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第十七話

はい、というわけで、戦闘です。イメージを頭の中で考えながら描いていますが・・・たまにイメージどおりの描写が出来てるかどうか自信がなくなります。

 突き出されてくる大量の蔓を、ヴァンとアリアは左右に別れ、避ける。目標を失った鋭い蔓たちは、地面に次々と突き刺さっていった。それを眺めたヴァンは魔獣の右に立ち、反対側にいるアリアに叫んだ。

「アリア! こいつは、曲がりなりにも魔獣除けを無視している。油断はするな!」

「分かってるわよ!」

「女神様、がんばってー!」

 魔獣のさらに向こう側からトーニャの声が聞こえてくる。

 魔獣は赤い二つの点でヴァンとアリアを交互に睨む。どちらを狙おうか決めかねているようだ。その隙を見逃すヴァンとアリアではない。

 ヴァンが蒼い髪を揺らし、両腕を頭の上で交差させる。

「炎よ、我を纏いて鎧と化せ! サラマンダーイグニッション!」

 両腕を曲げながら、横腹に振り下ろす。瞬間、炎がヴァンの四肢の先に現れ、燃え盛る。さらに両足に魔力を込め、奔り、跳ぶ。

「我求むは爆ぜる炎塊なり! ファイアーボール!」

 アリアが凛とする声で詠唱し、顔の横まで持ち上げた右手の先に炎の塊を出現させる。

「ガールたち、炎使いなのネーン!?」

 赤い二つの点を少し大きくする魔獣。

「お前との相性、抜群、だろっ!」

 ヴァンの体は魔獣の頭部にまで跳ね上がっている。華奢な体をひねり、炎を纏った右回し蹴りを放つ。炎脚が魔獣にあたった瞬間、魔力を解き放つ。熱と衝撃を受け、魔獣の頭が自らの体を引っ張り、バランスを崩す。

「燃やし尽くしてあげるわ!」

 アリアが右手を突き出した。炎の塊がアリアの右手から離れ、魔獣の胴体に向かって高速で飛んだ。炎弾が魔獣の腹部に触れ、爆発する。 

「アーウチ!!」

 爆発したところから炎が立ち上る。ヴァンは地面に降り立つと後方へ距離をとる。四肢にともる炎が火の粉を散らす。

「あっけないものね」

 炎に包まれていく魔獣を見ながらアリアが呟いた。だが、ヴァンは青い瞳に宿る戦意の光を消していない。

「ハーハハハー!」

 突然魔獣が炎で焼かれながらも笑い声を上げた。アリアが目を見開く。

「このテーイドでミーを燃やそうだなーんて、お笑いデース!」

 ふんっと掛け声を出すと、魔獣を形作っている大蔓の一本一本から水が噴出した。あっという間にアリアの炎を消してゆく。驚くアリアに、魔獣が勝ち誇ったように言った。

「んふーふー、ミーの体には大量の水がたまってマース。ミーが植物の姿をしているからといってすぐ燃やそうと考えるのは、ショウショウあさはかデース」

「それじゃぁ、切るしかないな」

「ワッツ!?」

 魔獣は、自分のすぐ近くでした声に、慌てて首を横に向ける。そこにはいつの間に移動したのか、四肢の炎を消したヴァンが魔獣の左肩に乗っていた。四肢の炎の代わりに、右手には炎剣が握られている。ドレススカートが風に煽られ、蒼い髪が流れた。

 ヴァンは炎の柄を両手で持つと、魔獣の首めがけて横に薙いだ。水が蒸発する音を出しながら、炎剣は大蔓を断ち切っていく。振り切る。蔓の切り口から水が噴水のようにあふれ出てきた。

「浅いか・・・・・・!」

 すべて断ち切れたかと思ったが、剣の長さが足りない。いや、魔獣の首が太かったのか。どちらにしても、首と体を別れさせることは出来なかった。魔獣の頭は残り少しの蔓に支えられながら、胸の辺りにだらりと垂れる。

