注ぐでしょう。
あの時の冒険者PTと再会するとは…(ハルナと同じく忘れてたのは内緒) 彼らはイニーとしての姿に会ってるわけですが、果たして気づくことができるのかが見ものですね。 …それ以前に彼らを殺しかけてたRIS…
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