第189話:先輩たちとのお話
やって来たのは、部室として扱われている小屋よりも小さい、中学校の部室位の部屋だった。
正確な数字で言えば、九から十畳位か?
何も置かれて無ければ問題無いが、色々と置かれているので狭く感じる。
それと場所を削減するためか、テーブルと椅子ではなくちゃぶ台が置かれ、靴を脱いで部屋に入る日本式となっている。
「それじゃあ座って。改めてだけど、私がリーダーのフランシスよ。見ての通り剣士よ」
「私はアンバーです。同じく剣士ですが、タンクもしています」
「僕はカスミだよ。遊撃で盗賊をやってるよ」
「ソフィアです。魔法にて後衛をしています。一応サポーターもしています」
ちゃぶ台を囲み、緑茶ではなくて紅茶を飲みながら話を聞く。
紅茶は俺が淹れたものではないが、味は今一だな。
流石に専門で淹れ方を学んでいるのはいないらしい。
(この中で貴族は?)
『いないね。一応全員平民だよ』
一応が気になるが、アーシェリアの様に気を使う必要は無いって事か。
「ハルナと申します。他は先程話した通りですが、光と火の魔法が使えます。オリエンテーションの際にエメリナ先生が使っていた魔法も使えます」
「よっしゃ! 勝った!」
「フランちゃん。はしたないわよ」
突如フランシスがガッツポーズをして、それをソフィアが軽く咎める。
俺の役割がこの中ではほとんど被っていないのと、欲しかった人材だったので、思わず喜んでしまったのだろう。
「魔法はどれくらい使えるの? 僕気になるな―」
「一応初級はどちらもほとんど使えます。回復も切り傷程度なら治す事が可能です。それと、光属性のオリジナルの魔法を一つ使えます」
「これはかない有望だね。因みにクラスは?」
「Aクラスです。平民ですが、メイドをさせて頂いています。なので、口調については気にしないで下さい」
微妙な紅茶を飲み、軽く周りを見る。
この部屋は今みたいに打ち合わせや、武器等を置いておくためにあるようだ。
着替えについては、来る途中に男子と女子の更衣室があったので、そちらで着替えるのだろう。
「メイドって事は、こんな微妙な紅茶じゃなくて、ちゃんとしたのを淹れられたり?」
「折角私が淹れてあげているのに、酷い言い草ね」
「だってフランの紅茶は不味くは無いけど、美味しいとも言えないし―」
アンバーの言葉にフランシスがキレて、アンバーの前にあったクッキーを全て奪い取って食べる。
クッキーを奪われたアンバーはフランシスに文句を言うが、どうやらクッキーはフランシスの持ち込みだったらしく、あえなく言い負かされてしまった。
なんとも学生らしいノリというか、子供らしいと言うか……魔法少女の学園に通っていた時の事を思い出すな。
基本的に死ぬか生きるかの戦いを学ぶ学園のため、ここまで緩い雰囲気ではなかったが、それなりに遊んだりしていた。
そう言えば、ショッピングセンターに行ったりカラオケとかもした事があったな。
「先程の質問ですが、紅茶は勿論のことクッキーも作れます。宜しければ、来週お持ちしましょうか?」
「本当!」
「フランちゃん?」
「気にしないで下さい。仕事と言うのもありますが、趣味でもあるので気にしないで下さい」
この微妙な紅茶を出されるなら、自分で淹れた方がお互いのためだろう。
なんなら俺はコーヒーでも良い。
「ごめんねハルナちゃん。ところで、オリジナルどんな魔法なのか見せて貰ったりって出来たりする?」
「この鎖になります。使い方としては第三の手みたいな物ですね。荷物を持ったり、ちょっとした攻撃なら防ぐ後とが出来ます」
「うわ……えっ、すご……荷物ってどれくらい持てるの?」
「大体五十キロ位ですね」
全てを話すわけにもいかないので、凄いけどそこまでではない程度の性能にしておく。
ダンジョンを攻略する上で、鎖を使わないという選択肢は無いので、先に周知することにした。
こんな便利な魔法を態々縛るなんてとんでもないってやつだな。
「その歳でオリジナルなんて、流石ね。あっ、もう直ぐ時間だから戻らないといけないわ」
ソフィアの声につられて、時計を見るともう少しで一時間が経とうとしていた。
わちゃわちゃとしている内に、あっという間に時間が経っていたようだ。
今の所女子にありそうな黒い影は見えないので、当りと思って良さそうだな。
