表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヲタッキーズ104 将棋少女の憂鬱

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第104話"将棋少女の憂鬱"。さて、今回は公園の大盤将棋を舞台に証人の連続殺人が発生w


獄中からの暗殺命令は将棋少女の棋譜?棋譜に潜む暗号を解読した時、明らかになった衝撃のターゲットとは?


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 臨終供述  


神田リバー水上空港。入国カウンター。


「Mr.ベルジ?最高検察庁からお迎えに上がりました」

「おぉ!メイドさんの出迎えとはサスガ秋葉原!大歓迎だな!」

「外に車を待たせています、御主人様」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


蔵前橋重刑務所。独房棟。


「ボヤボヤするな」

「1列に並べ」

「点呼異常なし。囚人移送を開始」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田練塀町。安いボロアパート。


「こんちわ!"Uper Eats"です」

「あ、はい。ちょっと待って」

「"ハロウィン牛丼"の並ですね?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


空港駐車場の車内。


「証言録取まで時間がある。秋葉原のオムライスでも…や?何でスーパーヒロインに変身を?」

「コレだと指紋が残らないので」

「君は…スーパーヒロインなのか?」


次の瞬間、フロントガラスに血飛沫が飛ぶ!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


独房棟の廊下を1列になって歩く囚人達。


「ん?待て!お前、カミソリを隠し持ってるな!」

「ぎゃー!止めてくれ!うわ!ぎゃ!」

「コイツを抑えろ!早く!」


メッタ刺しにされ瀕死の囚人が泣き叫ぶ!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"Uper Eats"が配達バッグから音波銃を抜く!


万世橋警察署(アキバP.D.)!音波銃をおろせ!」

「くそっ!やっちまえ!」

「抵抗するな!」


次の瞬間、蜂の巣になり地面に崩れ落ちる"Uper Eats"。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は、ラボでお気に入りの黒シャツを前に悪戦苦闘してるw


「うーん…見てられないわ。貸して」

「おおおぉ。組合せ論が得意なハッカーは、シャツの折り目もピッタリ180度かw参りました」

「高校時代にアパレル店でバイトしてたの。私、特技は洋服の早たたみだから」


スク水ハッカーのスピアは、僕のスーツケースを開けて、中の服を一旦外に出し、たたみ直してくれてる…大助かりだw


「テリィたん。SATOの特殊部隊訓練、ホントに受けるつもりなの?」

「今まで戦闘訓練って受けたコトがなくて。いつも襲われるばかりだから参加しといて損は無い」

「カリキュラムは?何をするの?」


答えは、ラボのモニター画面の中のミユリさんから。


「護身術と射撃の訓練だそうょ。役に立つとは思うけど…」

「射撃?」

「あ、ルイナ。テリィたんがウチの訓練を受けルンだって。2日間コース」


ラボの主ルイナが話に割り込む。史上最年少で首相官邸アドバイザーとなった超天才ルイナは、車椅子のゴスロリ女子。


「元は、SATOのレイカ司令官のアイディアなんだ」

「あら?レイカは、テリィ様から頼まれたとか。テリィ様、今後は音波銃を携帯されるおつもり?」

「うーん手錠ぐらいだな」

「まぁ」


ナゼか赤面するミユリさんを見てニンマリしていたら、スピアが僕の頭にシャツを被せるwせっかく畳んでくれたのに!


ソコヘ!万世橋(アキバポリス)のラギィ警部が割り込む!


「ヲタッキーズ?"異次元マフィア"裁判の証人2人が襲われた。3人目は犯人を返り討ちにしたわ。多分、ウチとの合同捜査になるけど、来る?」

「え。今から訓練ナンだけど」

「警部、私達が現場に参ります。テリィ様は訓練へ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕の推しミユリさんは、ムーンライトセレナーダーに変身して現場に到着。メイド服で下はバニーガールのコスプレだ←


「"Uper"のデリバリーを装う計画的な犯行だわ。ムーンライトセレナーダー、正体は多分"異次元マフィア"の殺し屋ょ」


鑑識がアチコチ写真を撮る。プールを囲むアパートメント。


「そ。で、彼は誰を狙ったのかしら」

「"異次元マフィア"に対する裁判の検察側証人レジス・ミスミ。"昭和ストリートボーイズ"の大物を蔵前橋(の重刑務所)にブチ込む重要証言をスル予定だった。1ヵ月前から検察庁がココで保護してた」

「してた?なるほど、お部屋はモヌケのカラw」


部屋の中を覗くムーンライトセレナーダー。


「午後、慌てて出て行くトコロを管理人が目撃してる」

「自分が狙われてると気がついた?」

「そりゃ殺し屋が襲って来たンだモノね。恐らく秋葉原を出るつもりだわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


早速、万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。


「証人のベルジ氏が暗殺された時の駐車場の監視カメラ画像です」

「やや?この女、気温20℃の日に革手袋だと?」

「思いっ切り怪しいけど桜田門(けいしちょう)の顔認証にヒットなし。次長検事が刺された囚人から臨終供述をとっています」


え。次長検事?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


包帯グルグル巻きで、ほとんどミイラ男と化した証人にライトを当て、カメラで撮影しつつ供述書を取るのは…ミクスw


バイタルデータが弱々しく脈打つ。


「テリィ様が気不味いなら、私が話を伺いますが」

「大丈夫だ。問題ナイょミユリさん」

「ん?ラッツ…」


アキバに来る前の名前で僕を呼んだミクスは実は元カノw

病室の外の僕に気づき、少し驚いた顔をしてから…睨む←


「また貴方が出て来るのね。嫌な街だわ、秋葉原」

「おかえり。待ってたょ」

「私は、SATOに連絡して参ります。それでは」


ミクスに会釈して席を外すミユリさん…こりゃ後が怖いや。

ミユリさんを目で追ったミクスは、太った男の画像を示す。


「被告は、レイビ・ジーラ。殺人、強盗、脅迫、誘拐…何でもアリの"昭和ストリートボーイズ"のリーダー」

「東秋葉原のゴッドファーザーだ」

「今も蔵前橋(の重刑務所w)から手下に指令を出してる。でも、その方法が謎なの…さっきのメイドさん、ラッツの推し?」


迂闊な質問は無視して、僕は2枚目の画像を指差す。


「コッチも"昭和ストリートボーイズ"か?コイツもデブだけど、コイツら全員こんな感じなのか?」

「恐らくジーラの命令で、蔵前橋(の重刑務所)の中で別の証人に瀕死の重症を負わせた。今、臨終供述を録取してるけど…公判で使えるかは微妙だわ」

「裁判官が納得するかな?」


ミクスは、溜め息をつく。


「所轄が仕留めた3人目の殺し屋も"昭和ストリートボーイズ"だった。今、逃げてる証人が生きてれば、裁判に勝つ見込みはアル」

「3人同時襲撃は、どう考えても計画的だ。万世橋(アキバポリス)は、検察筋から情報が漏れたと思ってる」

「疑われても仕方ナイ。情報は、ジーラの右腕で仮釈放中のドアイ・ヘピーに集まってる。殺人もためらわない。今頃、所轄が事情聴取してるわ」


今度は、僕が溜め息をつく。


「情報にアクセス出来た人間は? 」

「膨大な数になるわ。調べ出したら何ヶ月もかかる」

「…いつアキバに?」


目を伏せるミクス。


「昨夜から…ゴメン。もうラッツとはモメたくナイの」

「何も心配しなくても」

「ラッツは、前もそう言ったょね」


断続的だった電子音が長く伸び、証人は神に召される。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部の取調室。


