表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝物の彼女  作者: 近江 由
崩壊へ~結末その1~
62/135

赦せない唯一

 

 ポタポタ

 と血が滴っていた。


「…はあ…はあ」

 ミヤビは手を振るわせて剣を握っていた。


 ライガも手を震わせて剣を握っていた。


 右手で自分の剣を握り、左手でミヤビの剣の刃を握っていた。


 寸でのところでライガはミヤビの剣を左手で握り止めた。

 だが、手のひらは斬れて血が滴った。


 今はミヤビとの力比べになっている。

 が、ライガの方が有利だ。


 ライガは体勢を立て直すとミヤビの剣をそのまま取ろうとした。

 流石にそれは、ミヤビは許してくれず、ライガの手を振りほどき距離を置かれた。


 左手の痛みに顔を歪めたが、負傷したのはライガだけではない。

 ミヤビもライガの攻撃を鎧でとはいえ受けた。

 打撲か骨にひびくらいのダメージは与えたはずだった。


「何が分からないって言うんだよ!!」

 ライガは息を整えてミヤビを見た。


 ミヤビはライガの読み通り、腹部を痛めているようで顔を歪めていた。


「ミヤビが何を言いたいのか俺はわからない!!何で俺が分かるんだよ!!」

 ライガはミヤビを見て彼女に疑問をぶつけた。


 ミヤビはライガの質問がショックだったようで、悲しそうに眉を歪めた。


「ずっと、傍にいたのに…」

 ミヤビは絞り出すように言った。


「知っている。ミヤビはマルコムと同じく同期だから…」


「違う!!」

 ミヤビは首を振った。


 彼女は、震える手で剣を持って、ライガに構えた。

「そうじゃない!!…私は…」

 ミヤビは悲痛そうに顔を歪めていた。


「何も言わずに裏切ったのが許せないのは、覚悟して…」


「違うって言っているでしょ!!」

 ミヤビは剣を振りライガに斬り付けた。


 ライガは避け、反撃の体勢を整えた。


 攻撃の状態になったままのミヤビの剣にライガは剣をぶつけてミヤビの体勢を崩した。


 ミヤビは体勢を崩したが、変わらずライガに斬りかかった。


 ライガはそれを避け、また同じように攻撃して体勢を崩した。


「私を…」

 ミヤビは体勢を無理やり整え、またライガに斬りかかった。


 キイン

 ライガは、今度は剣で受け止めたが、ヒロキのように絡めて流した。


 ミヤビは、今度は本格的に体勢を崩して、地面に膝をつけた。

「私を選んで欲しかったの!!」

 ミヤビはライガに叫んだ。


「私はライガが好きだったのに…」

 ミヤビは泣きそうな顔でライガに言った。


 ライガは彼女の告白に一瞬動きを止めた。


 ミヤビはライガを見てすぐさま剣を構え直し、横に斬り付けた。


 ライガはそれを見て上から斬りかかった。


 振り下ろすのが先か、横に切るのが先か…


「ダメ!!」

 ライガを後ろからミラが止めた。


 ライガは振り下ろす手を止めた。


 ミヤビはそれを見て顔を歪めた。


「ダメ…ライガ。殺したら…」

 ミラはライガに駆け寄り、後ろから抱き着いた。


「…何で、気付いたのよ…」

 ミヤビはミラを睨んだ。

 ミヤビは斬り付けるのをやめていた。

 彼女はこのままライガに斬り殺されようとしていたのだ。


「私の嫉妬。」

 ミラはミヤビを見て言った。


「え?」

 ライガはミラを見た。


「だって、ここでライガが彼女を殺したら、ライガは忘れられなくなるもの…それは嫌。」

 ミラはミヤビを見て言った。


 ミヤビは歯軋りをした。


「ライガは渡さない。」

 ミラはミヤビを真っすぐ見て言った。


「守られてきた存在のくせに…」

 ミヤビはミラを睨んだ。


「そう。私は守られている。今もライガに…」

 ミラはライガに抱き着く手をきつくした。


「でも、私はライガを愛している。誰よりも…あなたよりも。」

 ミラはミヤビを鋭く見た。


「…はっ」

 ミヤビは鼻で笑った。


「あなたは見ていればいい。私は、自分の目を利用してでもライガと逃げる。二人一緒にいるために。」

 ミラはミヤビに宣言するように言った。


「ミラ…」

 ライガはミラがここまで強く言葉を、自分のために言えるなんて思っていなかった。

 それは寂しいが、とても嬉しいことだった。



 


