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第40話 地方都市ダラサール

『あーあー。こちら車掌席、只今より希望号はバラディア国の地方都市、ダラサールに到着する。希望号の修理、燃料や食糧の補給のため、数日滞在する予定だ。各位、そのつもりで降車の準備をするように』


日が落ち窓の外が闇に包まれ街の明かりが灯る頃、部屋の壁に設置された伝声管からトーコの声が響く。


「ここはどんな場所なんだろうか」


到着が近づくにつれ、一抹の不安が頭をよぎる。

燐国のような事態になれば、また争いが起きる。


「大丈夫ですよ。この国は私たちを歓迎してくれるはずです」


いつもの様に人の心を読んだ発言だが、以前より不快感は少ない。

彼女には悪気があるわけでなく、おそらく単に人との接し方の機微に疎いという事がわかったからだろう。


「厄介事の匂いしかしないがな」


「燐国に比べて親切な人が多い国ですから、きっと大丈夫でしょう」


「なんだ、行ったことがあるのか」


「いえ、ただの世論です」


そういえば、カタリナはどこの国から来たのだろうか。

尋ねようとするも希望号は減速しアナウンスが流れる。


『まもなくダラサール、ダラサール。地元民の熱烈な歓迎に備えよ〜』


希望号は駅の構内に入った様で窓の外が一気に明るくなる。

そして、駅のホームには無数の人が立っている。

褐色肌で白い布の衣装を身につけた老若男女の人々が、狂気に満ちた喜び様で。

その異様な光景に俺はカタリナに言葉をかける。


「な、なぁ、これはどういう事だ?もしかして、あいつら全員、希望号に乗り込もうとしているんじゃ……」


「い、いえ、それはないと思いますが。今は一般用の車両もないですし」


カタリナも面食らっている様子。

これはこれで、また面倒くさい事になりそうだ。



「ようこそいらっしゃいました!」


希望号を降車すると地元民の歓声が上げる。

その熱狂ぶりは異常で、中には涙を流し両手を擦り合わせ祈る者もいる。

希望号を降りた他の面々も、その熱に呑まれ呆然としている。

そして、群衆の中から一人の身なりもよく見目麗しい褐色肌の女性が前に出る。


「ようこそ、ダラサールの街へ。歓迎いたしますわ」


その女性が話し出すと次第に小さくなる狂騒。

ようやく話が出来るとトーコは彼女へと近づく。


「先ほど連絡した通り、ここで数日間滞在させてもらえるという事だが、間違いないか」


「ええ、間違いありませんわ。皆様の疲れが癒えるまで、白の列車の修理が終わるまで、存分に休息をとってください。それでは早速、案内いたしますね」


「案内?いや、勝手にやるから気にしなくていい」


「あなた達は闇に包まれた世界に差す一筋の光、白の列車を走らせる英雄なのです。私たちの歓迎の意がどれほどか、それをご理解いただくために宿と御馳走を用意しました。ぜひ、英気を養ってください」


「お、おう」


グイグイと詰め寄る女性にたじろぐトーコ。


「と、ところで、あんたは誰なんだ」


「あらあら、申し遅れましたわ。わたくし、パヴァティ家の第九代目当主、ラヴィニアと申します。以後お見知りおきを。さあさあ、立ち話も何ですし早く行きましょう」


「し、しかしだな」


気品ある所作で当主を名乗り、俺たちを何処かへ招こうとする彼女。

果たして、信用してもいいのだろうか。


「構わぬ。ここで休まねば次の橋を渡る事も難しいだろう」


唐突に冷たく鋭く声を響かせるミス・アナ。

その声には有無を言わせぬ迫力がある。


「ま、まぁ、ミス・アナがそう言うなら……。皆も、それでいいな」


親切ではなく皆を巻き添えにしようとする意図が見え見えの様子のトーコ。

疑いは消えないが、皆と一緒なら問題ないだろう。


その後、何人かの乗務員を残しラティとベルを連れ歩くトーコの後ろに渋々とついて行く俺とカタリナ。

その他にはエイブ、アリス、リュウが続き、ミス・アナも大人しく歩みを進める。

そして、その中には、フェイもいた。

不機嫌な顔で歩く彼女は当然、俺に気付いているはずだが何をする様子もない。

ここで俺がアクションを起こせば余計な騒ぎに発展するだろう。


「ユウキさん、彼女の事は後で説明します」


傍でそう囁くカタリナ。

これから先も悩みの種は尽きない様だ。

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