ラギィ警部は、取調室に入って来たドアイ・ヘピーを一眼見て、いったい何食べたらココまで太れるの?と率直に思う。


「アンタが責任者か?」

「証人が2人、死んだわ」

「裏切り者の末路ね。お悔やみ言うわ」


うそぶくヘピー。


「アンタが注文した"Uper E ats"も死んだけど」

「何の話かわからねぇ。とにかく、アタシは関係ナイわ。最近の秋葉原は物騒ね。しっかりしてょ、警察」

「気の毒に」


突然ヘピーは笑う。するとラギィはさらに大きな声で笑うw


「裁判が始まったら司法取引は〆切ょ。懲役25年以上は確定ね。コレ以上、証人を殺しても後悔するだけだから」


ラギィは取調室を出て逝く。憮然とするヘピー。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、僕は中央通りで…戦車を運転しているw


「テロリストにジャックされた原子力戦車を追跡し、原子炉を傷つけるコトなく破壊して秋葉原のヲタクを護る。ソレが今回の任務だ。ホラ!神田明神通りをターゲットが暴走して来たぞ!GO!」

「ROG。安全ベルト良し!サイドミラー良し…」

「何してる!目の前に…何かに掴まれ!」


トンデモない衝撃が僕が襲う。だが、ベルト装着を怠らない僕は敢然とアクセルを踏み込んで、戦車を発進させる!


「何してる?自動車教習所じゃないぞ!無線で本部に連絡!状況を報告しろ!」

「ハローハロー。聞こえますか?今、暴走戦車を追跡中です。えっと、あれ?コレはワイパーか?敵戦車は、えっと濃い緑色で、型式は恐らく…何だろう?」

「よく見ろ!」


良く見えないから聞いたのに…わ!目の前にベビーカーw


「いたいけな母娘ご臨終!訓練停止…あ、ムーンライトセレナーダー。何か?」

「私のTO(トップヲタク)、お借りしても?」

「どうぞごゆっくり。返さなくても…」


戦車用ドライブシュミレーターのドアが開き、ムーンライトセレナーダー、つまり、ミユリさんが顔を覗かせて微笑む。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「情報にアクセス出来た人数は?」

「約50人ですが…メールも含めると数千人です」

「問題は量より質さ。ルイナに頼んで"時間リンク解析"をやってもらえば良いと思うょ」


シミュレーターから出たトコロで飲む、紙コップに入った安いコーヒーとか大好きだ。

目の前には、作者の妄想満載コスプレに身を包んだスーパーヒロインに変身した推し。


満腹だー☆


「も少し詳しくお願いします」

「例えば、ダイアモンドさ」

「素敵な例えですね。買って」←


ふざけてオネダリ顔になるムーンライトセレナーダー。


「光り輝くダイアモンドも、最初は大きな原石だ。顕微鏡で傷や不純物を探して、価値を下げる欠点を切り落として逝く。すると、最後に貴重な輝きが現れる。"時間リンク解析"も同じ発想だ。情報にアクセス出来る人が送ったメールの中から不要なモノを取り除くワケさ」

「ビジネス外のメールを探すワケですね?」

「その通り」


ココでコーヒーブレイク終了。お座敷だ。


「おい!テリィたんの番だ。シミュレーターに戻れ!」

「ルイナとスピアなら上手くやってくれるさ」

「わかりました…念のためにテリィ様、普通の車の場合は、カーブの手前でブレーキ、出る時にアクセルです」


脳髄に落雷したような衝撃w


「そ、そうなの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ラギィ警部。レイビ・ジーラは、他の囚人との面会は禁じられてるそうです。代わりに、リバイ・ホルドが頻繁に面会しています」