「ガァァァル、お痛がすぎマースヨー」

 その状態で、頭をぶらんぶらんと揺らす。同時に、魔獣の肩から蔓がのび、ヴァンの白く細い両足に絡み付いていく。

「ちっ!」

 引き抜こうとするが、今のヴァンでは力が足りない。炎剣で蔓を切っていく。そこに、魔獣の左腕が迫ってきた。蔓の先を触手のように蠢かせている。

「本気でキショイ!!」

 アリアが叫ぶ。右手を突き出し、すぐさま左手を突き出す。一発、二発、と矢をかたどった炎が空気を裂いていく。狙いはヴァンに迫る左腕。炎の尖矢は魔獣の蔓腕に突き刺さり、燃え上がる。

「無駄だといってるじゃないデースか」

 炎に包まれる左腕に視線をうつし、腕に束ねられている蔓から水を噴出させる。徐々に炎が弱まっていき、鎮火された。魔獣が腕に気をとられているうちに、ヴァンが絡み付いてくる蔓を切り捨て、地面に飛び降りる。ドレススカートを押さえてる余裕はない。着地すると、離れ際に魔獣の右足を斬る。束ねられた蔓の表面だけが裂かれ、血のように水が溢れ出した。

「ん?」

 そして気づく。魔獣の両足が一つに束ねられ、地面に入り込んでいることに。距離をとったヴァンが、ちらっと大井戸を見た。魔獣と大井戸の距離こそあるものの、井戸からの直線上に魔獣は居る。

「ああー逃げちゃいけまセーン」

 魔獣が少し焦げ付いた左腕で頭を持ち、元の位置に戻す。頭と体の蔓同士がウネウネと動き、また首を作った。アリアがそれをげんなりした顔で見ている。

「・・・・・・おい、魔獣」

 ヴァンが魔獣に炎剣の先を向ける。魔獣がヴァンを見下ろし両腕を左右に広げ、ウネウネと動かした。

「その呼び方はスキじゃないデース、ミーの名前は『ギガンリーフ・バシレウス』。愛を込めてリーちゃんと呼んでホしいデース」

「なんだその無駄なかっこよさあふれる名前は。まぁそんなことはどうでもいい。お前、熱いお湯、好きか?」

 ヴァンの質問に、ウネウネ動く手の部分を顔に持っていく。少し考えるような仕草をすると普通に答えてきた。

「お湯カーイ? キミタチみたーいな、カワイー娘たちからもらえるのならお湯でも喜んでもらうトーモ。だけど運命は残酷デーネ、ミーたち植物は熱い水飲んだらたちまち死んでしマ・・・・・・ハッ!?」

 魔獣の二つの赤い点が今までで一番大きくなる。ヴァンは犬歯をむき出しに、凶悪な笑みを浮かべていた。

「アリア! 大井戸にめちゃくちゃ熱いのをぶち込め!!」

 目の前で魔獣と人との会話というあり得ない光景を呆然と見ていたアリアだったが、ヴァンの叫びに我に返ると、考えることも無くただ言葉に従う。大井戸へ走り出した。

「ま、まちなサーイ!」

 首を切られても余裕が見えていた魔獣の声に初めて焦りが生じる。走るアリアに向かって両腕から数本の蔓を伸ばす。あと少しで届く、というところに、ヴァンが横から飛び出してきた。重さの無い炎の剣を縦横無尽に振り回す。蔓が切り落とされた。が、数が多すぎる。残りの少しが、アリアの体を捉えようとした。