 ヒロキは完全に冷たくなっていた。

 手はどんなにさすっても体温はもう、戻ってこない。


 ジンは放心状態でヒロキの顔を撫でた。


 後ろにはアレックスがいた。

「団長…」

 彼は痛ましそうにしていた。

 そうだろう、今のジンは悲惨なものだった。


「俺を裏切らないと言っていた。」

 ジンは皮肉な笑みを浮かべて言った。


「次は俺の手を引くと、俺を助け出すと宣言したんだ。」

 ジンは肩を震わせて言った。


 アレックスはその様子をただ頷いて聞いた。


「…どんなやらかしも俺は大目に見てきた。見ろ、アレックス。…

 恐ろしいほど…美しいだろ。」

 ジンはヒロキの顔を撫でて言った。


「だが、今回は赦せないな。」

 ジンはずっと座っていた椅子から立ち上がった。


 ジンはアレックスを見た。

 彼は包帯をしていなかった。

 アレックスはジンに礼をした。


「俺はヒロキを赦さない。」

 ジンは口元を歪めて言った。


「…はい。」

 アレックスは頷いた。


「だから、ヒロキの遺志など関係ない。」

 ジンは腰につけている剣を握り、振り上げた。


「団長…」

 アレックスはジンが活動的な様子を見せてくれたことに安心したようだった。


「情報は俺に持ってこい。全てだ。皇国のやつも黒幕も全て…ぶち殺す。」

 ジンはアレックスを顎で使うように言った。


 アレックスは頷いて部屋の外に出て言った。


 アレックスが居なくなったのを確認すると、ジンはまた椅子に座り、ヒロキを見た。


「お前の遺志は関係ない。ヒロキ。」

 ジンはヒロキの髪を撫でた。


「お前を殺した者、企んだ者全て…ぶち壊してやる。皇国も帝国も一族も…そのためなら俺は手段を選ばん。」

 ジンは口を歪めて宣言した。




 



