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第四十五話


次回から戦闘が多いです!

え?今回?・・・・・・あはは〜ん

 今三人は大通りを散策している。


 受付で正式参加登録を済ませたあと、軽い説明を受けた。

 大会参加者は明日早朝までに受付まで来て欲しいといわれ、魔道具類を使わなければ基本的に何をしても問題ないらしい。相手が失神するか、降参すれば、勝ちとなる。

 大会は勝ち上がり方式を使っており、全ての試合で勝てば優勝だ。

 ちなみに、『闘技者自己紹介』ということについて受付嬢に聞いたヴァンだが、アリアが慌てて止めてきたので結局どんなものかは聞けなかった。だが、受付嬢が「お似合いですよ」と言っていたので、そう悪いものでもないはずだ。・・・・・・ただ、考えたのがアリアなので、少し気にかかるヴァンだった。


 闘技場から出た後、図書館に行こうかという話もでたが、ヴァンが情けない顔をしたことと、フランが、明日大会ならりふれっしゅとやらもいいじゃろと提案したことで、こうして露店を見て回っているのだ。

 もっとも、現在あるお金は、三人合わせて銅貨七十六枚。まず買える物はないと思うが、それでも宿屋でじっとしているよりはいい。


 ここで計算が合わないと思われる方がいらっしゃるだろう。

 フランは元々銀貨一枚もっていて、ギルドからの依頼報酬でさらに銀貨一枚をもらった。

 そして、この首都へ来る際に利用した馬車の料金三人合わせて銅貨十五枚、宿屋を借りて銅貨五十枚、昨晩の食事で銅貨九枚を使ってある。

 残りの五十枚はどこへいったのか? それは今、工房長宅のヴァンたちが泊まった客間、そのテーブルの上に置かれてある。

 やっぱりお礼はしないとな。はヴァンの言だ。閑話休題。


「あ、服も売ってるのね」

 アリアが一つの露店で立ち止まる。露天商が短く、いらっしゃい、とだけ言った。

「ほぉ、綺麗な服じゃのぉ」

 アリアとフランが飾られている服を眺める。ヴァンはそういうことが良く分からない。

 置いてけぼりにされている感がしてきたので、フランに聞いてみた。

「そういえば、フランの服は『エルフの服』・・・・・・だったか? それなのか?」

 フランが露店から目を離し、ヴァンを見た。

「ん? これはただの革服じゃよ。まぁ一応おぬしらの服と同じく魔力が通っておるがのぉ」

 それはヴァンたちも知っていた。遺跡でオスマンと戦った際、フランは風の刃に切られ、そのときに服も裂かれ破けたのだが、次の日にはもう切れた部分はなく、新品同様の革服に戻っていたからだ。

「そうなのか。『エルフの里』が故郷って言ってたから、てっきりエルフたちは皆『エルフの服』ってやつを着ているのか思った」

 ヴァンの言葉にフランが首を振る。

「『エルフの服』と呼ばれておるから勘違いしているようじゃが、あれらは『エルフの里』でも位の高い連中しか着られん服じゃぞ。たまに人間も持っているようじゃが、おそらくエルフに縁のある者が譲り受けたものじゃろうて。普通は売られたりなんぞされておらんよ」

 へぇ。と興味無さ気に相づちを打つヴァンだが、アリアの反応は違った。

「ええー! 『エルフの服』って売られてるようなものじゃないのー!?」

 嘆くアリアに、フランが少し後ずさる。

「う、うむ。まぁ、もらった人間が死去したあとに、誰かに売られたのならあるかもしれんが・・・・・・エルフが人間に何かを渡すというのは、かなり深い意味があるからのぉ。エルフからもらう以外で手に入る方法はないといっても・・・・・・」

