第五十八話
小説を書く時間がとれず・・・毎日更新を心がけますが、一日一話がしばらく続くかもしれません><
ウラカーンとヘリオス、フランの三人は首都から南西方向の草原を歩いている。目的はもちろん、ギルドで受けた依頼である、B級魔獣を討伐するため。
こちらのほうでの目撃情報が多いらしく、ヴァンがそれを元にある程度の場所を教えてくれた。
そのヴァンは、アリアとセレーネをつれて真逆の北東へ向かっているはずだ。
「なにがでるかなーなにがでるかなー」
ウラカーンが鼻歌を交え足取り軽く先頭を歩く。
「おぬし、なにゆえそんなにご機嫌なのじゃ?」
少し後ろで呆れ顔をするのは、『リャルトーの弓』を左手に持つフランだ。
「そりゃー魔獣とはいえ戦えるんだから嬉しくもなるよー」
「まるで戦闘狂のようだな」
フランの隣を歩くヘリオスもどこか呆れた表情。ヘラヘラ笑みのウラカーンが不思議そうに口を開いた。
「えー? 狂ってはないよー、純粋に楽しんでるよー、戦うのをー。あれかなー、これって魔獣の血ってやつかなー?」
なははーと笑い、二人に溜息をつかせるというプレゼントをした鉤爪手甲。
「はぁ。まぁ良いが・・・・・・ところで、ちゃんとやっているか?」
「うんー、中々難しいねー」
ヘリオスとウラカーンのやり取りを見ながら、フランは先ほどのことを思い出す。
ヘリオスは、ウラカーンの鉤爪を体内におさめるのに、火属性と水属性は相性が良いといっていた。
人の肉体の八割は水であるし、火を加えることで爪の変形を可能にできるのだという。もっとも、魔術に詳しくないウラカーンとフランは言ってる意味がさっぱり分からなかった。
「ひとまず、自分の魔力を体中にめぐらせることからはじめようか」
そういってヘリオスがウラカーンにいくつか教えていたのだが、ウラカーンは魔力というのを使ったことがないらしく、目を点にして話を聞いていた。
ひとまず、自分の体の中で何かを集中すればいいと解釈したウラカーンは、道中ずっとそれを続けているのである。
「・・・・・・よし、一応魔力がどういうのかは分かったみたいだな」
じっとウラカーンを凝視したヘリオスがうなずく。
魔力を視たのだろう。以前、アリアも魔力を視るというのがどういうことかを話していた気がするが、魔術が使えないフランは、その時のアリアの話を右から左へ受け流した。
そして三人がぴたりと歩みを止める。
「さて・・・・・・この下にいるようじゃな。ヴァンの読みはびんごじゃのぅ」
自らの足元を見下ろしてフランが言う。ウラカーンとヘリオスも地面を眺めた。
「だねー。さすがだよー。・・・・・・で、どうやってだそうかー? 警戒してるみたいだけどー」
「兄として僕も鼻が高いな。・・・・・・生態系は違うようだが、出すのは僕たちのやり方でも大丈夫だろう。少し離れていてくれ」
ヘリオスは二人が少し距離をとるのを確認したあと、右手に魔力の剣を出現させる。
その両刃の大剣を逆手に持ち替えて、地面に突き刺した。
「はっ」
気合の声を発し、地中深くに魔力を浸透させる。一瞬だけの地震。
すぐあとを追うように、激しい地鳴りが轟く。
ヘリオスの前方で地割れを起こる。草原の土を隆起させながら、大きな物が飛び出してきた。
目当ての魔獣。討伐依頼の対象だ。
手足のない胴体だけの魔獣は、先端が大きな丸い空洞になっていてその中は尖った歯が幾重も並んでいる。
「ほぅ、中々大きいのぅ。前に『リモの街』を襲撃したやつより小さいが、あれの子かの」
その魔獣は『リャルトーの弓』で両断したあの大型魔獣にそっくりで、違うといえば大きさくらい。
といっても、それでも大型であることには変わらず、魔獣の全長には三人の身長を足しても届かないほどだ。
魔獣が大きな空洞から濁った音を出す。怒りの感情が読み取れた。
「いいねー、殺る気満々って感じー? じゃ、オレっち行くから、援護よろしくぅ」
二人の返事を聞く前に、ウラカーンが奔る。獰猛な笑みを浮かべながら。
「援護、か。僕もどっちかというと接近戦が得意なんだがな」
溜息をつきながら、両刃の大剣を肩に乗せ、左手を突き出す。
「なら、おぬしも行けば良い。援護はわしだけで十分じゃぞ?」
フランも弓を前に突き出し、右手を添える。
「グラウクスが怒りそうだ」
「ふむ。それもそうじゃな」
苦笑する二人は、形を成した魔力を放った。
「はははーっ」
笑いながらウラカーンが魔獣の胴体の表面を走り回り、鉤爪で肉を引っかいていく
巨体を揺さぶりウラカーンを振り落とそうとするが、その都度爪を突き刺されて落とすことが出来ない。
ウラカーンから離れたところを狙い、ヘリオスとフランが次々と魔力の塊を魔獣にぶつける。
