第185話:光魔法科
大人気なくリディスとアーシェリアから勝利をもぎ取り、通常のルールでの再戦を誓わされた次の日。
光魔法科の授業がある日なのだが、既に五人中四人まで分かっているので、新鮮さはあまりない。
俺とアントワネット。それからマフティーとキアラ。
……今更ながら選ばない方が良かった気もするが、既に手遅れなのでどうしようもない。
ただ、残りの一人は間違いなくBクラスよりも下となるので、その点だけはマシだろう。
ついでに言えば、教会の関係者の可能性が高いので、エメリナが手綱を握ってくれるはずだ。
さて、いつも通りつまらない午前中の座学を終えて、研究室でアーシェリアを交えての昼食を終えて、午後の選択授業の時間となる。
昼食時の事だが、昨日俺に負けたせいか、アーシェリアとリディスがあーでもないこーでもないと話し合っていた。
俺を敵とすることで、更に仲良くなったようで何よりである。
人はいがみ合っていたとしても、同じ敵を前にすれば協力することが出来る。
異世界でも変わらない真理のようだ。
そんか仲の良い二人は頭の隅に追いやり、学園内にある教会までやってきた。
「先週振りですね。ハルナさんが一番最初ですよ」
「本当はギリギリに来る予定だったのですが、色々とありまして。本日はよろしくお願いします」
これまでギリギリで来ていた授業だが、仲の良い二人が面倒だったため、かなり早めにやってきた。
既にエメリナが居るとは思わなかったが、場所を考えればそれ程驚くことでもなかったな。
アンリに研究室が与えたように、エメリナは教会の管理を任されている。
授業の場所が教会なのだから、居て当たり前なのだ。
まあ教会と言っても礼拝堂以外に教室として使える部屋が有ったり、戦ったりする事が出来る訓練場も併設されている。
この一ヵ所で大体の事が出来るのだ。
他の科ならば座学をする時と実戦をする時は別の場所に集まらなければならないが、光魔法科はこの教会にさえ集まれば大丈夫となる。
「はい。教会に入って右の通路にある最初の教室で待っていて下さい」
「分かりました」
言われた通りに教会へ入り、一番手前の教室に入る。
校舎の教室とは違うデザインになっているが、まあ教会だし、そちらのデザインに合うようにしたのだろう。
「あら、居るとは思っていたけど、随分早いのね」
「少々事情がありまして。今日は大丈夫ですか?」
教室に入ってしばらくすると、キアラがやってきた。
大丈夫かと聞くと、何も分かっていない様な反応をする。
来るのは分かっているので良いのだが……いや、キアラはマフティーが来ると知らないのか。
「なんの事?」
「この科目ですが、Sクラスから二人来ます」
キアラは嫌そうな顔をしながら、俺の隣に座る。
「その内の一人って、もしかして王族だったり?」
「はい。因みにもう一人はわかりますか?」
「嫌でも分かるわ。そっちは色々と噂が流れているからね」
アントワネットは何をしたいのか分からないが、Sクラスで実質一人だけの平民なのと、ちょいちょい騒動を起こしているため、様々な噂が流れている。
リディスに比べればマシだが、悪い噂もある。
ついでに光属性の魔法を使える事は周知されている。
「知っているのなら良かったです。また縋られるのも嫌なので」
「あれは仕方なかったのよ。なるべく人が居ない科目を選んだと思ったら、あんな貴族ばかりになるとは思わなかったのよ…………よくよく考えると、創造魔法科とあまりメンバーが変わらないじゃない」
確かに言われてみれば、クルルが入れ替わっただけだな
面白味はないが、傲慢な貴族が来るよりはマシか……マシなのか?
