第一話:イベントは突然に
俺、宮良和幸は下地みゆか先生に恋をしている。
自分でもストーカーかと思うくらい先生のことが気になりまくる日々を送っていたのだが、
先生にいきなり家庭訪問をすると言われてしまった!
友人の大城龍騎の軽口をかわしつつ、俺は家庭訪問の理由を考えるのであった…
とにかく、そういうことだから。と、そう伝えただけで先生は職員室へと去っていってしまった。
どういうことだ?俺が何かしたか?確かに大城に指摘されたとおり先生のことは眺めすぎかもしれない。どこに住んでるか気になって帰宅中の先生を後ろから追ったこともあるけど、あの時は駅までだからまだストーカーとは言えないだろう。
「それで、何したのさお前は?」
「知るか、心あたりはないわ」
お前俺の知らないとこで先生のストーカーでもしてたんじゃないだろうな?などという大城の軽口は無視する。
そもそも俺の担任でもない下地先生がどうして家庭訪問に?
もしかして先生も俺のことが好きで、家庭訪問は口実。本当は告白しに来てくれるんじゃないか?
「それは絶対ない」
「心の中を読むな」
大城の脚に蹴りを入れる。
しかし、何をどう考えても先生が家庭訪問に来る理由が見つからない。下地先生でなく他の先生が来るとしても、だ。
やっぱり先生も俺のこと好きなんj
「それはねぇから!」
頭を叩くな!それくらいわかってる。でも少しくらい期待をしてもいいじゃないか。
なんてったって俺は入学式の日に先生と出会ってから今日までの183日5時間と23分2秒、毎日先生を想い、ラブソングを作り、そして肖像画を描いて来たんだ。特にウエディングドレス姿の先生なんて、あのレオナルド・ダ・ヴィンチのモナ・リザさえ悔し涙を流した上に、逆立ちで逃げ出すくらいの傑作だ。
ラブソングの方もそのうち湘南乃風の純恋歌と並ぶほどにヒットするに違いない。
次は小説でも書いてみよう。俺と先生の生まれから結婚、そして同じお墓に入るまでを書くんだ。きっと村上春樹のノルウェイの森と一緒に2大恋愛小説として紹介されるはずだ。恋の力は無限大だ。
などと次の作品を考えていると予鈴が鳴ってしまった。結局家庭訪問のそれらしい理由は思いつかなかった。
まぁいい。次の数学の授業が終われば放課後だ。その時になれば嫌でも理由はわかるだろう。
著者: 矢生姜小太郎