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第四十四話


『闘技場編』です!

すみません、編ってほど長くないかもしれません。

 図書館で本との闘いを繰り広げたのは昨日。

 今日は朝早くからフランの宣言通り、闘技場へ来ていた。

「へぇ、闘技場っていうから殺伐としてるかと思ったけど、中々オシャレね」

 アリアが闘技場内を見渡して感想を述べた。

 場内は太い柱が数本立っていて、入り口から真っ直ぐ伸びる赤い絨毯の先には受付らしきカウンターが見える。

 天井には光を放つ大きめな照明魔道具がぶら下がり、壁には装飾品が散りばめられていて、どこかの舞踏場を思わせる。

 広い円状の闘技場内には、一般人から冒険者と思われる者たちまで、沢山の人々が居た。

「さて、参加するにはどうしたらいいのかのぉ?」

「とりあえず、あそこのカウンターが受付みたいだし、聞いてみるか」

 フランが首をかしげ、ヴァンがどこか嬉しそうな声で受付を指差す。

 アリアとフランがうなずき、三人は受付へと向かった。


「ようこそ、『リモニウム総合闘技場』へ。どういったご用件でしょう?」

 カウンターに離れて座る三人の受付嬢のうち、真ん中の一人が口を開く。

「こちらは参加者ご登録の受付となっております。観戦をなさりたい場合は、左の受付のほうへ。その他のご説明は右の受付へどうぞ」

 にっこりと営業スマイルを浮かべて話す中受付嬢。どうやら、ヴァンたちが参加を希望しているとは思ってないようだ。まぁ当然といえば当然ではあるが・・・・・・フランは置いといて、ヴァンとアリアは見た目でいえば普通の少女にしか見えないからだ。美のつく。

「いや、ちょっと闘技大会に参加したくてのぅ。出来るかえ?」

 フランがたずね、受付嬢は少し驚いた顔をしたが、すぐにスマイルへ戻る。

「はい、初めての御参加となりますね? その場合、こちらで仮参加登録したのち、試験の間にて、参加試験を受けていただきます。よろしいですか?」

「ほぅ、やはりそういうのがあるんじゃのぅ。うむ、良いぞい」

「ありがとうございます。では、先にご説明いたします。魔道具の類は使用禁止となってお」

「なんじゃとー!」

 受付嬢の言葉を遮り、フランが叫んだ。目を開いたり閉じたりする受付嬢。

「なんてことじゃ・・・・・・魔道具の類が使えんのでは、これも使えんではないか。困ったのぅ」

「あれ? フラン、そのナイフは?」

 うなるフランの腰にかけられているナイフを指差し、アリアが聞いた。

「これか? 飾りじゃ。使えんこともないが、まぁ、振り回すくらいじゃのぉ」

 それでどうやって今まで秘宝探してきたんだろう、疑問に思った二人だが、秘宝探しには戦闘能力はあまり重要ではない。危険を察知できる勘と小さなものでも見落とさない洞察力、あとは速い逃げ足があれば良いのだ。