「何者?ソイツが塀の外への命令伝達係ね?」

「ソレが…まるで透明人間です。住所も免許も何もない。唯一ある電話番号は"ニコニコプラザ"の番号で…」


報告を聞いていたラギィ警部は怪訝な顔だ。


「"ニコニコプラザ"って何ょ?」

「地域のレクリエーションセンターみたいなモノで、東秋葉原だと和泉パークに隣接してます。まぁ公民館と図書館と子供館が合体したような…」

「ヲタッキーズのマリレがボランティアに行ってた奴?」

「いや。ソレは存じませんが。確かに公的施設ですが、運営はボランティアに頼ってるよーです」


ラギィ警部は、ポンと手を打つ。


「じゃボランティアに任せましょ。ヲタッキーズを呼んで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


昼下がりの和泉パーク。下校前で小学生の姿はナイ。


「アレがリバヤ・ホルト?…子供なのね?」

「私1人の方が正解カモ」

「あら何で?私、子供に人気がアルのょ!」


和泉パークの1角では、常に大判将棋が行われてる。

表面に将棋盤が描かれた木製テーブル。駒は持参w


「王手!」

「え。ちょっと…」

「詰んでる。さぁ千円ちょーだい!」


リバヤ・ホルドは、見たトコロはローティーンw

だが、盤を挟んだ年配の男は悔しそうに千円払う


「私はクールだけど、エアリはクールじゃないからょ…貴女がリバヤ・ホルト?」

「ココじゃ香車と呼ばれてるけど」

南秋葉原条約機構(SATO)のマリレょ」


SATOは、秋葉原に開いた"リアルの裂け目"から降臨スル脅威に敢然と挑戦スル、首相官邸直属の秘密防衛組織だ。


「SATOって何か特別なの?」

「さぁ?死体と話せるょ?今日も2人の死者と話した。レイビ・ジーラって男に殺されたと言ってたわ。刑務所の面会記録を見たら、君が毎週会いに行ってるコトがわかった」

「ソレって犯罪なの?」


ガキンチョだが取りつく島もないw隣のベンチで後ろ向きに座っているエアリの肩が小刻みに震える。笑ってるらしいw


「あのね。コレでも配慮してるの。警察署に連行して母親に連絡しても良いのょ?」

「すげぇ!あの世の母さんと話せたらモノホンの霊能者ょ。尊敬しちゃうわメイドさん」

「もう1度だけ聞くわ。レイビ・ジーラと毎週会って、何を話してるのかしら」


すると、リバヤは盤面の駒を集めて袋に入れ、立ち上がる。


「将棋ょ。ジーラは将棋を教えてくれる。私は神童ナンだって。あの人は恩人なの。聞く相手を間違えたね、メイドさん」


将棋駒を入れた袋を提げて立ち去るリバヤ。

駒のない将棋盤の前に取り残されるマリレ。


エアリがからかう。


「お疲れ、マリレ」

「ね?私、クールだったでしょ?」

「まぁね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


車椅子の超天才ルイナのラボは、主に警備の都合からパーツ通り地下数千mに作られたSATO司令部に併設されている。


「レイビ・ジーラ関連のメールは5000通。学習データからネットワークを構築してメール中の言葉と照合スル…うーんサスガはテリィたん。スゴい名案だわ」

「え。テリィたん、ソコまでは言ってなかったわ。でも、行き詰まると、あるイギリス人を参考にしてるとか」

「ニュートンね?!」


ルイナは鼻息荒いが、唯一の相棒スピアの回答はクールw


「シャーロック・ホームズ。論理的には1滴の水から大西洋やナイアガラの存在を推測出来る。まぁニュートンも多分同じよーなコトを…」

「お疲れ、天才のみなさん!メールの解析、終わった?」

「はーい。あるユーザのパターンに破綻があったわ」


ラボのルイナに会議アプリで話しかけるラギィ警部。


「破綻ユーザのIDはpf0121505。誰よりも大量に3人の証人の情報を要求してるわ」

「確かなの?」

「かなりね。何か問題?」


会議アプリも切らズ、何処かへ飛び出して逝くラギィ警部。


「あらら。どうなってるの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


最高検察庁。ミクス次長検事のオフィス。深夜、ただ1人でミクスが残業していると、ドヤドヤ警官が乗り込んで来る。


「次長検事。問題発生ょ」

「所轄のラギィ警部?レジス・ミスミが見つかったとか?まさか、もう死体?」

「いいえ。ソンなコトより次長検事、死んだ証人の情報を集めていましたね?」


詰問調だ。ミクスは警戒スル。


「担当検察官だモノ、当然だわ」

「プライバシーまで調べ上げる必要があったかしら?」

「待って。私がレイビ・ジーラに情報を流していたとでも?」


色めき立つミクス。


「次長検事は、囚人移送の情報を御存知だった。また、重要証人ベルジ氏についても、到着に合わせて地下鉄新幹線の時間を変更したりしておられる」

「最高検察庁を疑うの?何をスルつもり?」

「御説明いただきます。署で」


ビニ手の警官達がデスク上の一切を証拠品袋に収め出すw


「最低ね。ラッツを呼んで」


第2章 訓練が始まった!


ミクス次長検事は、万世橋(アキバポリス)の取調室へと通される。

隣室でマジックミラー越しに彼女を見たラギィは。


「最高検察庁の次長検事でしょ?職位を捨てて金に走るタイプには見えナイわ。テリィたんにフラれてヤケのヤンパチになってるだけじゃナイの?」

「おいおい、ラギィ。彼女をココに連れて来たのは万世橋(アキバポリス)だろ?」

「そーゆーテリィたんは、元カノ案件だから客観性を欠いてるわ。余計な口を挟まないで」


じゃ呼ぶなw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、1仕事終えたルイナは、ラボが併設しているSATO司令部のギャレーで、紙コップでコーヒーを飲んでいる。


「マズい。何でテリィたんは、こんなコーヒーを飲むのかしら。これじゃ拷問ょ…あら、マリレ?ムーンライトセレナーダーなら、いないけど」

「今日は、超天才に会いに来たの」

「え。」


ルイナはSATOの科学顧問、ヲタッキーズはSATO傘下の民間軍事会社(PMC)。どちらもSATOの"業者"みたいなモンだw


「実は、将棋が強くなりたいの!」

「全人生かけないと無理ポ」

「今日の午後を空けたけど、何とかなる?」


深々と頭を下げるメイド姿のロケットガール。


「と、とにかく直ぐ始めないと。スターバッカスのリキュールコーヒーを買って来て!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「で、マリレ。将棋の対戦相手はプロ?」

「ソレが14才の父親のいない少女。ストリートギャングのボスを崇拝してる」

「児童教育学の基本から言えば、女子はその年頃が1番難しいらしいわ」


超天才ルイナは何でも知っているw


「でもね、ルイナ。こう言ってはナンだけど、状況が違うのょ。私達って、ホラ、食事の心配とかしたコト無いでしょ?」

「ナンセンス。将来への不安はみんな同じ。生活のレベルは関係ナイの。統計的に証明されてる…はい、王手」

「ちょっと待って!」


超天才ルイナが、マリレにスゴいスピードで将棋を教え出す横で、相棒のスピアは、何気にハッキングして頭をヒネる。


「あら。ベルジ証人のスマホだけど、殺害される直前にクローンスマホからの着信がアルわ」

「え。ソレって"殺し屋メイド"からじゃナイの?」

「ちょっち危ないアプリを使うと、もしかしたら革手袋してる女のスマホから、画像ファイルがダウンロード出来ちゃうカモなんだけど…あぁ出来ちゃったわ。どーしましょうw」


ルイナに頭をコズかれ画像をラボのモニターに出すスピア。


「1枚目は、ベルジの顔の画像ね。ターゲットをピックアップするための参考画像だわ。で、2枚目だけど…」

「ごめーん。途中でダウンロードが止まって、画像の下半分が砂嵐になっちゃった。何処かの街角?」

「NASAのリクエストで、光を吸い込むブラックホールの全景を可視化したコトがアルけど、その時のアルゴリズムで補正してみるわ。その画像データ、頂戴」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、僕は"セクシー柔道場"でエラい目に遭ってる。

