プロローグ
この世界には戦争が溢れていた。
平和な時代は遥か過去へと追いやられ、今ではどこに目を向けても争いばかり。各国の正義は自らの都合を押し付け他者を殺す免罪符へと成り下がり、善悪が意味を成さない世界。
とある学者曰く、戦争は経済活動の一環である、と言われるほどに、それは当たり前になっていた。
しかし、そんな上澄の人間どものギャンブルに付き合わされ疲弊した民たちは誰しもが、この時代に終わりが来るという一縷の望みに縋り生きていた。
人材と資源は有限、その避けようのない事実が全てを終わらせてくれると。
そう、ゴーレムが登場するまでは。
突如として戦地に現れた、土塊から出来た巨大な人形。
従来の兵器が通用しないその化け物は西側の国で生まれ勢力を東へ拡大していき、人間を次々と蹂躙していった。
唐突に現れたゴーレムの存在は同時に黴臭い魔術の復活を意味しており、抗う術を失い奇跡を忘れた人々は非現実的な事態に諦観するのみ。
しかし、模倣は人間が得意とするところ、数年も経たないうちに各国でゴーレムは産まれ始め、戦争は終わるどころか更に激しさを増した。
争いは終わらない。
人の命は二束三文、勝者か敗者かを計るものは戦果のみ。
それは真理として人々の望みや希望を打ち砕き、枷を外された戦争はチャリオットのごとく全てを踏みつぶして歴史を刻んで行く。
この世の全ての欺瞞を嘲笑いながら。