 ともかく、フランは背に負う『リャルトーの弓』が使えなければ闘技場で優勝などできない。

 困った困ったと珍しく本当に困った顔をしているフランにヴァンが口を開こうとする。

「・・・・・・なら」

「でも、それは困ったわね。仕方ないわ、私が代わりに出てあげる」

 ヴァンの声を掻き消してフランが名乗り出た。ヴァンが慌てて止める。

「ま、待て待て! お前の魔術じゃ手加減できないだろう!」

 言葉通り、アリアの魔術は強力すぎる。ある程度なら火力を抑えることができるが、もし相手が男だった場合――というか、たぶん全員男――本当に消し炭にしかねない。

「そうね・・・・・・私も闘技大会で人殺しにはなりたくないし」

「ふむぅ、本当に困ったのぅ」

 悩む二人に、ヴァンがまたも口を開こうとする。

「いや、だから、あの」

 口ごもるヴァンに、アリアが気づいた。

「あ、ヴァンはどうかしら?」

 すすめられ、顔を輝かせるヴァン。だが、フランが即座に口を出す。

「やめておけ、アリア。ヴァンは言っておったじゃろう? 出るつもりなんかないとな。仕方ない、あきらめるか」

 あっさり諦めるフランに、あれはからかってただけだろ! と心で叫ぶヴァン。

 アリアも肩を落として溜息をついた。

「そうだったわね。ごめんなさい、ヴァン」

「い、いや、待て、あれだ、どうしてもっていうなら出てやらんこともないぞ!」

 今度は声に出して叫ぶ。二人は首を横に振り、ヴァンの肩を叩いた。

「無理するでない。わしのわがままに付き合わせるわけにもいかんしのぅ」

「そうよ、ヴァン。頼まれても嫌なら嫌って言わなきゃ。じゃ、図書館に行きましょうか」

「そうじゃの」

 振り返り、すたすたとよどみなく歩くアリアとフラン。

 声にならない声で、あ、あ、と右手を漂わせる。

「ふ、ふたりとも!」

 二人は呼ばれて足を止め、振り返る。視線の先には、ヴァンが少し顔を赤くして俯き、ぼそぼそと呟いていた。

「なんじゃ?」

「どうしたの?」

 アリアとフランはヴァンに近づき、聞き返した。その表情はニヤニヤとほくそ笑んでいる。

「・・・・・・出たい」

 ぼそっと言うヴァン。アリアが追い討ちをかけた。

「聞こえないわよ? なんですって?」

 うぐ、声を詰まらせて二人を見上げる。アリアとフランが笑みを浮かべているのに気づき、睨んだ。

 フランがうながす。

「はて、なんと言ったかのぉ? もう一度言ってくれんかえ?」

 赤い瞳だけで睨みあげながらも、この二人は満足する答えを出さないと、絶対にこれを続ける。と半ば諦念して口を開いた。

「・・・・・・出たい、です・・・・・・」

 羞恥やら屈辱やら、もう色々な感情が混ざってしまってつい敬語になるヴァン。

 しばらくヴァンを見下ろしていた二人だが、くすっと笑うとヴァンの頭や肩をポンポン叩いた。

「あははっ、ごめんなさい、そう睨まないで」

「はっはっは、悪かったのぅ。おぬしがあまりに可愛くてな、ついからかってしもうた」

 笑いながら謝ってくるアリアとフランを、ヴァンはよく分からないうなり声を出しながら睨んだあと、ふん、と鼻を鳴らして受付嬢に振り向き、話しかけた。

「俺が、出る!」

 声を荒げて言うヴァンの後ろで二人が苦笑しながら顔を見合わせている。受付嬢から見えたヴァンの顔は赤い。



 受付で参加登録をしたあと、試験の間と呼ばれる部屋に案内された。

 全体的に石造りであった闘技場の中で、この部屋だけ木造のようだ。参加者が増えてきたので、急遽、試験方式を取ったと案内されている間に聞かされたのを思い出す。

 ヴァンは部屋の真ん中あたりで立っている。

 長く真っ白な髪を一つに束ね、首の辺りと腰、ふくらはぎの部分を髪自体で結っていた。これは「戦いにくいじゃろ」と言って、フランがやってくれたのだ。

 そのフランは、試験の間入り口の近くの壁を背もたれにしてヴァンを見守っている。

 アリアの姿が無いのは、受付嬢と話しているからだ。

 受付嬢の話では、この闘技場名物の一つでもある、「闘技者自己紹介」なるものを考えないといけないらしいのだが、これは本人が決めなくてもいいというので、アリアに任せた。