あ、風俗じゃないょ。スーパーヒロイン専門の格闘場だ←


「次!テリィたん、女囚を護送だ!」

「あ、はい。コチラへどうぞ…」

「いやあああぁ!」


彼女の悲鳴…ではなく気合いの声で、その声が消える頃、僕は既にタタミの上で激しくバウンドし、呼吸が止まってるw


「わっはっはっは…」


豪快に笑う女囚役が僕を見下ろす。

その彼女をどけ、ミユリさん登場←


「…立てますか?教官、テリィ様をお借りします」

「どうぞ、ムーンライトセレナーダー!…ってか、もう返してくれなくても良いけど!」

「スゴいょミユリさん!全部、明日から役に立ちそうだ!」


機先を制して先制パンチ←


「ソレは良かったですね。ところで、ココは何処?」


私は誰?…ミユリさんは半分バグって消えてる画像を示す。


「あ。妻恋坂の交差点だ」

「はい?な、何でわかるんですか?」

「閉店したジョナサンの後に名古屋から来たコーヒー屋が開店準備中のネオンの端っこが映ってる。横断歩道を歩いてる派遣社員風おばさんが食べてるコロッケは妻恋精肉店の新発売だ。その横を通り過ぎる女子は"アキバ洗体ヲタレンジャー"でNo.3のミポ…あわわ!」


しまった!秘密の風俗通いが推しバレwところが…


「さすがはテリィ様!重要な現場なのです。一緒に出れますか?教官には私から…」

「ヤメてくれょミユリさん。さっき、ラギィに泣きつかれて訓練に大穴を開けたばかりナンだ。ソレに、ルイナに見せれば"SML"で直ぐ何処だか分析してくれるょ?」

「え…スエム、ですか?」


微かに頬を赤らめるミユリさん。何でだw


「"SML"だょ!例えば、麻薬捜索犬。犬に薬の写真を見せても無駄だけど、薬の匂いを嗅がせれば、その匂いを追う。"SML"も同じさ。与えられた情報を手がかりに、類似するネット情報を探し出すワケ」

「素敵です、テリィ様」

「何ならルイナに話しとこうか?スマホある?」


ところが、ココで鬼教官から怒声←


「こらぁ!テリィたん、終わったか?すぐ来い!」


切羽詰まった僕はミユリさんにスガるw


「ミユリさん、またアドバイスを!」

「最初の握手をした直後に急所を蹴り上げるのです」

「え。でも、相手は女子だぜ?」


ミユリさんはニッコリと微笑む。


「だから、効くの」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「桂馬をC3へ」

「王手!マリレ、貴女って絶望的に下手だわ」

「ああっ神田明神様!」


熱戦?続くルイナのラボ。突然、モニターからラギィ警部の声が響く。ミクス検事の事情聴取のハズだが…新たな展開?


「マリレ、いる?あのね、最高検察庁は、職員の全PCのメンテを特定の業者に任せてた。で、ミクスのPCは、昨年6回もメンテが行われてるの。ね、エアリ?」

「YES。で、ミクスのメンテはアンジってエンジニア1人が担当してルンだけど、このアンジって女には強盗犯の過去があった。ホラ、共犯者もいるわ」

「げ。共犯は、今回命を狙われた証人のレジス・ミスミだわ。ってか、この2人は結婚してる!あら?翌年に離婚してるけど」


捜査本部に残ってたエアリがラギィと交互に喋ってる。


「アンジは、ミクス検事のPCから情報を盗んで、蔵前橋(の重刑務所)に拘留されてるレイビ・ジーラに流してた?」

「ところが、今回は元カレが標的だと知り、本人に教えて今頃2人は恋の逃避行?」

「どーして悪い奴等ばかりヨリが戻るの?卑怯ょ!」


リモート会議中の女子3名は全員が大きくうなずく←


「とりあえず!アンジの住所は神田佐久間町のロフト!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田佐久間町のロフト。飛行呪文で舞い降りるエアリ。

マリレはロケットガールなので文字通りひとっ飛びだ。


「ヲタッキーズです。誰かいますか?」

「2人のヨリは戻ったの?」

「アンジ、いるんでしょ?」


錆びたフェンスや古いタイヤ置き場に囲まれた安アパート。街灯すらナイ真っ暗闇に目を凝らし、薄いドアを開け中へ。


死体が2つ転がってるw


「額に1発。22㎐の音波銃で撃たれてる」

「22Hz?証人のベルジを殺ったのと同じ音波銃ね」

「プロの殺し屋の仕事だわ。膝を撃ってる」

 

第3話 元カノに発信器


その夜遅く。最高検察庁のミクスのオフィスを訪ねる。

ミクスは、返却された押収書類を黙々と元に戻してるw


「良いのょラッツ。ほっといて」

「ミクス。君だって同じコトをしたハズだ…多分」

「いいえ、しないわ。いや、させない。ラッツは元カノがこんな目に遭うのを黙って見てない。なのに、貴方は変わったわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。今宵も本部は眠らない。


「ラギィ。アンジは、殺される前に5回もレイビ・ジーラに電話をしてるわね」


ムーンライトセレナーダーは、万世橋(アキバポリス)が押収した証拠品袋入りのスマホを示す。本部のモニターには通話記録が流れる。


「なぜ自分を狙う相手に電話したのでしょう?あら、口の中に何が?」

「千円札が5枚入ってました。一緒に殺されたレジス・ミスミの口にも丸め込んだ札が5枚」

「何かのメッセージ?」


モニター画像は、レジスのポカンと開いた口からピンセットで千円札をつまみ出す鑑識の画像に変わる。1枚、2枚…


「自由を金で買おうとしたンだ」


僕が本部に入って来たのは、このタイミング。迷彩服に突撃銃、肩にパンツァーファウストを担ぐ装甲擲弾兵スタイル!


