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7つの大陸に7人の魔王がいる世界の話。

温泉好きが異世界トリップしたら、こうなった。

作者: 島田莉音


余り深い意味がない短編です。

なんか書いてみただけですwww








カッポーン。




目の前にいる男の人が、驚いた顔をしている。

暗灰色ダークグレーの長い髪に、紅紫色マゼンタの瞳。

見たことがないくらいに綺麗で中性的な顔。

下半身は乳白色のお湯で隠れてるけど、上半身はしなやかな筋肉がついている。


うん、すっごいイケメンだわ。


「……お前、何者だ?」

「……紫藤しどう亜里沙ありさ……日本人です……」

「いや、そういうことを聞いたんじゃないんだが……というか、ニホンジンって何人だ……」


うん、まぁそうだよね。

私もなんでこうなってるかが分からない。

えっと……さっきまで、私は温泉に入っていた。

二週間に一回行くくらいは好きで。

で、そんな私の元に子供がダイビングしてきて……後頭部にぶつかって。

温泉に沈んだから急いで起き上がったら、今。



目の前に、見たことがない……というか、ありえない色を持ってる男の人がいた。



……なんか、驚きすぎて自分が裸で男の人の前にいるのに無駄に動揺してない。

驚きがすぎると冷静になるって本当なのね。



……というか、今いる空間は完全にさっきの温泉と違うし。

真っ白な神殿みたいな建物に、中央の大きなお風呂。

さっきの温泉はサラッとしてるけどこっちは滑らかだ……。

……っていうか、こんな大衆浴場みたいな大きなお風呂を一人で使ってるって贅沢よね。


「聞いてるのか?」

「あ、ごめんなさい。余りにいい温泉だったから……」

「っ‼︎」


お?

なんか急に目がキラキラ輝き出して、子供みたいな顔になった?


「お前、温泉好きか?」

「え?まぁ……好きと言えばかなりの頻度で行く程度には」

「おぉ‼︎マジか‼︎」


………なんか、そういう喋り方すると残念感が増すなぁ……。

顔が良いから、余計に?


「いやぁ……オレの周りには温泉好きな奴なんて滅多にいないし、温泉に入り浸ってるとグチグチ文句を言われるし」

「あ、そーいうの嫌だよね。温泉ぐらいゆっくり入らせろっての」

「そう、それ‼︎それに入る回数も、仕事があるからって二ヶ月に一回に制限されてるし……遠場は駄目だと自分の城のだし。ギリギリ温泉は引いてるけど……疲れが取れん‼︎」

「うわぁ‼︎ツライ‼︎そんなのツラすぎるっ‼︎」


思わず同情して叫べば、彼は「分かってくれるか……」と嬉しそうに笑う。

なんか、見た目に反して可愛らしい人だなぁ。



というか、現状把握をしなくちゃ。


「えっと……貴方は?」

「オレか?オレはアレクセイだ」

「アレクセイさん?」

「アレクでいいぞ」

「分かったわ。ちなみに、ここはどこ?」

「ドーティム大陸の魔王城だぞ?」

「…………」


えっと、これはあれだ。



異世界転移。



今はよくありえそうなテンプレ展開。

でも、そういうのって駅のホームから落ち掛けたり。

魔法陣で召喚されたりってのが普通だと思うの。


でも……。



温泉に沈んで異世界転移するなんて、私ぐらいだと思うわ。



「……で?最初の質問に戻るがお前は何者だ?」


私は自分の身に起きたことを説明した。

温泉に入って、子供がダイビングしてきて、沈んで起きたらここにいたと。

余りにもシンプルかつ馬鹿っぽくてちょっと恥ずかしいけど……事実だから仕方ない。

話を聞き終えたアレクさんは肩を震わせて、笑っていたけどっ‼︎


「くふふっ……ご愁傷様だな」

「…………」

「はぁー…でも困ったな。そういう転移だとオレじゃあ対処できないな」

「え?」


アレクさんはこの世界の説明をしてくれた。


この世界は七つの大陸があって、大陸ごとに魔王がいる。

魔王は他の国の人と友好関係を結んでいたり、対立していたりと様々だが、この大陸は友好を結んでいる方。

で、転生者や転移者は沢山いる。

しかし、転移者はあくまでも魔法陣による召喚魔法が基本で……転移魔法陣なしで転移した場合、帰還魔法を使用することができないとか。



つまり、私は帰れないと。



「なんてこった……」

「魔法陣で召喚されてたらオレがそれを辿って帰還魔法を使ってやれたんだけどな。ごめんな?」

「いや、アレクさんが悪い訳じゃないから大丈夫。そこまで考えてくれてありがとう」


お礼をしたけど、これから私はどうしたら良いんだろう?