「確かにそうですね。まあ全く知らない人よりはマシと思っておきます」
「……不敬じゃない?」
「学園内なら問題ありませんし、向こうもデメテルとは違い、平民に礼儀を求めていないので大丈夫でしょう」
「………………はぁ」
無論メイドとして最低限の礼儀とマナーで対応をするが、仮に俺がタメ口で話し掛けたとしても、マフティーは普通に対応するだろう。
まあ敬語が標準となっているので、今更崩して話すのは難しいのだが。
キアラと話していると知らない男の生徒が教室に入って来て、更にマフティーとアントワネットも入って来た。
礼儀として挨拶だけはしておき、すぐ後ろからエメリナも入って来たので、それだけで終わる。
「皆さんこんにちは。少し早いですが、全員集まったので始めようと思います。私は一年間教師を務めさせていただくエメリナと申します」
優しそうに見えるエメリナだが、あのヨルムに喧嘩を売る度胸があったりする。
これ自体は四人全員に言える事だが、更に言えば俺が見ていた限り一歩も退くことが無かった。
結局負けたわけだが、それでもこの世界では上澄みの人物である。
「授業を始める前に、まずは自己紹介をしましょう。左から順番にお願いします」
一人を除いて全員知っているので、自己紹介はほとんど無視しておく。
最後の一人はどうやら教会の孤児らしいが、アクマに聞いた所特別な背景はないため、基本的に無視で良いだろう。
向こうから話しかけてくる事も無いだろうからな。
これでスティーリアの回し者だったりすれば面白いのだが、居るとすれば俺の方ではなくてリディス側だろう。
あの屋敷でのやり取りから俺が狙われる可能性もあるが、俺の場合即死さえしなければ問題なく、毒の類も同じく即死系さえなければ意味がない。
因みに変身していない今は詠唱をしなくても魔法が使えるので、脳を潰されない限りは死ぬ前に復活できる。
いっそのことゲームでいうエリクサー的な物でもあれば体内に仕込んだり、アクマに使わせたり出来るのだが、そこまでの物は存在していない。
魔法や異世界とかファンタジーの癖に、微妙な所でシビアなのだ。
まあポーションならそれなりの怪我は治せるのだが、俺が欲しい効果までの物は存在しないので、科目から外したのだがな。
「自己紹介ありがとうございました。基本的に実技が中心となりますが、まずは光魔法とはどんなものなのか話をしようと思います」
今更光魔法とは何ぞやと話を聞いた所でほぼ意味がない。
理が違うのせいで、覚えたところで役に立たない。
魔法の訓練として覚えるのは良いが、結局のところ基礎訓練以上の意味はない。
まあ俺の場合その基礎が今のところ足りていないので、訓練しているのだがな。
三年でようやく一人前とされている魔法少女界隈で、俺の活動歴は一年だけだ。
その一年の間でも倒れて寝込むことが多々あったので、活動期間は更に短くなる。
倒した魔物の数だけならば馬鹿みたいに多いが、アルカナの力があってこそだ。
百の力で百を倒すことは誰にでも出来る。
今目指すのは五十や十の力で百を倒すことだ。
意味があるかは微妙なところだが、千里の道も一歩からだ。
猫がライオンに勝つには地道に頑張るしかない。
なんて脱線している内にエメリナの話はほとんど終わった。
俺にとってはそこまでではないが、この世界の住人にとっては中々濃い内容と言えただろう。
この世界では光魔法は神が与えたものであり、信心の強さで能力が変わると教会が教えている。
無論それは嘘であるとエメリナは話し、他の属性となんら変わらないと言った。
教会関係者がそれで良いのかと思うが、教会も一枚岩では無いようだ。
まあ宗教が金儲けに使われるのはどの世界でも同じってことだな。
因みに何故信心の強さなんて言われているかだが、ヒール系の魔法の強さが人により差が激しいせいだったりする。
俺の世界の方も同じだが、回復魔法は人体の構造を正確に理解している方が効果が増す。
同じ魔力量で同じように魔法を使ったとしても、理解度によって…………大体三割から四割位差が出るみたいだ。
それを信心のせいにして、上手く金儲けをしているってわけだ。
中にはちゃんとしている人も居るだろうが、詳しく調べていないので知らない。
件の神も別にこの国に居るわけではないし、宗教には関わらない方が良いと思っているので、ゼアーに調べさせる程度で留めている。
「話はここまでにしまして、残りの時間は実技をやっていきましょう」
闇の深い話が終わり、エメリナはダンジョンで使った光量のあるライトを発動させた。