「今から突入の訓練ナンだ!人質の救出作戦」

「素敵。何かアドバイスが必要ですか?テリィ様」

「ってか、そのMP-44はモノホンなの?テリィたん」


ウットリするミユリさんに迷惑そうな顔のラギィ警部。


「もちろん、ペイント弾だ。でも、さっき当たるとたまらなく痛いってコトも(思い)知った。特に乙女のお肌には大敵だ」

「で、ランボー。何か御用でしょうか?」

「そうだった実は…ルイナ!」


モニターに呼びかけながら肩のパンツァーファウストをヨイショと下すと、噴射口がアチコチ向き全員が右往左往スルw


「テリィたん!対戦車ロケット弾の噴射口をコッチに向けないで!ソレとも、ソレもペイント弾?」


ラギィ警部は、マジで責めるように…僕ではなく、ムーンライトセレナーダーを睨む。が、笑って受け流すミユリさんw


推しの鏡だ←


「ルイナとスピアが砂嵐みたいな画像の場所を特定した」

「アルゴリズムを回したら妻恋坂の交差点だとわかったわ」

「スピア、絵を出してょ」


本部のモニターに下半分に砂嵐が飛んでる風景画像が映るが、ラボでスピアが操作スルと、画像がみるみるクリアに。


「まぁ。確かに妻恋坂だわ。ジョナサンがなかったっけ?」

「去年閉店した。で、角のマンションには、検察庁のミクスが住んでいる」

「え。次のターゲットは彼女ってコト?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


末広町ステーション直結のタワマン37F。ノックの音に腰の音波銃に手を伸ばしてドアの覗き穴で外を確認するメイド。


「何だ。テリィたんか。何?元カノ訪問?ミユリ姉様には断ってから来てる?」

「…お疲れエアリ。どっかでお茶でも飲んで来いょ。またあとでな」

「最初に妻恋坂って言い当てたの、テリィたんだって?元カノのマンションがあるから覚えてたのね?ねぇそーでしょ…」


ウルサいメイドを無理矢理キッチンに押し込む←


「…以前も私、この部屋でラッツと週末を過ごしたいなって思ってた。モチロン、警護は抜きで」

「恐らくレイビ・ジーラには、君が録取した臨終供述が脅威ナンだ」

「素直に私がダーゲットだと言えば?」


何でそんなに喧嘩腰ナンだょミクス。


「君のコトは守るょ(エアリがw)」

「ラッツに守ってくれナンて言ってナイわ!そもそも、ラッツは私の味方なの?」

「僕は、ヲタクの味方だ」


瞬間、絶句したミクスは直ちに体位を入れ替え、じゃなかった、態勢を立て直し、ウクライダみたいに反転攻勢に出るw


「私だって…私だって法律ヲタクだもん!…ラッツ、いつから貴方、ソンな嫌な奴になったの?」

「確かSATOの心理作戦部長のカウンセリングでも、そんなコトを逝われたな」

「その部長サンには、謝り方とか教わらなかった?」


突然のキス←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。捜査本部では捜査会議が白熱w


「最初の被害者のベルジ氏です」


本部のスクリーンに脳天に1発食らった死体の画像。


「で、殺害直前にこのメイドが彼と歩いていたのが目撃されてます。顔をズームアップして」

「はい。警部」

「名前はコラル。"リアルの裂け目"の向こうから来た殺し屋で"blood type BLUE"。スーパーヒロインです。つまり、レイビ・ジーラは、コッチ側の人間は信用しナイってタイプみたい」


捜査員の前で長い溜め息をつくラギィ警部。


「そして、この殺し屋メイドは未だ秋葉原にいるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の遅く。疲れ果てた装甲擲弾兵は、モスクワ前面から退却スルような重い足取りで"潜り酒場(スピークイージー)"へとたどり着く。


「おかえりなさいませ、テリィ様」

「ミ、ユ、リ、さ、ん…」

「大丈夫ですか!テリィ様!しっかりせょと刺し殺し…」


笑える。御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラと居心地が良くなって、スッカリ僕達の基地にw


「人質奪還訓練、かなり苦戦されたよーですね」

「教官にもそう言われた。銃撃戦が始まったら、僕はカラダを丸めてミユリさんを呼ぶ係になった」←

「素敵!いつでもお呼びください!で、テリィ様は必死の伝令となって私のもとへいらっしゃる?」


ソレが違うンだw


「いや。呼ぶのはテレパシーになった」←

「ますます素敵!お待ちしてます!いつでも、何処へでも、駆けつけます!」

「タマにはほっといてくれ…ミユリさん達の活躍で、ヲタッキーズは有名になったけど、僕は評判を落とすばかりだ。全く手に負えないょリアルは男も女も野獣ばかりだ」


僕は痛む腰をさする。明日はもっと痛くなってるだろうw


「テリィ様のお好きなインドでは"強さの源は、肉体ではなく不屈の精神にある"とか申します」

「ガンジーだっけ?でも、彼は民間軍事会社(ヲタッキーズ)のCEOじゃなかったしな」

「では、テリィ様。初めてアキバに来た頃を御記憶ですか?私達、いつもヲタクから妬まれてました」


アキバに来る前、ミユリさんは池袋、僕は渋谷だ。


「ソレって嫌われてたってコト?」

「嫌われてたは、言葉として強過ぎます。せめて、憎まれてたとか」

「おんなじだょミユリさん」


僕は、総力を挙げて脱力スルw


「でも、テリィ様はみんなの敬意を勝ち取られた。最後には。真面目さと優しい心と…そして、何より誰よりも優れたヲタク心でね。テリィ様には、ヲタクの才能がある。その才能をリアルだけに使う必要はありません」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原。和泉パークの大盤将棋コーナー。


「はい、王手。千円ちょーだい」


悔しそうに席を立つ私立校の男子生徒。恐らく高校生。

ソコヘブラりと現れたメイドが席に座り千円札を出す。


「マジ?」

「他に方法がナイでしょ?さ。お先にどうぞ」

「ソッチが先手ょ。メイドさん、ルール知らないの?」


ヲタッキーズのマリレが生意気な将棋娘に挑む。


「え、あ。そーだったわ。知ってるわょルールくらい」

「早くして」

「…さぁリバヤの番ょ」


マリレが対局時計を押す前にリバヤは指し時計を押してるw

ムキになって早指しするマリレ。さらに超早指しのリバヤ。


「王手!」

「え。マジ?はい、千円」

「げ。まだヤルの?」


お互いがお互いに驚きつつ昼下がりの決闘は続くw


「はい、千円。次、行くわょ」

「…どーぞお好きに。はい、王手」

「ごめん。次から領収書、くれる?」


お互いがお互いに呆れ出した頃、マリレはつぶやく。


「父も昔、大盤将棋をやってたの」

「さぞかし、下手だったのね」

「大盤将棋のメッカ、新橋でチャンピオンだった。山手線の東側じゃ大盤将棋のメッカょ」


うーん確かマリレはベルリン育ちのハズだが…


「じゃそのパパに教わってから来てょ」

「出来れば教わりたい。でも、アンタがアタシぐらいの時に死んだわ。ねぇリバヤ。その歳で一家を支えるのは大変でしょ?面倒を見てくれたパパが恋しいわね」

「レイビは親切なの。レイビがどんな悪者だろーと、アタシには関係ナイわ」


下手な手を指しながら諭すマリレ。


「でも、ソレじゃダメなの。いずれ、貴女自身に降りかかってくるわ。OK?監視カメラの映像を見たけど、貴女が持っていたノートの中身を知りたいの」


口をヘの字に曲げたリバヤは、尻ポケットから手帳を出す。


「メイドさん。ヲタクを疑う人生はツマラナイね」


マリレは答えズに手帳を開くと…棋譜だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


妻恋坂のタワマン37F。


「アレは、やさしいウソね。いつだって、ラッツは他の誰かの味方だった」

「君こそ。黙って消えてショックだったさ」

「ラッツが近づきすぎたカラょ」


この会話に激しくデジャブw


「僕だって怖かったんだ」

「…そっか。だから、私達は付き合えたのね」

「ホントのトコロ、何があった?」


語り出すミクス。大人になったな。


「ラッツの部屋の引き出し、使わせてくれたょね?」

「君はヘアクリップを入れてた」

「ある日、ソレを持って出勤したら…」


ガチャリ!エアリがキッチンから出て来るw


「お茶、御馳走様。テリィたん、訓練再開だって」

「え。おおぉ!次は楽しみにしてたロケット弾の射撃だ!」

「じゃテリィたん。また後で」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「275点。上等だ。はい、次のグループ!」