 そこまで言うと、アリアががっくりと肩を落とした。

 不思議そうな顔をするフランがヴァンに聞く。

「どうしたんじゃ、アリアは?」

「『エルフの服』を手に入れるのは夢だったらしいぞ」

「・・・・・・なるほどのぉ。これは悪いことをしたかのぉ?」

「いや、早目にわかってよかったんじゃないか? 逆に」

「・・・・・・おぬしも結構、言うのぉ」

 二人は、ヒソヒソ話をやめると、盛大な溜息をつくアリアを、苦笑しながら慰める。



 結局安い掘り出し物も見つからず、日も落ちてきたので三人は昨日の飲食店とは別のお店にきた。

「しまったな・・・・・・この店のほうが安かったか」

 席に座り、ヴァンがメニューを広げてうめく。アリアは金勘定が苦手、フランは遺跡で見つけた遺品などを売り払っていたため、お金を心配したことがない。

 したがって、財布の紐を握るのはヴァンになる。

「銅貨一枚しか変わらないのに・・・・・・そんな残念そうにすること?」

 アリアが呆れた顔で聞いた。ヴァンはメニューに目をおろしたまま返す。

「あぁ。銅貨一枚でも三人だと三枚も差が出る。三枚あれば、携帯食糧が一人分買える。・・・・・・はぁ、もったいないな」

 しばらく溜息をついていたヴァンだが、まぁ過ぎたことは仕方ないと気を取り直し、店員に料理を注文した。

 二人もヴァンに言われ、同じメニューにする。もちろん、一番安いやつだ。

 不満をもらすアリアだったが、フランの、もしヴァンが優勝できれば美味いもんを食いに行かんかえ? という提案に賛成し、ヴァンを応援する。

「・・・・・・あまり期待されても困るんだが」

 複雑な表情で呟くヴァンを、二人はあっさりと無視した。


 運ばれてきたメニューは、鶏がらのスープにやはりパン二つ。昨日の店とは違い、野菜を使っていないからその分安いと思われる。

「ん・・・・・・あら、美味しい」

 意外にも味がよく、アリアの機嫌が直っていく。ヴァンとフランもそれぞれパンとスープを口に運ぶ。

 静かに食事をしていると、店の扉が思い切り音を立てて開かれる。まわりの喧騒が戸惑いのざわめきに変わった。

「む? おい、ヴァン、あれは試験の間でおぬしにぶっ飛ばされた男じゃないかの?」

 気にせず食事を続けていたヴァンに、扉のほうを向いていたフランがたずねる。

「ん?」

 口に運ぼうとしたスプーンを戻し、ヴァンも入り口のほうへ振り向いた。確かにあの男だ。レガント、といったか。普段からあの格好なのか、絵の描かれた布をかぶっている。

 レガントは何かを探しているようにきょろきょろと店内を見渡す。ヴァンと視線が重なった。

 大男の顔が笑いに歪む。

「見つけたぞ、ガキィ。てめぇ、あのときはよくもやってくれたな」

 ドカドカと進行方向の客とテーブル、椅子を蹴飛ばしながら一直線にヴァンたちのところへ向かってくる。

 座ったまま大男を見ていたヴァンの前まで来ると、ヴァンの体をがしっと掴む。

 大男の手はヴァンの腹部をギリギリ覆えるほどだ。そのままぐいっとヴァンを持ち上げた。

「ヴァン!」

 アリアとフランが即座に椅子から立ち上がる。だが、ヴァンが手を上げてそれととどめた。

「何のようだ?」

 体を掴まれて持ち上げられているのに、その声に焦りは全く無い。それどころか、紅い瞳を爛々と輝かせ、大男を睨んでいた。

「てめぇ、あのときイカサマしたんだろ? じゃなきゃ、てめぇみてーなガキからあんな衝撃がでるわけがねぇ。今ならまだ許してやるぜ、てめぇが出場を辞退すればな」

 顔をヴァンに近づけながらまくし立てる。ヴァンは溜息をつき、首を横に振った。

「イカサマじゃない。お前が弱かっただけだ」

「なんだと、てめぇ!」

 ぐぐっとヴァンを掴む手に力を込める。

「お前に言いたいことが三つある」

 だがヴァンは表情を変えずに口を開いた。

「一つ、自分の弱さを人のせいにするな。二つ、俺に用があるなら他の人に迷惑がかからない場所を選べ。そして三つ・・・・・・」

 ヴァンが言葉を切る。瞬間、ヴァンの体から衝撃が周囲に走った。大男の手を内側から弾き、無理矢理開かせる。

「くさい息を目の前で吐くな」

 とん、と地面に降り立った妖精のような少女は、両足に力を込め、全身に魔力をめぐらせ、大男の腹部目掛けて、右拳を思い切り突き出した。

 全身のバネを使い、魔力を込めた衝撃の拳打は、レガントの腹に突き刺さる。

「うぐぇっ」

 大男の体が句の字に曲がるのと同時に、右拳に溜めた魔力で大男の体を押し出す。

 レガントの体は、試験のときと同じように吹っ飛び、またもや自らが開けたままの扉から退場していった。

「・・・・・・さて」

 ヴァンが呟き、大男に蹴飛ばされたテーブルや椅子に向かう。蹴られて倒れ、呆然としていた男客に手をのばす。

「大丈夫ですか?」

 男客は、はっと我に返り、ヴァンの手を取って礼を言った。

 どこも怪我をしていない男客をみて、ヴァンはにこっと微笑むと倒れたテーブルや椅子を片付けにかかった。

 フランとアリアもそれに倣い、テーブルを立てる。店員が慌てて飛び出してきて、散らばった料理を片付けていく。

 どうみても十二歳前後にしか見えない少女が、身長も体重も倍以上ある大男を殴り飛ばすという非現実を目の当たりにした他の客たちは、とりあえず、その少女たちを手伝うことにした。

