第六十八話
またまたほのぼの〜、そして少しだけお話進ミーノ。
ラルウァを交えた朝食を済ませたあと、ヴァンたちは村長宅へ向かう。
昨日来なかったことに少し頬を膨らませたミリナだったが、冗談だと笑い、ヴァンたちを客間に案内してくれた。
「オー、ヴァンさんたちじゃないデースかー」
客間にはギガンリーフ・バシレウスことリーちゃんが植木鉢のようなものに突き刺さっている。大きさはヴァンより少し小さいほどになっていた。
「・・・・・・なにしてるんだ?」
「リーさん、昨日の事で消耗したみたいで・・・・・・ああやって水を飲みながら体の構成をしているらしいです」
近くまで植木鉢を覗き込むと、確かに大量の水が入っている。
「まぁ、それは自業自得よ」
「そうですよね。滅ぼされないだけありがたく思ってください、魔葉さん」
冷たい目でリーちゃんを睨むアリアとセレーネ。どうやら二人にとって昨日のリーちゃんは許しがたいものらしかった。ヴァンとミリナはもう怒ってない。
もっとも、二人が根に持っているのは自分たちが触られたことではなく、ヴァンをも触ったことによるものだったが。
「すまなかったな。私の早とちりで」
「へいきデース。気にしてまセーン。炎を使われなければミーは死にまセーンからー。むしろ良い思いがで・・・・・・なんでもありまセーン、アリアさーん、火を出すのをやめてくだサーイ」
「ふっ、そうか。本当に悪かったな。私としたことが子供たちが襲われていると思って焦ってしまった」
その言葉にヴァンが意外そうな表情をする。
「師匠でも慌てることってあるんですね」
「当たり前だろう。子というのはどの種にとっても宝だ。それが襲われていると思って冷静でいられるわけがない」
「・・・・・・子供好きなんじゃな、おぬし。人は見かけによらぬのぅ」
客間で他愛ない話をしていると、客間の扉が開き、村長と緑髪の男の子、同じく緑髪の青年が入ってきた。
「おぉ、皆さん、ようこそいらっしゃいました」
「女神さまーっ!」
「はふっ! ひ、久しぶりだな、トーニャ」
部屋に入るや否や、全速力で腹に突っ込んでくる男の子を抱きとめるヴァン。
「久しぶり、クローロ。悪さとかしてないでしょうね?」
「う、うるさいな。あの時は悪かったよ!」
珍しく自分から普通に話すアリアと、それを顔を紅くしながら声を荒げて受ける青年。
「村長さんも、お久しぶりです」
ヴァンが村長に挨拶をし、村長は全員に座るよう促した。
長椅子にヴァンとアリア、師匠の三人が座り、個別の椅子にフランたちは座る。ウラカーンだけヴァンたちの後方で壁を背もたれにして立っていた。
村長たちはヴァンたちと向かい合う長椅子へと腰掛け、トーニャはヴァンのひざの上に飛び乗る。
「こら、トーニャ!」
「いや、大丈夫ですよ」
弟を叱咤するミリナを、ヴァンが手で制す。ミリナは申し訳なさそうに、すみません、と謝った。
「・・・・・・」
トーニャがセレーネとヘリオスをじっとみつめ、それに気づいたセレーネは声をかけ、ヘリオスはどう返したら良いのか分からずただ苦笑する。
「トーニャくん、どうかしましたか?」
微笑むセレーネにトーニャはヴァンを見上げた。
「女神様女神様、お友達の女神様をつれてきたの?」
先ほどから言っているが、女神様とはなんだろう、と事情を知らない全員が首をかしげた。
「君君ー、なんでヴァンちゃんを女神様って呼んでるのー?」
いつの間にか長椅子のすぐ後ろまで来ていたウラカーンがトーニャを覗き込む。トーニャは少し興奮したようにまくし立てた。
「だって、女神様はとっても綺麗で優しいって、にーちゃんがいってたもん! それに、女神様も自分のこと女神様っていったよ!」
「へぇー、ふーん」
弟に名指しされたクローロはわざとらしく咳をし、話を聞いたウラカーンはニヤニヤした顔でヴァンを見た。
「・・・・・・なんだ?」
「いやいやー、べつにー。君、よく気づいたね、実はそうなんだよー、女神様のお友達も一緒につれてきてねー、オレっちたちはその護衛なんだー」
嘘八百を並べるウラカーンを呆れ顔で見るヴァンとアリア。フランも、仕方ない奴じゃのぅとため息をつく。
トーニャはこれまた表情を輝かせて叫んだ。
「やっぱり! 女神様が三人もおうちにくるなんてすごいよ! ねぇ、おとーさん!」
「そうだな、トーニャ」
はっはっはとはしゃぐ息子に返す村長に、セレーネが違和感を覚え、トーニャにたずねた。
「トーニャ君、女神様三人って誰と誰のことなんですか?」
「え? えっと、白くて綺麗な髪の・・・・・・」
聞かれて戸惑いながらも、セレーネとヘリオスを指差す。
「僕も入ってるのか!?」
女神ということは女性だけを指しているのだろうと蚊帳の外に避難していたヘリオスが叫ぶ。
目をぱちくりさせて、うなずくトーニャにヴァンが苦笑した。