教官が吠え、僕達"次のグループ"は射撃位置へ。


「全員!耐ショック、耐閃光防御!位置につけ!」


パンツァーファウストの発射訓練だ。僕はつぶやく。


「よく目を凝らせ。軌道が見えて来るハズ」


発射!爆煙を噴き上げ放物線を描いて飛ぶロケット弾は…


「驚いたな!296、最高得点だ!テリィたん、秘密のオマジナイでも唱えた?」

「"速さも大事だが、正確さも肝心だ。急いでユックリ吹け"だって」

「吹く?」


僕は、キョトン顔の教官の肩を叩く。


「ある JAZZ trombone の神様の言葉さ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び僕は妻恋坂のタワマン37F。


「お食事の時間です。ma'am」


仕事部屋のPCの前から立ち上がったミクスは、応接セットに並ぶ料理に目を輝かす。

ナプキンを肩にかけた僕は、御屋敷から持参したダッジオーブンを提げ手を差し示す。


「こちらへ。今宵はダッジオーブンディナーです」

「SATOの心理作戦部長に感謝ね。うふふ」

「2時間かけたローストチキン!さぁどーぞ!」


そう逝いながら、ダッジオーブンの蓋を取る。

キャンドルの横にはプレゼントが置いてある。


「あら。コレは何?」

「君に」

「ヘアクリップだわ!素敵過ぎる…ねぇ来て」


キスしかけた瞬間、無線通話のブザーが鳴る。


「テリィたん!訓練再開だ!戻れ!」

「…ラッツ。行っちゃうの?」

「次は対戦車ライフルだ。済ませたら戻るから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、超天才ルイナのラボにマリレがやって来る。


「マリレ、忙しい?」

「宇宙の深淵な闇の中から素粒子を探してるトコロょ。具体的には、素粒子物理学の最前線で存在が予測されているダークマター粒子を探求しているトコロ」

「ソレが終わったら見てもらえる?」


マリレは、棋譜のコピーを見せる。


「何かの被害者のリスト?レイビ・ジーラって誰だっけ?」

「蔵前橋(の重刑務所)で、このリストを描いた人物ょ」

「へぇ。監視されながら描いたの?器用ね」


ルイナは車椅子にゴスロリがトレードマーク。

相棒のスピアはスク水。マリレはメイド服だw


実にアキバ的な風景で和む←


「多分暗号を使ってる。将棋を教えながら暗号にした"お告げ"を獄中から子分達に渡してる可能性がアル」

「うーん将棋のプレイ中に何かを隠すのは無理カモ」

「面会中の監視画像がアルけど、見る?」


ゴスとスク水とメイドが、それぞれムダ?に胸の谷間をチラ見せしつつ額を寄せ合い小さなPC画面に見入る。萌える←


「つまり、メッセージは棋譜の中にあるワケ。解読出来るかしら?」

「うーん鍵がいくつか必要ね。被害者の名前はバレてるから"後退帰納法"を使えば可能カモしれないわ。ホラ、ロゼッタストーンには、同じ文章が3つの言語で描かれてたでしょ?つまり、1つの言語がわかれば、残りの2つの言語も読めるようにナルの。そのためには、先ず2つのデータを比べて重複してる部分を探す。そして、既知の事件や組織犯罪と比較して暗号を解読するワケ」

「なーるほど。そーだったの。じゃお願いね」


わかったようなわからナイような顔のマリレ。

ムーンウォークしてルイナのラボを後にスル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


妻恋坂のタワマン37Fではミクスが微笑んでいる。

彼女の手には、僕がプレゼントしたヘアクリップ。


「あ、マリレさんの交代の…えっとエアリさんでしたっけ?食べて。私は、書斎で片付けたい仕事がアルから」

「はい(鶏の丸焼き!何なの?この豪勢な料理?)」

「私の警護、ありがとう(私、プレゼントに弱い女と思われたかしら?)」


エアリは切り分けたチキンをソファで食べ始める。

ミクスは早速ヘアクリップで髪を止め仕事を開始←


その時…


小さな物音がして、ベランダに別のメイドの人影。

証人のペルジを暗殺した殺し屋メイドのコラルだw


高層階ゆえ施錠してないサッシが、音もなく開く。

コラルが侵入、料理に夢中のエアリに襲いかかる!


「ミクス!逃げて!」


次の瞬間、コラルの腕が槍状に伸びエアリを貫く。

信じられないという顔のエアリはバッタリ倒れる。


「あぁ!エアリさん!」

「ヲタッキーズ、大したコト無いわ。次はアンタ!」

「待ちなさいょ…ぐあぁ!」


書斎から飛び出して来たミクスをコラルが襲うが…

瀕死のエアリに足を掴まれ転倒!エアリを蹴破るw


「逃げて…」

「このくたばりぞこない!」

「ぎゃあ!」


その合間に、ミクスは専用エレベーターで地上へ!

真夜中で無人のパーツ通りを一目散に駆け抜けるw


「エアリ、コード7発生。至急応援を要請。負傷しました。犯人はスーパーヒロイン。腕が劣化ウラン槍に変態。保護対象者を追跡中…」

「エアリ?大丈夫?」

「姉様、ごめんなさい…」


一方、ミクスは真夜中のアキバを駆け抜けて、いつしか神田リバーの畔へと出る。

リバーに突き出した水上バスの桟橋の先に追い詰められるミクス。コラルが迫るw


「助けて。誰かお願い!」


獲物を追い詰めた殺し屋メイドのコラルの腕が、銀色に輝く劣化ウラン槍に変態!

ミクスの胸を貫くと思われた瞬間、コラルは赤い火の玉と化し萌え上がるコラルw


「ミクス次長検事!御無事で?ヲタッキーズのムーンライトセレナーダーです。以後お見知り置きを!」


必殺技"雷キネシス"のポーズをキメたママ、ムーンライトセレナーダーの口上!

