もうすぐ…
キン、と冷えた空気に息が白くなる。
もうすぐクリスマス。そう思いながらも彼女は学校に向かう。
サンタなんていない。
いつからそう思ったのか、もう覚えていない。いや、最初からサンタなんて存在知らなかったのかもしれない。
小さい頃から寝ている間にプレゼントを置いてくれているのは両親だと知っていた。だけど、そのことには知らない振りをして、素直にそのプレゼントを喜ぶべきだと、彼女は知っていた。
両親が大好きだった。
この世の中で一番好きだった。
「おはよう、くるみ!」
「おはよう」
通り過ぎる友達に明るく挨拶を交わしながらも、雲行きが怪しい空を見上げる。
いつからサンタの存在を否定したのかは覚えていない。
だけど、サンタを恨んだ時期は覚えている。
去年のクリスマス。
サンタなんか大っ嫌い!
そう、誰かに叫んだのを今でも昨日の事のように覚えている。
一体誰に言ったのかは思い出せない。だけど、その記憶は苦くて、切なくて、苦しかった。
去年のクリスマス前日。
彼女の両親は事故で、亡くなった。
哀しみに暮れる中で願ったのは、信じもしないサンタに
“お母さん、お父さんを…返して下さい”
これだけだった。
だけど、そんなことは叶うはずもなく。わかりながらも恨むしかなかった。いるはずもないサンタを。
そして、それから一年。
未だに傷は癒えなくて、クリスマスが近付く度に苦しくなった。
そして、そんなことを思い、窓の外を見やれば、静かに白い雪は舞っていた。