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『1,000,000 MONSTERS ATTACK』

ジジ「ちょっ!」

「我々が行った所で何になるんです!?」


エイダ「そうだぜオッサン!むざむざ死にに行くようなもんだぜ!」


ロベルト「…黙って付いて来い」

「…『小鬼』どもを挟んで教会の連中の正面には絶対立つなよ」


ランマル「待つでゴザルよ!」

「…ええい南無三!」



小高い山を滑るように『小鬼』どもの側面に回り込む。


眼下には新たな獲物を見付けた『小鬼』どもの殺気だった謝肉祭の雄叫びが木霊する。



ーーー刹那、響き渡る乾いた破裂音の洪水。

瞬く間に眼下を白煙と血飛沫のモノトーンに染め上げていくーーー


エイダ「銃声!?」


ランマル「しかもとんでもない数の鉄砲隊でゴザル!」


ロベルト「…流れ弾に気を付けろ!」

「…側面に回り込むんだ!」


ーーー近距離の仲間との会話も侭ならない程の破裂音は、獣共の断末魔を掻き消し、腐臭渦巻く謝肉祭を硝煙の雲棚引く天上世界に書き換えていったーーー


ロベルト「…頭を出すなよ!」


ランマル「ひぇ~長篠を思い出すでゴザル!」



ーーー時間にすればどの位経ったのだろうか。

百を超える聴衆は葬送曲のフェルマータを待たずして沈黙し喝采を送る事無く辺獄へと旅立ったーーー



ロベルト「…残党狩りは任せろ!」


ーーー霧散する敗残兵を四人の死神が刈り取っていく。

突如顕れた騒乱に敢え無く瓦解した狂気の生誕祭を啄む四羽の烏。先陣を切る鉄剣の御遣いの胸中には些か複雑な思いが去来したが、三匹目を斬り伏せた時、その目には鈍色の風景をただ映すのみであったーーー



「無事に研げたみたいやね」


司祭と呼ばれた異形は、ゆっくりと人の姿をしたローブに身を埋める様に萎んでいった。




ロベルト「…粗方片付いたな」


ランマル「こっちも動く者は見えぬでゴザルよー」


エイダ「もう…終わっちまった…のか」


ジジ「…その様です」



「お~い!ご苦労さんやで~」

「こっち来てサヤマー茶でも飲もうや~」


あれだけの戦闘にも関わらず未だ純白を保つローブの集団の一人が声を掛けてきた。


ロベルト「…相変わらずですねクレメンスさん」


ジジ「お知り合いなんですか!?」


ロベルト「…まぁな」


クレメンス「オッスオッス!はじめましての人が多いから自己紹介するでー」

「世界樹教会で司祭やってるクレメンスや!」


エイダ「お!気味悪いナリしてっけど話分かりそうだな!アタイはエイダってんだ!」


「貴様!無礼であろう!!」


クレメンス「ええよええよ」


「しかし司祭様!」


クレメンス「ええ言うてるやん?」


「…ご無礼を」


クレメンス「久しぶりに力使ったから早よお茶の用意してやー」


「御心のままに」


ーーー顔の見えないローブの集団が手早く火を起こし始めた。

硝煙は晴れ、後に残るのは地獄絵図そのもの。

目を見開いたまま息絶えた『小鬼』の群れの脇で今まさに催されようとする茶会。

賽の河原のようだと呟いたランマルの声は眼前の緑色の鬼の矢継ぎ早な言葉に掻き消されたーーー


エイダ「しっかし何だってこんな所に教会のアンタらがいるんだい?」


ジジ「失礼ですよ!教会の皆様は我々冒険者の代わりに有事の際の治安維持に務めてくださっているのです」

「戦時条項の4項の特例措置にあるでしょう?」


エイダ「だから文字読めねぇっての!」


ジジ「そういえばクレメンス様は我々にも気付いてらっしゃいましたよね?」


クレメンス「森は友だちみたいなもんやからね」



ランマル「なる程、しかしクレメンス殿、あの銃声は一体…」

「お供の方々に武装の気配は見られませんし、別備えの鉄砲隊も居られぬご様子…」


エイダ「そーだそーだ教会って言やぁ魔法だろ?あれもそうなのか?」


クレメンス「あ、それはな…」



ーーーそう言うと樹人はローブの下から苔生した枝のような手を差し出す。


一本、二本…。


三本…四本ーーー


ランマル「!?」

「手が多いのでゴザルか…」


エイダ「げ!気持ち悪い!」


ジジ「ちょっとエイダさん!」


クレメンス「ええねんええねん」

「ワイら樹人は腕なんか自由自在に生やせんねん」

「真っ当に動く4本の主腕に33対の副腕…」

「ナハン・カーンの神さんからの貰いもんや!」


「アレ?全然ウケとらんな!」


「ま、ええわ」

「兎に角、この腕での連続砲撃がワイの文字通り奥の手やねん」


エイダ「ふぇ~魔法じゃねぇのか~」


クレメンス「魔法なんてやれ詠唱やら魔法陣やら触媒やら」

「他の樹人は使うみたいやけどやってられんわ!」


ジジ「…色々と規格外ですね」


ランマル「まるで一人長篠でゴザルな…」


クレメンス「ナガシノ?」

「…ほーん」

「訛ってるだけや思うたら…」

「なる程のぉ」

「それにそこのお姉ちゃんに猫ちゃんに…」

「中々オモロイ巡り合わせやねぇ」


ロベルト「…どう言う意味です?」


クレメンス「んー?ええねんええねん独り言や」

「そんな事よりロベルトはん」

「折角やしご一緒してええか?」


ロベルト「…ええ勿論です」


クレメンス「お!サンガツやでー」

「ほな王都までよろしゅーな!」



次回  『キミを想う夜』

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