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王子と王女の別居計画  作者: リラ
第一幕
11/75

2-5

煌めくシャンデリアと、燈された蝋燭の揺らめき。いつもは式典で使われる退屈な大広間も、その日ばかりは誰もが笑っている。令嬢たちは美しいドレスで着飾り、男性陣は黒の燕尾服。


いつもの学生服を脱ぎ、貴族らしく交流をする。それが、学期末の最後の行事であるダンスパーティーだ。


婚約者がいれば、婚約者に贈られたドレスを身に着けて参加する。クロードももちろんそうだ。クロードは、俺が贈った深い青のドレスを身に着け、髪には真珠の髪飾りを付けている。その髪飾りは俺が贈ったものでは無いが、周りがは俺が贈ったと思うだろう。


誕生日に、初めてシャルルから貰ったもの。クロードはそれを、必ずダンスパーティーの時に身に着ける。この意味が分からないほど、シャルルが鈍感でないといいのだが。


「セドリック様?」


一人で笑っていると、隣から怪訝そうな声がする。横を見れば、クロードが首を傾げていた。その姿を、男たちがちらちらとみている事を、果たして本人は気が付いているだろうか。


胸元が大胆なドレスを贈った俺に言えたことでは無いが、今夜のクロードは美しいというよりは艶めかしい。シャルルに早く見せてやりたいのに、今日はアイツも学生として参加するため、まだ姿を見ていない。


クロードをエスコートしながら歩けば、視線が一気に集まる。


「視線が痛いですわね」

「そうだな。だが今日はダンスもある。しかも、最初のダンスは俺たちだけだからな。もうしばらく絶えないといけないぞ」

「私とのダンスを嫌がるなんて、セドリック様くらいのものですわ」


くすくすと笑うクロードに、俺はため息を吐く。昔、ダンスのレッスンの最中に、俺の足を踏みまくったのはどこの王女様だったか。


「足を踏んでくれるなよ」

「今日は踏みませんわ」


優雅な笑みをたたえたクロードに笑い返せば、どこからかため息が漏れる。俺たちの姿は、羨望の的であった。そう見せようと思ったのは、クロードがシャルルを好きになったからこそだ。


俺たちの結婚は、覆す事が出来ない。けれど、もしも今醜聞を犯せば、アストラ国王も父上も激怒するだろう。最悪、シャルルを断罪される可能性だってある。


だが、結婚した後ならどうにでもなる、という事を知った俺たちは、お互いの了承により別居を計画している。


俺の将来の平穏の為にも、シャルルとクロードにはぜひとも恋人同士になってもらいたい。そうでなければ、仲の良さを演出してきた甲斐が無いというものだ。


「……シャルルはいませんね」


囁くように言ったクロードに頷き、立ち止まる。そして入り口に目を向けると、まるでクロードの呟きが聞こえたかのように、その姿が見えた。シャルルは俺たちに気が付くと、こちらへ歩いてくる。


「すみません、殿下より先に来るつもりだったのですが」

「今日はいい。お前も楽しめ」


はい、と頷いたシャルルはクロードに目を向け、固まった。クロードが、ごきげんよう、と手を差し出しても、まだ固まったままだ。……面白い。


「シャルル?」


クロードが名前を呼ぶとようやく、はっとして、腰をかがめてクロードの手を取り、指先に口づけを落とした。唇を離しても手を取ったまま、クロードを見つめている。どうやら、このドレスにして正解だったようだ。


まぁこれに関しては、シャルルだけではないだろうが。しばらくシャルルはクロードを見つめ、消え入りそうな声で言った。


「……とても、お綺麗です」

「ありがとう。あなたも素敵よ。今日は私とも踊ってくれる?」

「は、はい。もちろん、私でよければ」

「約束よ」


シャルルは、にっこりと笑ったクロードに何か言いたそうにしたが、結局何も言わずに、はい、とだけ返事をして別の場所へと移動していった。その姿に、隣でクロードが首を傾げる。


「何だか様子がおかしかったような気がしますが、どう思いますか?」

「照れてるんじゃないのか。今日のドレスは今までで一番露出が多い」

「あらセドリック様。分かっていて選んだんですのね。少し疑っていましたのよ。本当はこういうのが好きなのかと」

「違う。が、そろそろシャルルには気が付いてもらわないと悪いからな」


さぁ、始まるぞ、とクロードを促す。


きっと今日は俺にとっても、大事な一日になるだろう。


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