萌え上がるコラルは神田リバーへと落ち、四肢を広げた姿でプカプカ浮いて燻る←


「助かった!ありがとう、ムーンライトセレナーダー。でも、ナゼ私がココだと?」

「コレのお陰です」

「あ。ソレは…ラッツからもらったヘアクリップ?」


ミクスはヘアクリップを外し、アップにしてた髪を下ろす。


「どーゆーコト?ムーンライトセレナーダー」

「テリィ様が貴女にプレゼントしたヘアクリップには、発信器が組み込まれていました。私達、ヲタッキーズはズッとトレースしていました」

「…そうだったの。でも、また別の殺し屋が来るわね」


唇を噛むミクスに、ムーンライトセレナーダーは告げる。


「大丈夫。テリィ様の元カノに指1本触れさせません」


第4章 友達から金は取らない


"外神田ER"のER←


「エアリ、大丈夫?リンデ院長がオペは成功だって!」

「でも、ヤラレちゃった。テヘペロ」

「その後で姉様が仕留めたわ。"雷キネシス"で」


スーパーヒロインゆえ急速回復中のエアリを見舞うマリレ。


「マリレ。和泉パークの女の子、元気?」

「リバヤ・ホルド?」

「私、あーゆー子供達の行き着く先って知ってるの。今まで何度も見て来てるから」


術後のエアリの囁きは弱々しい。


「リバヤ・ホルドが気にならないの?」

「エアリ。言いたいコトがあるのなら、聞いてあげるけど」

「マリレ。気にならないフリはヤメて。あの子の未来を変えてあげて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パンツァーファウストを撃ち終えた僕は、ゴスロリのルイナとスク水のスピアが揃って頭をヒネっているラボに顔出し。 


「あ。テリィたんだ!おっかえりなさーい!」


僕の首タマに抱きつくスピア。

車椅子で全力疾走するルイナ。


「あ、あわわ。優しく!まだ肋骨が…」

「え。ごめんなさーい。やんもぉ」

「ゴメン!唇も切っちゃって」


無理キスを迫るスク水ハッカーをナダめるw


「…わかりました、気をつけます。で、それは何?」

「え。あ、コレ?コレは、僕がパンツァーファウストの名手だってコトを示す賞状さ」

「やったね、テリィたん!」


車椅子のルイナとハイタッチ。


「でも、確かテリィたんって運動音痴だったょね?」

「ニワカにYESとは答え難い質問 thank you 」

「パンツァーファウストの命中率でも良いの。好きなロケット弾なら必ズ上手くなる。私、テリィたんのコトを見直したわ」


おぉ何となくハッピーな気分だw


「コレは…例の殺し屋メイド事件のデータ?解析、進んでる?」

「ソレが…東秋葉原のゴッドファーザー、レイビ・ジーラは、将棋少女リバヤ・ホルドに毎週、将棋を教えている。その時に暗号で指示を出してるみたいだけど、その暗号が破れナイの」

「盤上の最適な駒の動きを分析してルンだけど、まだ解読出来ズにいるわ」


ルイナとスピアが口々に述べる。僕の出番だ。


「あ。今回のSATOの座学で教わったコトがある。"科学犯罪者のように考えようとしても無駄だ。彼等は、多くの場合、反社会人格障害だ。彼等に合わせるなら、ソレを僕達が頭の中で想像してもムダ。僕達の考え方とは逆の発想を実験した方が早い"」

「スゴい。テリィたん、レイビ・ジーラが最適な動きを教えてたワケじゃナイってコト?」

「YES。逆だったのかもしれないね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


今宵も捜査本部は眠らない!


「ラギィ警部!殺し屋メイドのコラルは、ミクス次長検事のスマホのGPSを追跡して居場所を特定してた模様!」

「ミクス次長検事の警護には、SATOの特殊部隊が24時間シフトでつくことになりました。ヲタッキーズ、いつでも出撃出来ます。2人だけど」

「わーい暗号を破ったょ!この2人が、だけど」


朗報続々。最後のは僕でラボから。全員が振り向く。


「ルイナです。万世橋(アキバポリス)のみなさん。レイビ・ジーラは、リバヤ・ホルドに盤上での反転攻勢の手を1つ教える。ソレがレイビ・ジーラから手下への命令になっています」

「スピアょ。将棋盤のソレゾレのマスは、特定の組織を示すの。王将の最後の位置がターゲットとなる組織。王手をかけた駒が次のターゲットの地位(ポジション)

「例えば、この対局の場合、最後に王手をかけた"と金"から次のターゲットは末端の構成員。王手がかかった王将(チェックメイトキング)の位置から相手は"首都高マッドマックス"」


通称"SATOのパツキン姐さん"ことルイナのまとめ。


「この暗号は破った。次のレッスンで、次のターゲットがわかるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原の和泉パーク。大盤将棋コーナー。

メイド服のマリレがリバヤの客を追い払う。


「ねぇ。今日は閉店ょ。帰って」


実は負けていた大学生はシメたと姿を消す。


「何なの?営業妨害?補償してょ」

「ノートを出して。裁判所の令状を取ろうか?」

「脅しても無駄ょメイドさん」


マリレは、リバヤのバックパックの中をかき回して探す…けれども、件のノートは見当たらない。リバヤは涼しい顔だ。


「脅しじゃナイの。私は、ベルリンで貴女と同じ子供達を何人も見て来た」

「同情してんの?ナチのアンタに何がわかる?」

「ルフトバッフェは国防軍だから…確かに、私は私を愛してくれる家族の下で育った。だから今、リバヤのコトを気にかけてる。立派なヲタクになって欲しい。申し訳ナイけど、パパと同じ人生を歩まないで」


リバヤの顔からフニャフニャした色が消える。


「レイビと出会ったのは学校だった。校長室に呼び出されたら、パパの代わりにレイビが来たの」

「ねぇレイビがノートに興味を持つのは変だとは思わない?奴がノートを読む度に誰かが死ぬの。私は、ソンなコト、もう許さないわ。貴女もそうでしょ?」

「ワカラナイ。私にはワカラナイわ…」


リバヤは、尻ポケットからノートを出して渡すw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


1時間後。捜査本部。


「ヲタッキーズが次回の棋譜をゲット」

「データ入力を頼むぜ"SATOのパツキン姐さん"!」

「姐さん、了解」


実際のデータ入力は、姐さんではなくて相棒のスピアだ。


「桂馬をC2へ…ん?グリュンフェルト防御?」

「いいえ、スピア。コレはシシリアン防御ょ。どこを見てるの?フシアナ?」

「あーら超天才様、ニムツォインディアンかもょ?"と金"をE6へ」


モメるルイナとスピア。僕は頭を抱える。


「ごめん、ラギィ。時間がかかりそうだw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


実際には、そーでもナイ。


「じゃ最終データを入れるわょ」

「拝見スルわ!」

「逝くぞー」


僕とルイナは、スピアのPCを両側から覗き込む。


「出たわ!香車をBの6へ」

「対応スル手は"昭和ストリートボーイズ"のマスょ!今度のターゲットは、自分の手下だわ!」

「まさか自分の暗殺指令を運んでるとは露知らズに…悲しいアキバの不条理劇だな」


通称"SATOのパツキン姐さん"ことルイナのまとめ。


「次のターゲットは、将棋少女のリバヤ・ホルド!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原。和泉パーク。


