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アクマで魔法少女ですので  作者: ココア


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第128話:こいつは馬鹿

『分かった? 絶対に世間話を出来るような友達を作るんだよ? 良いね?』


(分かったからそう何度も言わなくて良い)


 出たくもない入学式の途中で寝ようと思ったら、アクマとエルメスが結託し、色々と注意をしてきた。


 罰ゲームで学園に来たわけだが、折角の罰ゲームだからとお題を出された。


 お題をクリア出来なかったとしても、何かあるわけではないが、これから先もアクマやエルメスとはずっと一緒に居なければならないので、何がある事に弄ってくるのは目に見えている。


 出来る限りではあるが、やらなければならない。


 生きている以上は、しっかりと法……とまではいかないが、守らなければならないものがある。


 アクマはふざける事が多々あるが、俺が生き物としての一線を越えないように苦言を呈することがある。


 少し語弊のある言い方だが、俺の魂は人ではないし、理由さえあれば殺人を喜んで行う精神性となっている。


 理性の無い人間を獣と表現することはあるが、獣には獣の考えがある。


 それが俺の中身だ。だが、獣としての生きた方すら捨てかねないのが、俺でもある。


 獣ですらない者を、生き物と呼べるのか?


 生き物を止めた先に待っているのは、フユネとしての俺だろう。


 まあだからと言って悲しむことも思い悩むこともないのだが、何事もやり過ぎは良くないのだ。


 そんな現実逃避をしている間に入学式は終わり、クラス分けの時間となる。


 クラスはSから始まりAからEの六クラスあり、最初はSクラスの担任となる教師が生徒となる入学生の名前を呼んでいく。


 無論最初に呼ばれるのはリディスである。


 首席というのもあるが、名前が()から始まるからな。


 ……なんてのは嘘で、点数は公開していないが、呼ばれるのは入試での点数順らしい。


 リディスの次に呼ばれたのはマフティーで、その次はアーシェリアだ。


 マフティーよりも間違いなくアーシェリアの点数の方が高いだろうが、流石に王族の品位のために下げるわけにもいかなかったのだろう。


 その後にヨルムの名前が呼ばれ、アントワネット……俺が貴族街で見かけた平民の少女が呼ばれた。


 デメテルやクルル。お茶会であった二人もSクラスに選ばれていき、言われていた通り俺の名前が呼ばれることなく、Sクラスの生徒の呼び出しが終わる。


 デメテルが恨みがましそうにヨルムとアントワネットを見ているが、マフティー以外の並びは成績通りなのだろう。


 通常ならアーシェリアの後に呼ばれるはずだが、覆しようの無い程に二人が優秀だったのだろう。


 片方はドラゴンだし。


 続いてのAクラスだが、流石に俺の担任となるので、担任となる教師に視線を向ける。


「続きまして、Aクラス担任。ハロルド・ロブロイスキー」

「はい」


 司会に呼ばれて立ったのは、どこかで見たような髪色の女性だった。


 かなり若そうであり、それもあってか気も強そうだ。


 緊張もしていなさそうだが……淡いピンクの髪か……。


 あの妖狐は上手くやっているだろうか?


「ハルナ!」


 おっと、早速呼ばれたし、行くとするか。


 椅子から立ち上がり、ハロルドの前まで行くと、何やら変な視線を向けられる。


 よく分からないあ、無視で良いだろう。


 暫くすると、ハロルドが呼ぶのを止めてから歩き出す。

 

 ハロルドが呼んだAクラスの中で知っている名前は無く、殆どが貴族であった。


 いや、殆どの貴族の姓は覚えているが、明確な敵となるのは都合よくいなかったと言った方が良いか。


 完全にアウェーだが、男だった頃も似たような状態だったし、気にする程でもない。


 大講堂から出てしばらく歩くと、1-Aと書かれた教室に入り、ハロルドの指示で適当な席に座る。


「改めて初めまして。担任となるハロルド・ロブロイスキーです。皆さんと同じく、私も今年から学園の教師となりました。至らぬ点もあると思いますが、これからよろしくお願いします」


 ハロルド……学園長が呼んだ教師だったな。


 学園の卒業生であり、学生の頃の成績は優秀で、卒業後は魔法の研究をしていた。


 ゼアーから貰った資料にはそんな事が書いてあったな。


 ハロルドが自己紹介の後に礼をしたので、拍手をしておいてやる。


 ほんの数人は拍手をしない奴もいるが、子供らしい反抗期みたいなものだろう。


「ありがとうございます。私はまだあなた達の事を何も知らないので、前から順番に自己紹介をお願いします。名前と学園での目標。それから一言お願いします」


 Aクラスの生徒数は三十人。机は縦五×横六で並んでいる。


 そういえば群馬県特有らしいが、机の列を一の川二の川三の川と表現する。


 なんでかは知らないが、昔他県の取引先と学校の話になった際に、話が噛み合わなくて群馬の特有の呼び方だと知った。


 群馬特有の表し方を知る場合、今の俺の席は三の川の左の列の2番目となる。


 何となく窓際を選んだが、廊下側の方が良かったな。


 日の光は嫌いではないが、視界の端にチラチラとシルヴィーが映ってくるのは、少々目障りに感じる。


 風の神となってはいるが、風とは空気であり、空気の中には様々な物が混ざっている。


 上手く光の屈折を調整すればステルスだったり、一部の人間からだけ姿を見せないようにすることも出来る。


 シルヴィーがやっているのはそれだろう……多分。


 鳥が数匹止まっている状態で寝ているシルヴィーを眺めていると、俺の前の奴が立ち上がった。

 