リーダーがリーダーらしく引っ張っているパーティーは、リーダーが倒れれば機能しなくなるが、俺が居る以上は大丈夫だろう。
戦うよりは学ぶ事を念頭に置いているので基本手を出す気は無いが、見殺しにするような事をする気は無い。
早々死者が出るような事は起こらないだろうが、いかせん俺の周り。正確にはリディスやアーシェリアの周りには問題が色々とある。
関係者の関係者という事で、可能性は低いが狙われる可能性がある。
巻き込まれたならばともかく、巻き込んでしまうのならば流石の俺も助けるために動く。
「よし! 良い感じに纏まった事だし、来週から頑張りましょ。それじゃあ戻るわよ」
「当分は頑張るほどの無いようじゃないけどね」
「茶々を入れないで行くわよ!」
フランシスが引っ張り、アンバーが茶々を入れ、カスミはマイペースでソフィアがバランスを取る。
髪は赤黄黒青となんとなくどこかで見たことがある組み合わせだが、パーティーとしてだけではなく性格のバランスも悪くない。
平民ではあるが、学園に入学出来ている時点で上澄みである。
こんな科を選んでいる以上、向上心もあるのが分かる。
少しだけ期待が持てそうだ。
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会議室へと戻ってからは、来週以降の授業内容についてと、ダンジョン科についての注意点を聞いて終了となった。
ダンジョン科にあった疑問はこの時の説明でほとんどなくなったが、今日は授業が終わってからが本番と言っても過言ではない。
そう、今日は部活動が始まる日なのだ。
始まる日だが、今日は部室の整理だけでおそらく終わるだろう。
買った物もそうだが、学園で部室の備品として買った物がそこそこある。
完全に俺の独断で選んだものだが、それなりに快適に過ごせる様になるだろう。
「お待たせしました。既にお揃いのようですね」
「遅かったじゃない。流石に遠かったかしら?」
集合場所となっている部室棟の近くにある会議室へ入ると、既に俺以外全員集合していた。
転移や鎖を使って移動すれば、森の中にあるダンジョン科からでもすぐに移動できたが、森を出るまではあのパーティーメンバーと一緒だったため、そんな移動方法は使えなかった。
それでも予定時間よりは早いので、決して遅いわけではない。
アーシェリアも単純に話の種として言っているだけだろうし。
「そうですね。校舎からの移動よりも距離があるので、こればかりは仕方ないかと」
「そっ。そう言えば、結局今日は何をするのかしら? リディスもあまり知らないようだけど?」
チラッとリディスを見ると、目を細められた。
…………そう言えばこっちで準備やら段取りをしたが、聞かれなかったから一度も部活について話してなかった。
念話でも送ってくれば答えてやったのに、やれやれだ。
「今日は部室の整理ですね。家具や機材を準備してありますが、折角なので皆様で使いやすいように配置しようかと」
「ふーん。悪くないわね」
「皆さん揃っているようですね」
話していると、時間となりハロルドがやって来た。
因みにハロルドには搬入の関係で、今日の予定を話してある。
なんなら軽い改装の手配や、学園側で用意して貰える備品の準備もやって貰っている。
「改めまして、ティーパーティークラブの顧問となったハロルドです。活動内容的に私が関わることは少ないと思いますが。相談には乗りますので、宜しくお願いします。それでは案内をしますのでついてきてください」
会議室を出て、ハロルドの案内で部室までやってきた。
見た目は他と変わらないが、中身は入試の際に不法侵入したガラリと変わっている。
「まずは鍵の登録をしましょう。一人ずつこの端末に魔力を流してください。そうすれば、扉が開くようになります。それと、ハルナさんにはこちらを」
他が鍵の登録を行うなか、ハロルドは俺に数枚の紙を渡してきた。
これは……なるほど。
「チェックリストにて一応漏れがないか確認してありますが、足りないものがないか一応確認をお願いします」
「分かりました。用意をしていただきありがとうございます」
リリアがミスをするとは思わないが、誰かの嫌がらせを受けて物が足りないなんて事はあり得る。
無ければ買えば良いし、金はいくらでもあるので多少の事は気にしないが、言われ通り確認だけはしておくとしよう。