「トーニャ、あの人は男の人だよ」
「えええええー!?」
「って、なぜあなた方まで驚く!?」
村長一家が全員驚きの声をあげ、ヘリオスがツッコむ。地表に来て、ツッコミレベルだけが上昇しまくる兄であった。
「・・・・・・ヴァンさんたちには本当に感謝してます」
ミリナがヴァンたちとリーちゃんを交互に言う。ラルウァがヴァンの師だと名乗り、弟子が何かをしたのか聞き、ミリナは以前の出来事を話したのだ。
「そうか。・・・・・・ふっ、よくやったな、ヴァン」
弟子の成長を喜ばしく思い、ヴァンの頭を撫でるラルウァ。ヴァンは恥かしげにうつむきながらも口を開いた。
「俺だけの力じゃありません。アリアも一緒に頑張ってくれたし、クローロもトーニャも、ミリナさんを守ろうと必死でした。・・・・・・結局誤解だったわけですけど」
「ホントよね。よくああも真逆のほうへ解釈できるもんだわ」
苦笑するヴァンと呆れ顔でため息をつくアリア。そんな二人にリーちゃんが体の蔓を少しうごめかせた。
「そのせつはドーモーおせわになりまシータ」
「それで、皆さんは今後のご予定は? 良ければしばらく滞在なさってはいかがですか?」
村長の言葉に、ヴァンが首を横に振る。
「いえ、実は今探し物をしていて。フランの案内でそこへ向かう途中だったんです」
「そうでしたか・・・・・・残念ですな」
トーニャがヴァンのひざの上で顔を上げ、首をかしげた。
「女神様、何を探してるの?」
「ん? そうだな、トーニャは秘宝って知ってるか? それを探してるんだ」
「そうなんだー」
興味無さげにするトーニャにヴァンが、はは、と笑う。そこで話を聞いていたリーちゃんが声を上げた。
「オー、皆サーン、秘宝を探しているのデースかー? それなーら、この村から少し離れたとこーろにありマースヨー」
意外な人物? からの情報にヴァンたちの目が見開かれる。
ヴァンはフランに目を向けた。その視線は、どうだ? と訴えている。フランが首を振り、口を開く。
「わしの知っておる遺跡はガレーラ王国西半分にある。この辺りのは知らぬのぅ」
ということは、魔獣ならではの情報ということになる。
「リーちゃん、そこに案内してもらえるか?」
「もちろんデース。バット、ミーがこの村を離れるのは少し安心できまセーン」
どうやらリーちゃんはこの村の護衛も兼ねているようだ。と、ヴァンの隣に座る師匠が横から口を出す。
「なら、私がその間、村に居よう」
「良いんですか、師匠?」
ラルウァを見上げて確認を取るヴァンに、師匠は鷹揚にうなずいた。
「あぁ。急ぐ旅でもないからな。それに、リーちゃんには勘違いをした借りを返さねばなるまい」
ふっと笑うラルウァにヴァンが頭を下げる。
「ありがとうございます、師匠。リーちゃんもそれでいいか?」
「オーウ、もちろんデース。シッショさん、強い、身をもってわかりまシータからー」
ヴァンは最後に仲間を見渡す。アリアたちが全員首を上下に動かすのを見た後、椅子から立ち上がり村長たちにその折を話す。
「それじゃあ、師匠。行ってきます」
「あぁ。気をつけて行くんだぞ」
今だヴァンと同程度の大きさしかないリーちゃんを先頭に、弟子とその仲間たちが森へ往くのをラルウァは見届ける。
「・・・・・・結局、私の願いは叶わなかったか」
寂しげな笑みを浮かべ、小さくなっていく弟子の背を眺める師匠。
願いとは冒険者ではなく普通に生活してほしいというもの。倒すために戦い方を教え、食べるために狩りの仕方を教え、生きるために冒険者の知恵を与えた。
なのに、共に過ごす日々の中、思っていた事は、冒険者として生きて欲しくないということだった。命の危険が少ない普通の生活を送って欲しかった。ゆえに魔術学校に放り込み、自分は姿をくらませた。
「・・・・・・これが親の我侭、か」
自分と同じように自分を超えるように育って欲しいと思いつつ、自分とは違う道を生きて欲しいとも思う。
だが、ヴァンは自分と同じ冒険者になった。悲しかった。それ以上に嬉しかった。弟子には弟子の目的があり、自分を目指してなってないかもしれないが、それでも嬉しかった。
「勝手だな・・・・・・私も」
自嘲気味に呟く。しかし、それは一瞬ですぐに、
「さて・・・・・・」
と気を取り直すと、もう姿が見えないヴァンたちから、物陰に隠れながらこちらを睨んでくる子供たちに視線を向けた。
「ふっ、相当嫌われているようだな」
無理も無い。話を聞けば、あの魔葉は子供たちの人気者だったらしい。それにいきなり攻撃を仕掛けたのだ。第一印象は最悪といったところだろう。
ラルウァは、ふむ、とアゴに手を当て、どうやって子供たちに好かれようかと真剣に考え込んだ。
読んで頂きありがとうございます。
シッショさーん。
というわけで、やっと秘宝探しですよ。脱線しすぎですね!皆好き勝手動いてます。