「ねぇ行くわょ!さ、立って!」


メイド服のマリレがリバヤに声をかける。肩を抱くようにして歩くと公園のフェンスの向こうに赤い屋根の黒いセダン。


"首都圏マッドマックス"の連中だ。


振り返ると背後には黒いSUV。出て来たのはドアイ・ヘピー。コチラは"昭和ストリートボーイズ"だ。歩きスマホ。


「リバヤ、私の後ろに隠れて。動かないで」

「おい、香車!」

「何?ヘピー。パーン」


ヘピーは"昭和ストリートボーイズ"のNo.2だ。

連れは、パーンと呼ばれた青いバンダナの女w


「ソレで挨拶のつもりか?リバヤ、私達に渡すノートがアルでしょ。1時間待った。出しな…ん!そこのメイド、何か言いたいコトでもアル?」

「SATOょ」

「コッチはPTA。ヤバいコトになるわ。失せな」

「お断り」

「あら。聞こえなかった?」


何気に腰ベルトのバッチと音波銃を見せるマリレ。


「その音波銃は9㎐?カートリッジは15連発?それとも16?アタシ達、腕は良いわょ。弾の数も4倍。お友達も集まった。さ、パーティ」


ヘピーが青バンダナを振り向くと、青バンダナは腰に差した音波銃を見せる。さらに前を指差すと赤屋根の黒セダンの中から赤バンダナの連中がヤタラとコチラを指差し威嚇スル。


「アンタは2秒で、あの世行きね」

「え。2秒もあるの?眉間に1発と思ったけど、2発撃てるわ。貴女、両目でOK?」

「じゃあ確かめてみようょ」


虚勢を張り続けるヘピー。微かに語尾が震える←


「覚悟はあるのね?ヲタッキーズを殺せば、どこへ逃げても必ず捕まるわ。もう、この世に行き場はナイ」

「抜けょ」

「私を殺せば、自分の頭に音波銃を当てたも同然ね」


睨み合いが続く。やがて、視線を地面に落とすヘピー。


「フン。今日のトコロは、見逃してやる。だが、終わりじゃねぇぞ。覚えとけ」

「忘れそう。でも、楽しみだわ」

「直ぐに思い知らせてやる」


ヘピーは、青バンダナの女とSUVに乗ろうとすると、四方八方から飛び出した覆面パトカーに取り囲まれる。

同時に"首都高マッドマックス"の黒いセダンも警官隊に取り囲まれ、車中の全員が窓の外に手を出して投降w


万世橋警察署(アキバポリス)万世橋警察署(アキバポリス)!」

「全員、手を見える所へ!早く!」

「へへっ」


せせら笑いとは裏腹に、両手を頭の後ろに乗せて、たくさんの銃口の前でひざまずくヘピーと青いバンダナの女←


「あらぁ?貴女達、もう捕まっちゃったの?予想よりかなーり早かったわね」

「マリレ、ギャングをからかわないで。無事なの?」

「はい。ムーンライトセレナーダー」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、僕は(正確には僕と最高検察庁ミクス次長検事w)は、お買い物の殿堂"のんきホーテ"でショッピング中だ。


「計画してた週末とは、かなーり違ったな」

「でも、ラッツとお買い物の夢は叶ったわ。さぁ新しいヘアクリップを買いましょう。今度は発信器の入ってナイ奴が良いわ」

「ん?発信器?何のコト?」


え。ミユリさん、元カノのクリップに発信器を?!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


意外にタフなミクスを轟沈させた後、僕はパーツ通り地下にあるSATO司令部の射爆訓練場へと、みんなを連れて逝く。


「足元に気をつけて」

「暗くて見えナイわ。サスペンスは苦手w」

「地上160kmにいたテリィたんが…」

「え。違うょ静止軌道だから、360kmだょ」

「私、興奮して来ました。テリィ様」


だろ?パンツァーファウスト(の噴射口)を振り回し語る僕w


「OK!誰から撃つ?」


次の瞬時、全員クモの子を散らすように逃げ誰も残らないw


「あれ?マリレは?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻の東秋葉原。和泉パーク大盤将棋コーナーのマリレ。


「あら。今日は稼がないの?」

「今日は、そんな気分にならナイの」

「…物ゴトって、近過ぎて見えないコトってアルょね」


大盤将棋を挟んで、マリレとリバヤ。向き合う。


「違うの。私が目をつぶってただけ」

「あら?人は誰でも目をつぶるのょ?問題は、その後。先輩ヲタクの助言、要る?」

「要らないけど…断れナイんでしょ?」


初めて2人は、愉快そうに笑う。


「貴女の未来には2つの道がアル。1つ目は、タフになって自分の手下を使い小金を稼ぐ。その場合、貴女は賢いから、少しは儲かるだろうけど20才までは生きられないわ」

「…2つ目は?」

「もう少し慎重に友達を選ぶ」


ドッと笑う2人。話したマリレ自身も大笑い。


「わかった。もーわかったから、メイドさん」

「待ちなさい。そして、選んだ友達に将棋を教えるの」

「ソレ苦痛ってゆーか、ムダに思えるw」


オレンジ色の夕陽が沈む東秋葉原の和泉パーク。

神妙な顔で千円札を差し出すマリレにリバヤは…


「メイドさん。友達からお金は取らないわ」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"チェス"を"将棋"に置き換え、東秋葉原のゴッドファーザー、彼を敬愛する大盤将棋の天才少女、組織のNo.2、暗殺される証人達、証人を匿う元サヤ妻、殺し屋メイド、彼女に狙われた最高検察庁の次長検事、一味を追う超天才やハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、運動音痴な主人公の特殊部隊訓練や渋谷時代の元カノ話、東秋葉原の青春群像などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、インバウンドの観光バスをチラホラ見かけるようになった秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