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病名X

作者: tanakatanaka

 体が熱い。マスクの中で熱い息による対流みたいな現象が巻き起こっている。マスクからはみ出た息が額にさりげなく触れるとまた熱を感じる。自分の体の調子を確かめるため首に触れると、いつも以上に熱い。ひたすら熱い。風邪でもひいたのだろうか。私は医者ではない。だから正しい判断はできない。ただ風邪に近い症状の気がする。ただ、そんじゃそこらの風邪でない気がする。もしかして今流行りの感染症だろうか。だとしたら怖い、これからの未来どうなるだろうか。あぁ、不安だ。友達、近所にいじめられるのか。転校しなけらばならなくなるのか。未来が真っ暗になるのか。いや、違う。今はそう信じよう。そうだ違うのだ。何故か。あるものを感じるのだ。便意だ。この授業を抜け出して、トイレに行きたい。でもだ。今動けば死ぬ。腸が動いているのを感じる。尻の穴に常に何かがあるのを感じるのだ。漏れそうだから、漏れないように必死に戻そうとするが、そんなに長く保たない。また漏れそうになるだけ。あぁ、眠気と、痛みの手前みないなのまで付き纏う。そして時々寒さに出会う。その寒さがより便意を刺激する。寒さはどこからでも出会い、一瞬で体全体を駆け巡る。先生の話は入ってこない。先生のことで考えられるのは、袖を捲っていること。黒板が描きにくいのか、暖房の影響か。それだけはよく考えられる。それを見ているとこっちも寒くなるのだ。寒くはないか、寒くはないのか、そんなことがループのようだ。そして寒いと考えすぎたのか、また寒く感じる。だからもう、目を逸らす。代わりに手に目をやる。力は入らない。少し震えている。あぁ、便意、便意だ。踏ん張ろうと椅子の脚に触れる。すると、布越しでもわかる寒さの到来。あぁ、また腸が激しく動く。終わりが近そうだ。あぁ、明日からどうやって学校を過ごそうか。他人の顔をまともに見れない。〇〇〇漏れ太郎なんて渾名が付けられるかもしれない。い、嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

 ふう、よかった。とりあえず止んだ。あぁ、また眠気だ。疲れによる眠気に負けそうだ。でも、負けるわけにはいかない。尻の力を緩めてしまいそうだ。あぁ、早く終わらぬか。まだ終わらぬか。まだ3分もある。あぁ、3分、3分。早く経たぬだろうか。私はもう時を置き去りにしたいほどの気持ちでいる。でも、時の法則からは逃げられない。逃げようと思っても、時は追いかけてこず、ただそこに当たり前に存在する。私は時と共に生きている。あぁ、時はまだ動かぬのだろうか。あぁ、まだ1分しか経っていない。今、時は私よりノロマだ。そのくせ、私と共にある。あぁ、また寒気だ。寒気がする。今回も足からだ。ズボンと足首の隙間からだ。耐えねば、耐えねば。少しでも体を温めよう。手をポケットに入れよう。頭はマスクからの熱気で問題ない。足は諦めよう。遠い。下手に動けない。下手に屈むと漏れる。せめて、せめて、手だけでも。あぁ、私たちは今どこにいるのだろうか。あと1分、まだ1分ある。1分耐えられるだろうか。深く息をしよう。顔付近の空気は凍えるほどの寒さではない。あぁ、ほんの少しだけ和らぐ。早くトイレに行きたい。トイレに行って、深いため息をつきたい。あぁ、背筋が震える。頼む、頼む、早くなれ。まだ30秒あるのか。まだ時はノロマなのか。秒針の動きが遅い。誰か操作したのではないだろうか。いや、できるはずがない。でも疑いたい。早く進め、早く進め。光をも置き去りにして時よ進め。頼む、頼む。あと10秒、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0、なった。なったぞ。先生、終わりを言ってくれ。無理して立つから、最初よりかは幾分か楽になったから、早く言ってくれ。

 よし、よし、言ったな? ではゆっくりと、ゆっくりと立とう。勝利は近い。あまり声を出さないように、あまり屈まないように。ゆっくり、ゆっくりだ。何事もゆっくりだ。まだ慌てる時じゃない。焦りすぎては体が保たぬ。ゆっくり、ゆっくり、うっ、また寒気だ。まだだ。安心しろ、大丈夫だ。私は生きる。まだ戦いを終わらせんぞ。終わりを言うのは我が意思だ。便意ではない。負けぬ、まだ負けぬぞ。動かず、便意が弱まるのを待つのだ。静かに、静かに。もし、もう少しだ。あったまってきたぞ。よし、よし、もう少し、もう少しだ。よし行こう。今なら行ける。安息は近い。

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