四日前 1
サンタハムレットにある大きな図書館に彼は朝から入り浸っていた。膨大な新聞をいくつも捲ってある事件を探していた。
「うーん、多分この辺り…」
ペラペラと捲れば、小さな記事に目的の物が載っていた。新聞の日付は去年のクリスマス。事件はクリスマスイブだ。
「交通事故…か、」
少しの間その記事を見つめてルイは立ち上がる。そして本棚のあらゆる所から分厚い本や大きな本を持ち出して、読み始めた。
「た、ただいま」
「おぅ、ルイ。何だか頑張ってんな」
既に食事が用意されているテーブルについて、ルイは盛大な溜め息を付いた。
「何だ、お前…。らしくないな」
「いや、文字読んでると眠くなって」
「………」
シェークは心配して損した気分になり、無言で皿を並べた。
「いただきまぁす」
「全く、本当におめー、どんな願いを引き受けたんだ?」
「ん? 死んだ奴に会わせる約束」
落ち着きなくかき込む彼が言った言葉にシェークはスプーンを止める。呆れたとばかりに目を見開いて、彼を凝視する。
「そんなこと出来る訳ないだろう」
「だぁいじょうぶだって、俺はやるよ」
「何でそいつにこだわるんだ?」
話していても止めもしなかったスプーンをルイは突然止めて、口の中の物を飲み込んだ。
「本人もわかってるんだよ。だから、俺にやめろって言って来た。だけどさ、それくらいいい奴なのに、そいつの願い叶えられないなら……サンタ名乗る意味ねーよ」
叶えられない。そう理解しながらもそれを口にしてしまうのは何気に勇気がいることだ。
だけど、彼女はそんなことでルイを巻き込んではいけないと本音を吐き出した。
八つ当たりと言えばそうだ。だけど、少なからずとも言うきっかけとなったのは彼への心遣いだと思っている。
「シェーク…、俺くるみを助けたい。あいつは多分この一年ずっと、俺を待ってたんだ!」
清々しくそう言ってルイは家から飛び出した。シェークは小さく溜め息をついて、一人部屋で呟いた。
「宮本くるみ…、か。一度見に行かなきゃならんかもな」
○ … ○ … ○
見下ろし雲から下界を見下ろす。まだ五時だというのに辺りは真っ暗だ。
そこからサンタにしか持たない透視望遠鏡である一点を見やると、案の定彼女の姿が見えた。
「よっし、そこか!」
ぴょんと雲から飛び降りて、ルイは下界へと舞い降りた。
日直を終わらせて、やっと彼女は校舎から出る。バイト等の関係から特別に部活に所属していないくるみは授業が終わればすぐに帰宅する。
いつも部活に勤しむ生徒達は今日は妙に玄関口で身を寄せ合っていた。
「すごいかっこいーよね」
「誰待ってるんだろう」
しかも溜まっているのは女子ばかりだ。気にせずに脇を通り過ぎれば、校門に一つの人影が見えて来た。
しかも、見るからに知り合いだ。
「お、やぁっと来た! くぅるぅみぃ」
「………」
頭が痛くなった。何故ここに彼がいるのかわからない。うんざりしたように近付いて手を引いた。
「お! お?」
「注目してるから早く離れよ!」
「おぅ。あ、なぁ、今日バイトか?」
「…違うけど」
気まずそうに呟いて、くるみはちらりとルイを盗み見た。すると彼はすごく嬉しそうに笑って今度は彼が彼女の手を掴んだ。
「よし、じゃぁ、遊ぼうぜ!」
「はぁ? あ、ちょっと!」
彼女の返事も聞かずにルイは連れて行く。向かう場所は明らかに商業地域だ。
「大丈夫! 任せとけって! 絶対楽しいから」
見当違いの言葉を自信満々に吐くルイにくるみは思わず苦笑した。もう、抵抗する気もなく、素直に彼の後について行った。