 名前なんてアクマに聞けば分かるので、一々覚えておく必要もないが、俺の前の奴くらいは、真面目に聞いといてやるか。


「シャナトリア・フォルナクスです。目標は剣術の授業で、一位を取ることです。そして、クラス対抗戦でも一位になれるように頑張ります」

「言い心意気ですね。ですが、今年は試験官を倒す程の生徒もいますので、頑張って下さい」

「……はい」


 シャナトリアは僅かに遅れて返事をし、拍手を受けながら座る。


 髪はオレンジで男か……。


 何やら黒い想いを持っていそうだが、考える前に自分の番を終わらせなければな。


「ハルナと申します。学園では魔法の研究に力を入れたいと思っています。また、お菓子作りや紅茶に凝っていますので、趣味が合う方は宜しくお願いします」

「素晴らしい言葉使いと所作ですね。私も元は魔法の研究者でしたので、何か困ったことがありましたら、声をかけてください」


 ハロルドの一言コメントと、拍手を受けながら座ると次の人が立ち上がる。


 本当はもっと適当に流したかったのだが、学生らしくと注文を受けているので、逸脱しない程度に在り来りの内容を話した。


 正直名前だけ言って座るのでも良かったが、最初から担任や同級生に喧嘩を売る必要もない。


 アクマからの注文で、俺自らが退学になる様な行動をするなと言われている。


 荒波立てない様に出来る部分は流すのが一番だ。


「これで全員ですね。これから一年間は皆同じクラスとなります。授業によっては他のクラスと合同になる事もありますが、お互いを尊重し、恥ずかしくない行動を取る様にして下さい。机の上にある教科書はこの教室で行うだけのものです。選択授業の分に付きましては、学園にある購買にて各自買って下さい。また、最初の一週間はオリエンテーションを含めた、特別な時間割りとなります。基本的には私も一緒にいますが、間違いないように注意してください。個別の武器や杖につきましては、申請書に親御さんからサインを頂ければ、授業で使うことも可能です。また、召喚獣を希望させる生徒は、別途で授業料が必要となりますので、机の上のパフレットをよく読んで下さい。最後に、力や立場には責任が伴うことを、決して忘れないようにしてください。本日はこれで終わりとなりますが、何か質問のある子は居ますか?」


 とても長い説明だが、淀みなく話してくれたおかげで、大変分かりやすかった。


 要点を纏めながら、大事なところをしっかりと押さえているので、研究者でありながら発表にも慣れているように思える。


 自己紹介の一言を聞いていた限り、貴族贔屓や平民贔屓というわけでもない。


 これは割りと当たりみたいだな。


 担任で思い出したが、魔法少女の時にお世話になった教師がいた。


 魔法少女と呼ぶのは流石に憚られる歳だが、その実力はかなりのモノであり、日本の魔法少女ランキングで二十位に居たはずだ。


 期間で言えばあまり長くはなかったが、教師としてはかなり有能な人だった。

 

 いや、魔法少女としても凄いのだが、結構粗というか、ドジが目立つ人でもあったな。


「質問は無さそうですね。ああ、一つ伝え忘れていました。既に寮で暮らしている方も多いと思いますが、アルバイトや外出の申請を、忘れないように注意してください。それでは、また明日の朝お会いしましょう」


 ハロルドが教室を出ていき、教室内が少し騒がしくなる。


 流石に全員が全員他人と言うわけもなく、知り合い同士で雑談をしたり、そそくさと帰ったりし始める。


「なあ、少しいいか?」

 

 帰る前に軽くパンフレットを流し読みをしていると、前の席のシャナトリアが話しかけてきた。


 はて? 心当たりはないが……。


「何かご用でしょうか?」

「お前って最初に名前を呼ばれてただろ? だから俺と戦ってくれよ」

「それは貴族としての命令でしょうか? それとも、同じクラスの生徒としてのお願いですか?」

「お願いに決まってんだろう。ここは学園だぜ?」


 馬鹿ではあるが、弁えてはいるようだな。


 だが、受ける義理は全くない。


「なら断らせていただきます」

「そう言うなよ。お前がこのクラスで一番何だろう? Sクラスに喧嘩を売る前に、お前を倒さないと駄目だろう」

「受ける理由がありません。何か、私の利益になる事でも?」

「戦えば強くなるから良いじゃねえか」

 

 ……こいつは馬鹿だな。


 このままでは平行線だし、俺が折れるしか無かろう。


 それに、どうせ授業では誰かと戦わなければならない時もあるだろうし、その時で良いだろう。


「分かりました。授業の時に相手になりましょう」

「本当だな! 嘘だったら承知しないからな」

「本当です。待たせている人が居ますので、私はこれで失礼します」

「硬い話し方だなー。またな!」


 子供らしい子供っぽいが、あれでも貴族であり、Aクラスに居るって事はしっかりと勉強も出来るのだろう。


 …………舎弟にするには騒がしすぎるな。

 

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― 新着の感想 ―
ああ…また一人、気の毒な人が、知らず知らずのうちに地獄の淵に身を投じてしまった。彼の魂が…あるいはシャナトリアさんの残骸が、安らかに…あるいは粉々に…眠れますように。相手がハルナさんだったことを考える…
案外単純なバカが一番友達にしておくには都合が良いですからね。 しかしこの世界ではハルナに苗字はないからその意味でも貴族達に囲まれる上では異質さになりそう。 しかし制服プレイ…ハルナ視点では単純な羞恥…
ねっとり身分さんがありがちなところにまっすぐな馬鹿はわりと好感。 でも授業でうっかりすると、対戦相手の料理方法で世間話しちゃうようになるので注意してねハルナサーン。
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