「アリア!」

 叫ぶヴァン。アリアが振り向いた。蔓の触手は目の前まで迫ってきていた。そこに、一つの影がアリアと触手の間に割ってはいる。

「うわああああ!」

 緑髪の男。クローロだ。二人の表情が驚きに彩られる。触手はクローロを掴み、縛り上げた。苦しそうな声で、クローロがアリアに叫ぶ。

「はやくいけよ!」

 その言葉にアリアが少しぴくっと眉を動かしたが、今はヴァンに言われたことをするのが先だ。きびすを返しまた走り出す。

「邪魔をしないでくだサーイ!」

さらにクローロを縛り上げるが、一瞬でヴァンに切り捨てられる。水と蔓が舞う中で、ヴァンが緑髪の男を見て笑った。

「やるじゃないか、クローロ」


 大井戸についたアリアは囲いに上る。右手を前に出し手のひらを井戸の底に向けた。詠唱を始める。

「我が身に巡る魔の力よ、我が意思に通じ、炎となりて形を創れ。我求むは永久に消えぬ炎・・・・・・サン・セル」

 静かに紡ぐと、アリアの手のひらから目が焼けるかと思うほどの強烈な光が発せられた。背中を向けているヴァンとクローロ以外が目をかばう。激光の中に、拳大ほどの丸い球。それはゆっくりと、井戸の中に吸い込まれるように、落ちていった。光は大井戸から夜空に上っていく。ほどなくして光が消え、ぽちゃん、という音だけが大井戸から聞こえた。

 アリアが大井戸の囲いから降りる。瞬間、すさまじい地響きと共に大井戸から水蒸気が飛び出してくる。そして、魔獣が悲鳴を上げた。

「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃー!」

 体中の蔓を蠢かせ、もだえる。必死な様子で一つに束ねられた両足を地面から引き抜き、その巨体で地面の上をのた打ち回っている。無数にある蔓からは水が絶え間なく噴き出ていた。

 引き抜かれた地面の部分が陥没し、湯気が立ち上る。

 言われるとおりにしたが、訳が分からないアリア。ヴァンたちのところまで走り寄ると、クローロに目を向けた。

「・・・・・・少しは見直したわ」

 そっぽを向きながら言うアリアに、クローロも鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 アリアはヴァンの隣に立つと、聞く。

「あいつ、どうしたの?」

 ヴァンが、地面を転がる魔獣を見据えたまま、アリアに答えた。

「あぁ。沸騰したお湯を吸い上げてしまったんだろうな。やつは水を蓄えていたんじゃない。大井戸の水脈から吸い取っていたんだ」

 ヴァンの言葉に、アリアの頭の中でピーンと音がなる。

「なるほどー、植物的にいうと、根を張ってたってところね」

「そういうことだ。魔獣とはいえ、一応植物。熱湯は植物の細胞を壊す。混じったお湯を吐き出そうと必死だな」

 半分賭けだったがな、と続け魔獣へと歩く。アリアはヴァンを輝く目で見ながら、その背中を走り追う。クローロも後を追おうとしたが、ヴァンに家族を守ってろといわれ、しぶしぶ村長たちのところへ駆け寄った。

「ひぃー、ひぃー、な、なんてことをシマースか。ミーを殺す気デースか?」

 魔獣が荒い息を吐き、立ち上がる。その姿はもう先ほどの巨体ではなく、人間の一般男性と変わらない大きさになっている。体を作る蔓はほとんどが萎びていた。

「それがお前の本当の大きさか。もう地下水を吸い取ることはできないぞ。熱湯を飲みたいなら話は別だがな」

 ヴァンが炎剣の先を魔獣の顔に近づける。すぐ後ろのアリアが右手に拳大ほどの炎塊を出す。

 魔獣は怯みながらも、両腕から伸びる蔓を蠢かせる。

「これで勝ったつもりデースか? ユダンタイテキなのデース!」

 魔獣が両腕を突き出し、大量の触手をヴァンたちに向かわせた。




読んで頂きありがとうございます。・・・え?触○プレイかですって?この駄作は全年齢対象となっております。出てくるのは健全なお色気シーンだけです。

誤字脱字、感想批評、まるっとばりばり歓迎中にございます。そろそろ歓迎ネタがなくなってきました。

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