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『四重奏によるインテルメッツォを双月に捧ぐ』

ジジ「では今日の講義を始めましょうか」


ランマル「かたじけない」


エイダ「かーっ!毎日よくやるぜ!」


ジジ「エイダさんも少しは見習ったらどうですか?」


エイダ「勘弁してくれよぉ眠くなるんだよなお勉強ってさ」


ジジ「ヒューマンの諺にもあるでしょう?ランマルさんの爪の垢でも分けて貰いなさいな」


エイダ「げっ!気持ち悪ぃ!なんだよそれ!」


ランマル「ほー、こちらでも似たような言葉があるんですね」


エイダ「あぁ…お得意の例え話な」


ランマル「私は一日も早く殿にお会いせねばならぬのでござる。その為なら月明かり下でも勉強する所存でござる」


エイダ「うへぇ。ゴザルはすげぇなぁ」

「共通語もすぐ覚えちまったし、頭の出来が違ぇよなー」


ジジ「そうだ、では今日は月の話にしましょうか」



ーーー『醜姫の月』、『麗姫の月』


夜空を照らす二つの月は神代の伝説からそう呼ばれている。


昔、ある王国には二人の姫がいた。

二人は幼い頃から人の羨む美貌の持ち主で、王は二人を大層可愛がり、二人もまたお互いを分かれ身の如く慕い愛していた。


その様はまるで眉と目のようであったという。


ある日、亡国の魔女が王国を襲う。

王国に祖国を滅ぼされた魔女は怨嗟の呪いにより大軍を用いて王宮の直前まで侵攻した。


騎士団の決死の奮戦により辛くも捕らえられたが、火炙りの刑の直前、魔女は二人の姫に向けある呪詛を吐いた。


「よくも私の大切なモノを奪ったな!貴様達の大切なモノも奪ってやろう!」


刹那、姉姫の顔は醜く爛れた。


「何故だ!二人ともに呪いを掛けたはず!お互いを思い合うお前らを諸共に道連れにしてやろうと思ったのに!!」


焦がれ果てる魔女に向けて姉姫はこう答えた。


「私が…妹なら大切なモノは私と答えると思ったの」


「だから」


「私は私が大切だと思ったわ」

「これなら被害は私だけで済む」

「苦しむのは私だけで十分。煉獄に堕ちなさい魔女よ!」



断末魔の叫びと共に魔女は焼けて辺獄の果てに落ちて行った。


「何故…何故ですお姉様」


「可愛い可愛い私の妹よ」

「貴方は私。貴方が無事ならそれでいいの」



数年後、隣国の王子と婚姻を結んだ絶世の美貌の姫の傍らには、常にベールで顔を隠した傍仕えが居たといい、二人は片時たりとも離れる事は無かったという。


死後、天に召された二人は今なお互いに手を取り合い夜空を照らしているというーーー




ランマル「ほほぅ良いお話でござる」

「それであの太陰は片方がツルツルで片方がデコボコしておるのですな」



ロベルト「…そうでもねぇさ」


ランマル「ほ?どういう事でござる?」


ロベルト「…毎年決まった時期になると醜姫の方が欠けていくんだ」

「遙か西方のエルフ共の話じゃ麗姫の月の影になるって話だが」

「さっきの話には続きがある」


「国の体裁の為に妹と結婚したが、王子様が惚れてたのは実は姉さんの方だったんだ」

「それを恨んだ妹の方は年に一度、決まった月に姉を治療と称して城から離宮に追い出す事にした」

「だから今でも『強欲の月』って言って姉の方はひと月姿を見せないんだとよ」



ランマル「…聞かなければ良かったでござる…」


エイダ「へぇ~そうだったんだ!」


ジジ「ちょ、ちょっとヒューマンの伝説なのになんで知らないんですか…」


エイダ「へへーんだ!アタイの親父は飲んだくれって言っただろ?」

「そんな話なんかしてくれた事ないもんねー!」


ジジ「全く…」


「おや?そういえばロベルトさん、何時になく饒舌でしたね」



エイダ「お!たしかに!こんな喋ってるオッサン初めて見たぜ!」


ロベルト「……」


ランマル「照れておられるのでござるか?」


ロベルト「…そんなんじゃねぇよ」


エイダ「あっはっは!オッサン照れてやんのー!」


ロベルト「…昔を思い出しただけだ」



ジジ「ほらほら!人を揶揄うものではありませんよ!」

「それにそろそろ晩ごはんの時間です」

「今日はここまでにしましょう」


エイダ「お!通りで腹の虫が鳴く訳だ!」

エイダ「いつもの所行こうぜ!」


ランマル「エイダ殿はあそこが好きでござるなぁ」

「拙者は獣肉は性に合わぬでござる…」


エイダ「まぁまぁ!そう言うなって!」

「オッサンだって好きだろ?」



ロベルト「…悪くない」


エイダ「そーら!決まり!早く行こうぜ!」




次回  『メガロポリスパトロール』

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