計画
コンコンコン。扉をノックする音に驚いてドアを見たら、さっき見た光景があった。違うのは、開いた扉にブライアンが寄りかかっていて、隙間から見えた廊下にティーワゴンが見える。
「?!」
「おいおい。お二人さん、俺を忘れて何を話してんだよ。内緒話か?」
「違うわよ」
「計画を説明しようとしていたんだ」
計画?
わたしを助けたい、と言っていたけど、その計画?
クリフトン卿の計画にはブライアンも関わっているの? クリフトン卿は『私たち』と言った。その中にブライアンがいるの?
ブライアンはティーワゴンを押して部屋に入って来る。
「説明? いつの間にそんなに仲良くなったんだよ?」
仲良く? 仲良いかな?
・・・わからない。まだ、たった2回しか会ってないのに、そんな風に言える?
ブライアンとは前から何度も会っていて、婚約者の家族として親しい関係にある。
けれど、クリフトン卿はそうじゃない。クリフトン卿はブライアンの紹介があっても、ミラー家――婚約者の家と商談をする間柄で、ダヴェンフィールド家とも、ミラー家とも血縁も姻戚も関係ない。
たった2回しか会ってなくても、初対面で泣いてしまった姿を見せてしまったし。
恥ずかしくて、顔がカーッと熱くなった。
扉を閉めるブライアンを見ながら、クリフトン卿は呆れた顔で溜め息を吐く。
「ブライアン・・・、説明していただけで、どうしてそうなるんだ?」
「まだ2回しか会ってないのに、計画をバラすなんて思わなかったぜ、クラレンス」
ブライアンも関わっていたんだ。
真面目なクリフトン卿はブライアンを責めるように言った。
「本人に知らせないまま計画を続けるつもりだったのか、ブライアン?」
「そんなつもりはねーよ。これから俺が言おうと思っていたんだよ。なんで、お前が先に言うんだよ」
「すまない」
不貞腐れたように言うブライアンにクリフトン卿が謝る。
本当はブライアンは揶揄っているだけなのに。真面目か!
・・・そういえば、クリフトン卿は真面目過ぎた。わたしが勝手に泣いたのに、謝る必要がなくても謝ってくれるような人だ。
「ま、いいさ。俺たちの計画はアリス、お前をクリフトン卿との交渉を任せて、なし崩し的にうちの養女に迎えるつもりだ。丁度、お前も領地経営の勉強がしたいと言い出してくれて、良い機会だったぜ」
「?!!」
計画の全貌にわたしは声を失った。




