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アクマで魔法少女ですので  作者: ココア


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第116話:第四王子マフティー・オルトレアム

 声が聞こえて直ぐにステファンとジゼルは膝をつき、遅れてリディスも膝をつく。


 俺とヨルム。それからアーシェリアは立ったままである。


「面を上げよ。そこまで固くなる必要はない。だが……お前は相変わらずだな」

「敬意は持ってるわよ。けど、畏まる気はないだけよ」


 現れたのはアーシェリアが馬鹿と呼ぶ、第四王子のマフティー・オルトレアムだ。


 美形ではあるが、何となく鼻につく。


 王子と言ったら金髪なのだが、流石に金髪ではなく、ヨルムと同じ銀髪である。


 マフティーの後ろに控えている執事が何やら不快そうな目をするが、どちらかといえば俺が悪いので無視しておく。

 

「公式の場以外では構わないが、自重しろよ。俺は寛大だが、他はそうでもないからな。しかし……」

「文句があるなら出ていくだけよ。それよりも、喉が渇いたから早く行くわよ」


 会話をスパンと切り捨て、アーシェリアは歩き始める。


 マフティーは仕方ないなといった感じに肩を竦めるが、それ以上は何も言わない。


 中庭に着いた後は軽く席についてアーシェリアが説明してから、決められた場所に座る。


 そして、パンケーキの粗熱も取れ始めたので、生クリームとフルーツで盛り付け、ハニーシロップを別で用意してカートに乗せる。


 待機していたクルルに許可を出して、運ばせ始める。


 一仕事を終えて鎖を消すと、少しだけ頭が軽くなった様な気がする。


 遠距離で色々とやっていたせいか、それなりに負荷がかかっていたみたいだな。


「さて、今日は集まってくれてありがとう。今回のお茶会は一応シリウス家の主催となるけど、無理に畏まらなくて良いわ。あくまでも一学園の生徒としてお互いを思うように」


 アーシェリアが開幕の挨拶をし、椅子へと座る。


 俺が言った事を真似るとは思わなかったが、怒るほどの事でもないな。


 今の所テーブルの上には何もないが、後数分もしない内に、クルルがやってくる。 


 一応アクマの能力を頼りに盛り付けたが、流石に少し心配である。


 ボルトの穴の位置が二ミリズレれば入らないように、料理の盛り付けってのはかなり繊細なものだ。


 味については問題ないだろうが、見栄えが駄目では点数としては五十点だ。


 誰が言っていたか忘れたが、料理とは舌と目で楽しむものなのだ。


 まあ個人的にはどうでも良いのだが。

 

「……お前。先程まで出していたのは魔法か?」

「これの事を指すならばそうですね」


 座って早々に王子が話しかけて来たので、消した鎖をもう一度出してやる。


 一応名前は分かっているが、先に自己紹介をするのがマナーではないだろうか?


 ついでに王子の後ろに居る執事がかなり険しい顔を浮かべるが、アーシェリアが視線を送ると目を閉じて深呼吸を始めた。


「そうか……。おっと、一応自己紹介をしておかなければな。俺はオルトレアム王国の第四王子である、マフティー・オルトレアムだ。どうやら首席の座は奪われてしまったが、その汚名は学園での成績にて返上しよう」


 自己紹介の途中に、マフティーは一度だけリディスへと視線を送る。

 

 リディスは素知らぬ顔で居るが、内心で上げた悲鳴が俺にまで聞こえて来た。


 神に対しては反応出来なくても、流石に自国の王子に対しては反応するみたいだな。


 ついでに首席の件を初めて知ったらしいステファンとジゼルが、驚いてリディスを見る。


 これでリディスが呼ばれた表の理由を理解した事だろう。


「そ、それは本当なのですか?」

「無論だ。俺は嘘が嫌いだからな。それと、先ずは名を名乗るが良い。どこの誰かは知っているが、初対面だからな」

「私の左からアインリディス。ヨルム。あんたを飛ばして、ステファンにジゼル。最後にハルナよ」


 ステファンが動揺する中、またまたマフティーの発言を切ってから、アーシェリアが答える。


 そんな不敬と思われる行動にマフティーは一度頷くだけで、それ以上は何も言わない。


『もう届くよー』


(どうも)


 このタイミングで届くか。悪くない。


「少し立たせて頂きます。私の作ったものが届いたそうですので」

「……へぇ。良く分かったわね」

「運ばせたのは私ですので、時間を計算しただけです」


 クルルによりカートが運ばれてきたので、カートを受け取って、鎖でパンケーキの乗った皿と、クッキーをテーブルに置く。


 更に用意されていたポットに紅茶の茶葉と、魔法で温めたお湯を入れて蒸らし始める。


 俺の作業を初めて見る三人は驚いているが、リディスとヨルムはパンケーキに目が釘つけになっている。


 そして何故かアーシェリアはドヤ顔である。


 さて、蒸らしている間に紹介をしておこう。

 

