『一度きりのラブ・コール』
『死霊術』
ーーーその真っ白な顔に、絶望と発狂を。
怨嗟の油に溶かし込み、幾重にも幾重にも塗り込めていく。
大胆な構図と精緻な筆使いで十重に二十重に丹念に。
仕上げに骸の額縁に収めれば死霊の出来上がりーーー
『死のメガロポリス』
ーーーかつては大陸一の栄華を誇った王都の現在の呼び名である。
四方に領土拡大による強大な壁を幾重にも築き、その外郭にも街がいくつも存在する巨大都市。
複数の河川を有し、肥沃な土地からは数万の民を賄う穀物が今も撓わに実っている事だろう。
王宮街にはいくつもの尖塔が己が栄達を背比べするかのように突き出し、荘厳な王城をさらに着飾っている。
建国の地である旧王宮は現在の王宮とは些か外れた山の中腹にあり、その機能を失って尚、臣民を見守る様に聳え立っている。
烏瓜殿と呼ばれ王国の象徴とされたその建物は、現在悪しき不死人の住まう剣呑な館へと成り果てていたのだったーーー
『マリア・セント・リコサス・フォン・ロートリンゲン』
ーーー烏瓜殿の主にして、この花園で一番美しい花と呼ばれた王国第一王女その人であるーーー
マリア「リリー？私のリリーはどこ？」
リリー「うふふ。ここに居りますよ姫様」
マリア「あぁそこにいらしたのね我が愛しの馬酔木の君」
フランツ「おや姫様」
「私めも居りますのに」
「妬けてしまいますね」
マリア「そうね。貴方達さえいてくれれば妾は何も要らない」
「ずっと、ずっと傍に居てちょうだい」
リリー、フランツ「御意に。我が愛しの烏瓜の君」
マリア「そう言えば忌々しい諸公連盟に動きがあるとか？」
フランツ「はい。どうやら兵士を募っているようです」
マリア「では彼もいらして頂けるのかしら？」
フランツ「はい。既に使いを遣り我々の居所を伝えております」
マリア「そう。ご苦労様」
「ふふふ。楽しいパーティーになりそうね」
フランツ「御心のままに」
マリア「あぁ…ロベルト・ハイセスアイゼン炎竜討伐伯卿。我が金獅子の聖なる爪。鉄血騎士団元団長様。疾く逢瀬にいらしてちょうだい」
「貴方の馬酔木が根腐れして仕舞わぬ内に、ね」
「うふふふふ」
次回 『けふはおわかれの糸瓜がぶらり』