所々で光が爆ぜ、爆音が響いた。だが、実際のダメージは低く思える。なにせあの巨体だ。芯まで衝撃はいってないだろう。
「ふむぅ。肉厚なやつじゃのぅ。どれ、『バライナ』を使うとするか」
バライナとは『リャルトーの弓』に備わっている特殊な三つの魔矢の一つ。魔力を通常より多く吸収させ、生成する矢を巨大にすることができる。
「『バライナ』!」
フランが弓を少し上に傾けて叫ぶ。今度はただ吸収され続けるだけではなく、制御できるようにしなければならない。使うごとにあれだけ吸われるのでは、正直、かなりきつい。
弓より前に出ている部分が徐々に大きくなっていく。
「・・・・・・グラウクス! 離れたほうがいいぞ!」
大きく大きくなるフランの矢を見て、魔獣の体をちょこまかと走り回る友に叫ぶヘリオス。
その声で、フランに気づいたウラカーンは、げっ、とうめき素早く魔獣から飛び降りた。
「よっこらせっ」
矢を射るにしては妙な掛け声をし、フランが右手を離す。
初めて使ったときよりかなり小さいが、矢としての規格を大幅にはみ出した巨矢が魔獣へ飛ぶ。
風を巻き込み、大気を揺らし、音を響かせて一直線に飛ぶ巨矢はそして・・・・・・
「あ」
「む」
「ええー・・・・・・」
あっさりと避けられた。魔獣は体をくねっと横に動かし、避けた。
ちなみに上からヘリオス、フラン、ウラカーンだ。
「避けられちゃってるじゃんー、フーちん駄目だなー」
大げさなほどに溜息をつくウラカーンに、フランも首をかしげる。
「おかしいのぅ。あのときよりかなり遅かったようじゃが・・・・・・」
「確かに、あの遅さは秘宝にしては妙な感じだったな」
フランとヘリオスが『リャルトーの弓』を見下ろし、何やら議論を交わし始めた。
「ちょっとー、お二人さーん、とりあえずあとにしてくれないかなー。いやマジで、ほんとに、今、結構やばいからー!」
魔獣の側にいたウラカーンが、どっしんずっしんと追いかけられ、最後には余裕が全く感じられない声音で叫ぶ。
「もう少し頑張ってくりゃれー」
「応援ありがとう! だけどもうちょっとテンションあげていってほしいなー!」
秘宝から目を離さずに棒読みで言ってきたフランに、ウラカーンがまたも叫ぶ。
「ふむ・・・・・・魔力をおさえたから『バライナ』はまだ使えるようじゃのぅ」
「そうだな。宝石などを埋め込み、その光で使用可能かどうかを表すのは、良く使われる技法だ。・・・・・・三つということは、三種の矢か。どれも光っているようだし、今使用した矢も再度使えるようだ」
「よし、なら今度はちゃんと当てねばのぅ。ちと抑えておいてくれんか」
話し終わり、フランが弓を構える。
「分かった。グラウクス! もういいぞ!」
「りょーかい、っと」
必死に逃げていたウラカーンが一転、魔獣へ奔り、跳ぶ。
突進する魔獣の喉元部分を蹴り上げてその動きを完全に止めた。
「力だけは魔族並だな・・・・・・」
今日何度目かの呆れ顔をして、右手を振り上げ詠唱する。
「我求むは熾烈な四柱。スクウェア・ホールド」
唱え終えると、何もない空間から魔力の四角い柱が四つ出現し、蹴り上げられた魔獣の四方を囲む。
ウラカーンが魔獣から柱へと経由して囲まれた空間から飛び出す。
音もなく着地し、フランへ視線を向けた。
「フーちん、やっちゃえー」
「言われずとも。・・・・・・さて、今度は避けれんじゃろ?」
獰猛な笑みを浮かべ、創りあげた魔力の巨矢を射る。先ほどと同じ大きさ、同じ形、同じ速度で進む巨大な魔矢は、これまたあっさりと魔獣を両断し、さらに柱も砕いて空へ消えていった。
轟音を轟かせ、魔獣が地に伏す。
「あっけないな。地表の獣はこうも脆いものなのか」
魔界出身のヘリオスが呟く。弓を背中にかけながら、フランも口を開く。
「これでも、ここでは上位の魔獣になるんじゃがな。今更ながら、魔界へ行くという提案が却下されて良かったと思えてきたわい」
肩をすくめるフランと、物足りなさげなヘリオスのところへウラカーンが駆け寄ってくる。
「ちぇー、結局二人で良いとこもってっちゃってさー、オレっちがしたことといえば、囮と足止めじゃんかー、もっとガッツンガッツン戦える奴がでてきてほしかったなー」
不満そうに唇を尖らせ、鉤爪の両手を頭の後ろで交差させた。
「まぁそういうな。それも重要な役割だぞ」
「そうじゃぞ。良くやってくれたのぅ、ウラカーン。・・・・・・この分なら、ヴァンたちのほうも楽におわってそうじゃなぁ」
ヘリオスと二人、苦笑しつつウラカーンをなだめ、北東の方角を遠い目で見て言った。
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・・・一話ずつになりそうですが。