「本日作らせて頂いたのは。リコッタチーズと呼ばれる、特殊なチーズを使ったパンケーキとなります。通常のチーズとは異なり、酸味が少なくコクのあるチーズとなるので、クリーミーな味わいとなっています。また、クッキーの方もですが、一般に流通していない材料を使用しています。安全性に付きましては第四王子のメイドをしているジュラバル様から許可が出ていますので、ご安心してください」

「……まて、ジュラバルだと? そいつは本当にそう名乗ったのか?」


 何やら慌てているようだが、紅茶を蒸らす時間を確保するために、少し付き合ってやるか。


「はい。因みに此方のリコッタパンケーキのレシピはジュラバル様に売りましたので、私からお答えすることはできません」

「そうか……急に声を上げてすまなかった。続けてくれ」


 マフティーはともかく、何やらアーシェリアの方も変な反応をしているな。


 侯爵の二人は心当たりが無さそうだが、やはりジュラバルはただのメイドではないってことか。


 さて、紅茶も蒸らし終わったし、最後の仕上げといこう。


 カップに紅茶を注ぎ、それらも鎖で音を出さないように気を付けながら配膳する。

 

「最後に紅茶は、ブロッサム領から取り寄せたものになります。癖がなく、何にでも合いますので、どうぞご賞味下さい」


 一応ドレスなので、貴族らしく優雅に頭を下げてから席へと戻る。


 マフティーの視線が少し気になるが、まあ無視で良いだろう。


「折角だし、先ずは食べましょう」


 主催であるアーシェリアが、先ずはパンケーキを食べる。


 マフティーと会ってから固い表情をしていたアーシェリアは、直ぐに顔が綻び、一言「美味しい」と漏らす。


 そのアーシェリアの反応を見てから、各自がパンケーキを食べ始める。


 流石にガッツいて食べるような事をする者は現れないが、食べながら話すお茶会のはずなのに、手を止めるものがいない。


 特に最初に食べ始めたアーシェリアは直ぐに食べ終わり、満足そうな顔をしている。


「期待していたけど、かなりのものね。ハルナにお願いして良かったわ」

「勿体ないお言葉です。紅茶のお代わりの際は、お申し付け下さいませ」


 アーシェリアが食べ終えたタイミングで、俺はまだ半分も食べ終わっていないが、本分はメイドとなるので、紅茶のお代わりを淹れるのは俺となる。


「あまり期待していなかったが、このパンケーキも紅茶も素晴らしい物だな。アーシェリア。どこで拾ったのだ?」

「私じゃなくて、ブロッサム家のメイドよ」

「そうか。随分気に掛けているようだが…………美しいな」

「はっ?」


 アーシェリアがマジな声を出すが、マフティーの相手をするのは俺ではなくてリディスだ。


 こっちを見ずにリディスを見て欲しい。


「そう恐ろしい声を出すな。俺は兄のような馬鹿なことをする気はない。しかし、ブロッサム家……アインリディスか。あのコランオブライトを見たが、良く手放したものだな」

「……私が知りましたのはお父様が手放した後なので、実物に関しては分かりかねます。小粒のものならば持っていますが、どのくらいの大きさだったのですか?」


 そう言えば、リディスにあの件については何も教えていなかったな。

 

 アドリブとはいえ、よく答えることが出来た。


「ふむ。その前にその小粒とは、どの程度の大きさだ?」

「そのクッキーの欠片程度の大きさになります」


 リディスはクッキーの欠片を指差し、その大きさを見たマフティーは勿論、ステファンとジゼルも言葉を発することが出来なかった。


 大きさで言えば、大体八ミリ四方程度の大きさだがそれだけの大きさがあれば、貴族街の一等地に屋敷付きで土地を買える。


 あの時のリディスとは違い、皆正確にコランオブライトの価値を理解しているようだ。


 ……いや、言った本人であるリディスは今一理解していなさそうだ。


 あの時は動揺していたはずだが、今は動揺していない。


 もしや、コランオブライトの価値を忘れたのか?


 あれから色々とあっただろうし、考えている暇が無くて忘れてしまっている可能性は大いにある。


 傍から見たら大物っぽいかもしれないが、裏事情を知っている俺からすれば馬鹿にしか見えない。


 やはり、リディスを一言で言えばアホの子だな。



  

 

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― 新着の感想 ―
只者ではないメイドと意外とただわがままなだけではない王子。 意外と主席逃したからと行って嫌がらせしてくるわけではないから今後が楽しみですね。 そしてつい条件反射でやってみせろよと言いたくなる王子だ…
なぜかリディスさんと王子様は仲良くなれそうな気がするのですが…
リディス、顔が引き攣っていたりして(笑) 後で文句たらたら言われるやつですね。
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