 誰も彼も、一丸となって荒らされた店を片付けるのを見て、店の長が感動し、それを境に事業を拡大していくのだが、それはまた一生表には出ない別の話。



 妙な連帯感と達成感を味わった夕食を終え、宿屋に戻ってきた三人。

「はぁ、なんか疲れちゃったわ」

 首をこきこきとならし、服を脱ぎ捨てるアリア。

「お前はまたそうやって服を・・・・・・」

 頬を少し紅くしながら、視界に入らないように首を動か

「ぶっ!」

 した先に、フランが上半身袖なし肌着に下半身下着のみという格好をしていた。

 目を固く瞑って俯く。

「お前らな! もうすこし恥じらいというやつをだな・・・・・・!」

 ベッドに腰かけているヴァンが叫ぶ。

「女同士なんじゃから、問題あるまいて」

 水の入ったコップを口につけながら、フランが言った。

「そうよね。ところでフラン、今日のヴァンはどうするの?」

 ヴァンの肩がぴくっと震える。アリアの言葉の意味が分かるのだ。昨夜も同じ状況だった。ベッドが二つしかないので、一つのベッドに二人眠らないといけない。

 そして、一番小柄なのはヴァンだ。したがってヴァンが一人で一つのベッドを使うという選択肢は無い、らしい。

「ふむ。昨日はわしと一緒じゃったな。じゃが、アリア、おぬしは今までヴァンと一緒じゃったのじゃろう? わしに少しさぁびすとやらをしてくれんかのぉ?」

「ええー? またー? 昨日もそういってヴァンと寝たじゃない。私だってヴァン使いたいんだけど」

 寝たといっても本当にそのままの意味で、決して変な意味ではない。

 というより、すでに抱き枕的扱いのヴァンであった。

「・・・・・・」

 この場において、自分のことを話されているにもかかわらず発言権が無いヴァンは、二人の姿を見ないように目を瞑って俯くしかない。

「では、ヴァンの服をひん剥くのと、寝るときに使うの、どちらかを一人ずつでするというのはどうじゃ?」

 なっ! 思わず顔を上げるヴァンだが、二人の姿を見て慌てて俯く。

「ひ、ひんむくってなんだ! 一人で脱げるっていってるだろう!」

 それでも抗議の声をあげる。もちろん、二人にそれが通るわけが無い。

「そうね・・・・・・フランはどっちがいいの?」

「わしはまだ一回しかやっておらんからのぉ。ひん剥いてみたいわい」

 決まりね、とアリアが言った。

「さて、ヴァン。こっちに来てくりゃれ?」

「・・・・・・い、いや、だ」

 ベッドとベッドの間の床を見ながら、ずりずりと逃げようとするヴァン。

「フラン、思い切り行っちゃっても平気よ」

「ほっ、そうかそうか。では」

 ヴァンが二人のやり取りに危険を感じ、すばやくベッドから立ち上がる。が、同時に、フランに手を掴まれた。

 引っ張るフランの腕は、アリアより力強い。

「ふわぁっ」

 勢い良くベッドに倒されたヴァンの上で、フランが馬乗りになる。

「ま、まて、フラン。落ち着け、お前までそんな無理に俺を・・・・・・」

「おぬしを・・・・・・なんじゃ?」

 聞き返され、言葉が見つからず、しどろもどろ。ニヤニヤと笑うフランは、正直、アリアよりやばそうに見える。

「そ、その・・・・・・あ、倒れてたら! 脱ぎにくいだろう!」

「平気じゃよ。脱がすときは起こすでな」

 あっさり返してくるフランだが、ヴァンはその返事にきょとんとした。

「え? じゃぁ今は?」

 小首をかしげるヴァンに、フランが優しく微笑んだ。

「おぬしを、触る」

 その微笑みとは間逆で、あまりにも生々しく直球な発言に、一瞬ヴァンが固まった。

 鼻歌交じりで、固まるヴァンをバンザイさせると、両腕を交差させて左手だけで押さえつける。

 それにヴァンが我に返った。

「あっ!? ちょ、待て、お前、なんかアリアより危ない! 危ない気がする!」

 両腕をおさえつけられ、フランがお腹の上に乗っているため、暴れても体を少しよじらせることしかできない。

「ふっ、伊達に二百年以上生きておらんでな。安心せい、あからさまなことはせんからのぉ。今は。・・・・・・本番はいつかアリアとするか、もしくはわしを交えて三に」

「わー! わー! 全年齢対象ー!!」


 その後のヴァンがどうなったかは、ご想像にお任せする。


 ・・・・・・一言だけ、教えて差し上げる。

 フランは冗談は言っても、嘘をつかない。


読んで頂きありがとうございます。

なんか終盤グダグダになっちゃったような・・・でもいいんです。ヴァンいじめることできたから。

フランさん、一番危なかったですね、びっくりです。


感想批評、大歓迎でございます!そぉい!

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