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逃げてはいけない理由

クリフトン卿のセリフ長いと思ったら飛ばしてくださって構いません。アリスも理解できていません。

「逃げてもいいの?」


 逃げてもおかしくはない、と聞いてクリフトン卿に訊いてしまった。


「では逆に逃げてはいけない理由は?」

「! わたしたちは領民に生かされてる。着るものも食べるものも、領民が作ったもので買っているわ。それなのに、逃げてもいいの?」

「そうだな。その代わりに領主は農業の指導をしたり、家や畑を貸したり、要望を叶えている」

「え?」


 逃げてはいけない理由に頷かれて驚いた。


「領主とは、元々、領民が安全に暮らせるように保障する能力の持ち主のことだ。武力がなくとも、王や権力者の覚えが目出度ければ、領を攻めた相手は権力者の不興を買って自滅する。その為に権力者に富を捧げる。今は武力より領地を富ませることが主な仕事だ。富ませた分から報酬をもらう為に利益が出るように領地を経営しなければならない。武力が不要となった今、領主は他の領主と協力する必要が出てきた。政略結婚はその協力関係を裏切らせない為におこなうものだ。領民の為におこなうものではない」

「領民の為ではない?」


 領主という仕事についてクリフトン卿は語った。


「君は領民の為に命を投げ出せるか? 何人の領民で命を投げ出せる?」

「・・・」

「パッと思い付かないなら、領民の為の政略結婚は無理だ。王子や王女のように、貴族は民の為に結婚はできない」

「何故?」

「国王一家は誕生日に民衆を前に姿を現すだろう? 毎回人々は王宮前の広場に犇めき合うように集まる。あれを見て、王子や王女は自分たちの守るものを確認しているのだ。誰に命じられたわけでもないのに、誕生日を祝おうと集まってくれた人々を」

「・・・」


 孤児院への慰問で、並ばされて挨拶をさせられた子どもたち。

 領地での領民との触れ合いはこれくらいだった。

 たった一つの触れ合いなのに、子どもたちの目に浮かぶ感情は良いものではなかった。


 国王一家の誕生日は地方からも人が集まる一大イベントだ。

 わたしも見に行ったことがあるが、熱狂する民衆の姿に驚かされた。

 慕われていると思った。

 王都に出てきて、王家が民衆に何かをしている姿は見ていない。それなのに、王家が姿を現す祝賀行事に民衆は集まって、歓声を上げる。


 民が自発的に集まってくれるから、彼らを守ろうと考えた王族は生贄のような政略結婚でも受け入れる。受け入れられないのは、民よりも大事なものがある者だけだろう。


 我が家の領地では、領主一家が通っても、誰も歓声を上げない。王家と同じように何をしているのか、わからないというのに、集まることもない。


 ああ。だからか。

 クリフトン卿は言った。逃げてはいけない理由は? と。

 逃げてはいけない理由なんて、領民に生かされていると、わたしが思い込んでいるだけだった。


 領民はわたしを見ても集まって来ない。

 王家のように我が家は民に好かれていない。


 好かれていない民の為に生贄になるよりも、わたしはフェルナンドとの結婚から逃れたかった。


「答えは出たか?」

「はい」

「迷いがなくなったのなら戻ろう。あまり外に出ていると、噂になる」


 差し出された手はダンスにエスコートするものではなく、友達のところまでエスコートするものだった。

 だけど、これは新たな未来への選択肢だった。

クリフトン卿の長いセリフの説明:

武力で・・・の時代は日本の戦国時代のような感じです。商人でも才覚次第で大名(伯爵)に成り上がれる時代。

将軍家の足利氏に贈り物をして媚を売っていれば、大義名分もらって他の大名に大きな顔ができるようになって、虎の威を借る狐ができます。

武力が要らない時代は江戸時代のようなものです。戦争がないから、他の大名から領地を守る為に権力者に媚売る必要はありません。代わりに他の大名と協力して領地を発展させる必要が出てきます。

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