 入ってきた扉と逆のほうにある木造の扉から、一人の男が入ってきた。一般的な革服よりは上等そうな服を着ているが、試験官だろうか。かなり痩せている。

「君が、ヴァン・グラシアードさん?」

 聞かれ、ヴァンは首肯した。

「うーん・・・・・・書類には二十二歳ってあるけど、ほんと?」

 投げやりな口調だが、書類も持っていることだし、この男が試験官で間違いないようだ。

「はい、見えませんか?」

 高くどこか甘えるような声でヴァンが微笑みながら聞く。相手が礼を欠いても、自分は欠かない。試験官は一応年上に見えるので、敬語を使うヴァン。

「見えないけど・・・・・・まぁ、いいか。試験を開始しよう。レガントさん、どうぞ入って」

 試験官が自分が入ってきた開きっぱなしの扉に振り向く。

 そこから絵の描かれた布を頭にすっぽりかぶった大男が出てきた。上半身は裸で、革ズボンだけをつけている。

 筋骨隆々としているが、リモの街の工房長のほうが体格は良かった気がする。

「んん? おい試験官さんよぉ、まさか試験ってのはこのガキを倒すことじゃねーだろうな?」

 布仮面をかぶった大男がヴァンを見下ろし、次に試験官に視線を向けた。

 大男は、やはり工房長よりは小さいが、ヴァンよりずっと大きい。ヴァンの頭は大男の腹辺りに届くくらいだ。

 大男に問われた試験官が、両手を広げて肩をすくめた。

「その通りだよ。今回の大会は参加希望者が多くてね。こんな形の試験しか出来なかったんだ。・・・・・・まぁ、辞退もできるよ。ヴァンさん、どうする?」

 大男の布仮面をじっと見つめていたヴァンは、話しかけられて試験官を見る。

「あ、はい。分かりました、この人を倒せば闘技大会に参加できるんですね?」

 にこっと笑いながら言うヴァンに、試験官と大男の目が見開く。

 ついで、大男が大笑いした。大だけに。

「ぎゃーっはっはっは! そりゃ面白い冗談だなぁ、えぇ、ガキ。その度胸に免じて、ほれ、一発先に殴らせてやるよ。だが、仕掛けた後の安全は保証しないぜぇ?」

 ほれほれ、と上半身をかがめ、頭をヴァンの前まで持ってくる。

「そうですか、ありがとうございます」

 微笑みを絶やさず、右手に魔力を込めた。振り上げ、大男のアゴに当てる。

「ふげっ?」

 ズゴン。鈍い音を試験の間に響かせて、ヴァンは右腕を振りぬいた。

 大男の頭が思い切り上へ上がり、直立不動になる。

「はぁぁっ!」

 振りぬいた勢いを殺さず、ヴァンが回転。真っ白な一房の髪を揺らし、魔力を溜めた左足で、大男の鳩尾みぞおちに後ろ回し蹴りを放つ。ドレススカートがふわりと暴れたが、そこは恐ろしい娘・ヴァン。下着は見えない。

「げぶるぁっ!」

 どんなに体を鍛えても、鳩尾はもろいままだ。

 魔力に吹き飛ばされた大男は、自らが入ってきた扉へと退場していく。その細い足のどこにそんな力があるのかと疑いたくなるほど、良い飛びっぷりだった。

 フランが、ひゅ〜、と見事な口笛を鳴らす。大男は部屋の外の廊下で気絶したようだ。


「・・・・・・」

 試験官は開いた口をふさげない。

 あ、とあがったヴァンの声に、びくっと我に返った。

「試験開始の合図がないと無効でしたか? すみません、もうやっていいのかと」

 困りましたね、と腕を組むヴァンは、先ほど大男を飛ばしたのと同一人物に思えないほど、普通の少女に見える。くどいようだが、美、のつく。

 試験官が、ぶんぶんと頭を振った。

「い、いいえ、全然大丈夫です。合格です。こ、ここれ、どうぞ。合格通知です。受付へお持ちいただければ、参加オーケーです。くく、詳しいことは受付から聞いてください、では!」

 慌てながら早口で言った試験官は、そそくさと部屋から出て行く。

 同時に、フランの近くの扉が開いた。

「あれ? もう終わっちゃったの?」

 アリアだ。どうやら闘技場名物「闘技者自己紹介」というやつの話は終わったらしい。

「うむ。あっさりとな。いやはや、これは本当に優勝できるやもしれんのぅ?」

 期待の眼差しで見られ、ヴァンは、頑張るよ、と苦笑した。


読んで頂きありがとうございます。


いきなりですが!送っていただいたメッセージには全て目を通させてもらっております!

中には、リクエストをしてくださった方もいらっしゃってとっても嬉しいです。

それらのネタ(?)は全て必ず書きますので、期待したのち作品の駄目さに肩を落としていただければと(←ぉぃ


ではでは!

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