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第十九話

キャラにはそれぞれ濃い色を出したいとです。たまに口調がこんがらがるときがあるとです。

「んんー、結構入ってるわねー」

 アリアが貨幣袋を両手で持ちながら嬉しそうに言う。ずっしり重い。

「みたいだな。かなりの携帯食糧ももらえたし・・・・・・まぁ昨日のことを考えれば当然の報酬ともいえるが」

「そうね、昨日は大変だったものねぇ・・・・・・」

 アリアが昨夜の出来事を振り返りながら言う。ヴァンも昨日のことを思い出した。


 昨夜、魔獣の『ギガンリーフ・バシレウス』ことリーちゃんを村長たちに話すと、皆それぞれに複雑な表情をしていた。だが意外なことにトーニャはすぐにリーちゃんと打ち解けていた。子供はその者の本質を感じることができるというし、リーちゃんに危険がないことを逸早く気づいたのだろう。魔獣と遊ぶ弟にクローロは気が気でなかったようだが。

 その夜は、村人を全員集合させた大会議をなった。皆、リーちゃんを見て少し怯えていたが、少量の水で蔓を肥えさせてはいたものの、大きさは人と変わらず、何より隣にいたヴァンとアリアが冒険者だということが、村人たちの恐怖を徐々に和らげていった。

 大会議は夜遅くまでかかったが、ヴァンたちのお墨付きとリーちゃんの人柄(?)の良さで、なんと村の用心棒として共に過ごすことが決まった。さすがにこれにはヴァンとアリアも驚いたが、魔獣除けが効かないリーちゃんが森の中にいようが村の中にいようが、どちらも大して変わらないか、と考えを改めた。

 ちなみに、リーちゃんはミリナに「お友達なら・・・・・・」といわれ、見事に玉砕していた。当然といえば当然だが。それを慰めようとしたヴァンだったが、リーちゃんはむしろ、友達でも十分デースと感激していた。それと、どうでもいいことだが、一目ぼれだったらしい。


「リーちゃん、大丈夫そうだったわね」

 朝、というか、ほんの数時間前だが、起きたヴァンたちが見たのは、村の子供たちと戯れるリーちゃんの姿。その表情・・・・・・は全く分からないが、とりあえずとても幸せそうだった。

「そうだな。魔獣にも、ああいうのがいるんだなぁ」

 そういって空を見上げる。森から伸びる木々の枝から、さんさんと輝く太陽がちらりと見えた。時刻はすでに昼過ぎ。

 二人は、村でお昼をご馳走になると、すぐに村を出た。ミリナに、もう少し休んでいってはどうかと誘われた。もちろん、ミリナは、リーちゃんの様子をもう少し見ていって欲しいという意味ではなく、純粋に、昨晩戦闘をした二人の体を気遣っての言だ。だが、ヴァンはその言葉を丁重に断っている。なぜなら、二人が今目指している場所こそ『リモニウム共和国』だが、本来の目的は『フランガスタス・フォン・ペトリ』というエルフに会うこと。これは時間が経てば経つほど困難になってくる。

 その理由はフランガスタスが秘宝を探しているからだ。それから分かるのは、各地の秘宝がありそうな遺跡を巡っているということ。つまり、ずっと同じ場所にいることはないはず。

 もし、『リモニウム共和国』にたどり着いたときに既に居なかった場合でも、フランガスタスが旅立った時よりさほど時間が経ってなければ、人々の記憶が薄れる前に情報を集めることができるだろう。ゆえに、早ければ早いほど良いことになる。


 今二人は北東に続く街道を歩いている。

「それにしても・・・・・・リーちゃんに人の言葉を教えたのって、何者なのかしら? 女を落とす方法はおいとくとして」

 アリアが首をかしげる。ヴァンは、気になるのか頭の上に乗っている黒を基調としたレースカチューシャを両手でいじりながら言った。

「さぁな・・・・・・俺の予想としては、そいつも魔獣なんじゃないかと思っている。女性を落とす方法はおいとくとして」

「どうして?」

「人語を教えるにしても、魔獣と話せなければ時間がかかりそうだろう。リーちゃんが言うには、一週間でマスターしたという話だし。それに、人は普通魔獣に近づきさえしないはずだ」

 溜息をつきながらカチューシャから手を離すヴァン。あきらめたようだ。両端にリボンのついたカチューシャは少しずれている。アリアが、くすっと笑いながらマントから手を伸ばし、ちょいちょいと直してやった。

「うーん・・・・・・でも、もし魔獣だったら、最初から人の言葉を話せていたってことになるわよね?」

 その言葉にヴァンがまたも深い溜息をついた。

「そうだな・・・・・・人語を覚えられる魔獣の力は強大だ。まぁリーちゃんとした約束を考えれば、人間に好意的ではあるみたいだが・・・・・・森が物騒・・・・・・か」

 ヴァンが、あごを手で触る。考え込む姿も、乙女が好きな人にどんな物を贈ろうか悩んでいるようにしか見えない。そんなヴァンを見てると、アリアが声をあげた。

「あっ、そうだ」

 ヴァンが思考を中断し、隣を歩くアリアを見上げる。

「? どうした?」

「ううん、なんでもないの。気にしないで」

 小首をかしげるヴァン。アリアはニヤニヤと笑みを浮かべていた。

 歩き続けると、今歩いている街道より、少し大きな街道へ出た。北東と南西に道がのびている。

「あ、ヴァン、看板があるわよ」

 アリアが、大きな街道と今いる街道に挟まれるようにして立ててある看板に駆け寄る。

「えーと、南西が『ガレー町』、北東が『国境関所・ガレーラ側』だって」

 今目指しているのは、関所のほうだ。二人は北東に向かって歩く。真上にあった太陽は、少し傾いてきた。

 アリアがヴァンに、女の子としての立ち振る舞いとはどういうことか、という説法を説きながら歩いていると、後ろからガラガラと荷車が走る音が聞こえてきた。

 振り向くと、『ガレー町』から続いていると思われる街道から、大きな荷馬車がこちらに向かってくる。その両隣には二人の冒険者らしい男が見えた。護衛か、とヴァンは思う。

 ヴァンとアリアは邪魔にならないよう道の脇に寄る。荷馬車がすぐ近くまで来た。荷車を引っ張る馬は茶色い普通の馬。その手綱をもち、荷車の先に座ってるのは緑の服をきた商人風の男だ。そのまま通り過ぎるものだとおもっていたが、荷馬車の左側を歩いていた冒険者の一人が二人に気づくや否や、驚きの声をあげた。

「お、『狼殺し』!?」

 慌てた様子で腰の剣を引き抜く。荷馬車の反対側にいたもう一人の冒険者が叫ぶ。

「『狼殺し』だと!?」

 商人風の男が座っているところを足場に立ち、背中の斧を引き抜いた。いきなり臨戦態勢だ。

「知り合いか?」

 二人の冒険者を顔を見る。どこかで見たような顔だが・・・・・・。

「いいえ、全くの初対面よ」

 ヴァンが呆れ顔でアリアを見上げた。アリアは男たちを睨んでいる。

「・・・・・・なのに、いきなり武器を向けられるなんて、お前今まで何してきたんだ?」

 そこでやっと、アリアは視線をヴァンに落とすと、剣呑な表情ではなく、悪戯っぽい笑みを浮かべ

「ヒ・ミ・ツ」

 とだけ言った。



読んで頂きありがとうございます。ほんとに、アリアは過去何があったんでしょうねぇ。ね?

誤字脱字、感想批評、首を長くする的な意味で大歓迎です。え?意味が分からない?私もです。

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