無一文かつ(ガチで)丸裸だから……何もできない。

そもそも私の世界の常識が通用するかも分からないし、アレクさんとは会話が成立してるけど他の言語もどうなってるか分からないし……。


なんてグタグタと考えていたら、アレクさんがハッとしたように目を見開いた。

そして、ガバッと私の肩を思いっきり掴んだ。

え?何事?


「アリサ」

「あ、はい」

「お前、今なんともなってないのか?」

「え?」

「なんかこう…身体が火照るとか、エッチな気分になるとか……」


…………こいつ、何言ってんの?


そんな感情が顔に出てる気がしたが、アレクさんはそれを見てさっきのように目をキラキラさせた。


「マジか‼︎オレの魅了チャームが効かない人間だ‼︎」

「は?」

「待てよ……なら……」

「あの、一応裸なので至近距離で向き合うのは恥ずかしいのですが」


私の声は思案モードのアレクさんには届かないようで。

そして、待つこと数十秒。

アレクさんは真剣な顔で告げた。


「取引をしよう」

「へ?」

「お前を養ってやる。代わりに、オレに温泉に行きたいという我儘を言え」

「は?」


話が理解できなくて首を傾げたら、アレクさんはにっこりと微笑んだ。


「オレの妃にお前を置けば、妃の我儘を叶えるという名目でオレは温泉に行ける。お前はオレの妃になれば、生活の心配はなくなる。どうだ?」

「……………はぁっ⁉︎」

「なんだ、嫌か?」

「いや、嫌とか以前になんで妃っ⁉︎」

「お前にオレの魅了チャームが効かないから」


つまり……結婚すれば妃としている養ってくれるし、ついでに温泉行こうって言えば、叶えてくれるってこと?

いや、何ができるかも分からない私にとってはとっても魅力的な話だけど……結婚だよ⁉︎

異世界で……結婚……えぇ……。


「まぁ、嫌だって言うなら城を出るなり、好きにすれば良いけど……その場合は、簡単に最後まで面倒を見るとか言えないからな」

「え?」

「魔物はいるし……異世界転移者ってのは魔力の質が違うから、この世界の人から見たら分かる。つまり、魔族と人間の友好関係にお前は守られない。つまり、何か起きても自己責任だ」

「……………それってつまり、死ぬ可能性がありますよってことですか?」

「そうだな。この城は魔族を雇うことになっているから、お前を雇うのは無理だし。金を渡して、人が住む街まで送ることはできるが……流石に街に行った後の安全までは保証できないだろ?そんなことをしたら、お前にずっと人をつけてなきゃいけなくなるからな」


………正論すぎて何も言えない。

そうだよね。

街まで行った後まで面倒は見てもらえないのは、当たり前。

それでも自分で仕事を見つけなきゃいけないし、この世界で身分のはっきりしない私が、雇ってもらえるかって話になる。


…………うん、お金をもらって街まで送ってくれるって言う時点で、かなり優遇してくれてるんだよね。


でも……それだけで私が生きていけるかってのは別の話な訳で。


「…………貴方の妃になります」

「お、どうした?」

「冷静に考えても私が一人で生きていける気がしなくて……なら、貴方みたいな綺麗な人を夫にして、温泉道楽した方がいいかなって」

「ぶっ……温泉道楽っ……」

「駄目?」


伺うように聞けば、彼はふわっと微笑む。

あ、すっごく綺麗な顔だ。



「勿論、喜んで受け入れさせて頂きますよ。我が妃殿」



私の手を引いて、甲に優しくキスをする。

薔薇色の瞳が私を見つめて、その口元に鋭い笑みを浮かべていて。


背筋がぞわっとした。



「《第Ⅴの魔王》アレクセイの名において。アリサ、君を妃に迎え入れよう」



…………魔王?



「いやぁ、淫魔族の魅力チャームが効かなくてよかった‼︎」





紫藤亜里沙。

異世界にて、選択を間違えたかもしれません。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 温泉好きの二人が結ばれてめでたしめでたしなところ。面白かったです。
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