 ミラに睨まれたミヤビはしばらく黙っていたが、しばらくすると肩を震わせ


「…あはは…あはははははは」

 とミヤビは大声で笑い始めた。


「な…何よ!!」

 ミラは向きになってミヤビを睨んだ。


「はいそうですか…って聞くと思っているの?」

 ミヤビは俯いて肩を震わせて笑っていた。


「あなたの意志は求めず、私の宣言…」

 ミラが言いかけた時、ミヤビは素早く剣を握り直しミラに斬りかかった。


 カキン


 寸でのところでライガがミヤビの剣を叩き落とした。


「ライガ…」

 ミラは守ってくれたライガを申し訳なさそうに見た。


「はは…ほら。やっぱり守られているじゃない?ライガ。この子のためにあんたは…」

 ミヤビは皮肉気にミラを見て笑った。


 だが、ライガは手を震わせていた。


「ミヤビ!!」

 ライガはミヤビに怒鳴った。


 ミヤビは驚き、目を見開いた。


「それだけは…赦せない。」

 ライガは歯を食いしばり、ミヤビを見た。


「え?」


「ミラを傷つけることは…誰でも赦せない。」

 ライガはミラを抱え、ミヤビに剣を向けた。


 ミヤビは絶望した顔をした。

「…何よそれ…」


「ミヤビ。俺はお前を赦さない。」

 ライガはミヤビを睨んだ。


「…嫌よ…嫌。」

 ミヤビは首を振った。

 一心不乱に。


「裏切ったあなたが私を何で…」

 ミヤビは剣を握ったまま頭を抱えた。


 暫く首を振り、混乱したように動いていたミヤビは動きを止めた。


「…そんなの無理。」

 ミヤビはライガとミラを見た。


「ライガに憎まれるなんて…嫌。」

 ミヤビは剣を振りかざした。


 ライガはミラの目を塞いだ。


 ドス


 ミヤビの振りかざした剣は、ミヤビの腹に深く刺さった。


「が…が…は…」

 ミヤビは血を吐きながらその場に崩れ落ちた。


 ライガはミラの目を塞いだまま立ち去ろうとした。


「…白い花の…髪飾り…」

 ミヤビは息が絶え絶えの中、ライガに言った。


 ライガは振り向かず立ち止まった。


「…私にくれるのかと思った。…とっても綺麗で…」

 ミヤビはライガの方に手を伸ばした。


「…ずっと傍にいたから…選ばれると思っていた…」

 ミヤビは悲しそうに言った。


「…ミヤビ、お前とは騎士の仲間として、友人としてずっと好きだったよ。」

 ライガはやはり振り向かず言った。


「…嫌になっちゃう…」

 ミヤビは笑いながら言い、しばらくすると動かなくなった。


 ライガはミラを先にポチに乗せて、ミヤビの元に向かった。


 彼女は、苦笑するように目を細めて息絶えていた。


「…強さにひたむきなお前を尊敬していた。」

 ライガはミヤビに礼をした。


 そして、何も言わずにミラの元に向かった。



ライガ:

主人公。帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。ミラと深く愛し合っており、彼女が絡むことには若干頭に血が上りやすい。ミラと逃げる。彼女に求婚し晴れて結ばれる。父が前騎士団団長で行方不明。


ミラ:

ヒロイン。「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっていた。ライガと深く愛し合っており、彼と逃げる。晴れてライガと結ばれる。


ジン:

帝国騎士団団長。歴代最強と言われた前騎士団団長であるライガの父を決闘で破り、最年少で団長に就く。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。剣の腕はまさに帝国一と言われるほどである。王族の人間だが、王族に対して冷ややか。副団長のヒロキに精神的に依存しており、彼の死に放心状態。


マルコム(マルコム・トリ・デ・ブロック):

精鋭部隊の一員。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。国境の貴族ブロック伯爵の息子。槍使いで、顔からは想像し難いほど筋肉質で自分の力に自信を持っており誇っている。サンズに継ぐほどの力がある。普段は穏やかでわからないが、強いものを無条件で尊敬する反面、自分より弱い者に対してはその意識はかなり低い。ライガに激怒していたが、今は何か思うところがある様子。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。アランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。ライガの裏切りにそこまで怒っておらず、少しだけ好意的。兄。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。リランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。ヒロキが襲撃を受けたことを自分のせいだと責めている。ライガの裏切りにそこまで怒っておらず、少しだけ好意的。弟。


サンズ(サンズ・デ・フロレンス):

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。見た目通り力が強く、騎士団一の怪力を誇る。王都の貴族で父が公爵だが階級意識が無い騎士団を好む。文学青年でロマンチスト。先輩のアレックスと親友。精鋭では数少ない戦場経験者。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。剣の腕は他の精鋭に比べると劣るが、弓の名手。ライガに片思いをしていた。ライガの裏切りに激怒し、非常に荒れ、暴走して単独行動をとっている。


アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。ジンの代理で全体の指揮を任され、新団長として指名される。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。普段の生活態度とは違い、堅実で手堅い戦い方をする。また、派手な様子からは察せられないほどの苦労人。サンズ同様に戦場経験者。


チャーリー:

フロレンス家の執事。医者と共に市場に駆けつける。


アシ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。小刀を使う。ライガの逃亡に協力的だが、真意が測れず怪しい。ヒロキに剣で追い詰められたことや、彼の様子から何か思うところが出てきた。


イシュ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。弓を使う。襲撃の際、ミヤビに肩を射抜かれたが、サンズ並みのガタイのお陰で深手にならず、弓も引ける様子。ミヤビを追っているサンズを襲撃するなど、単独行動を助長させる。


シューラ:

隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。長い刀を使う。襲撃時、マルコムの攻撃を受けて肩と腰の筋を痛めた。彼の攻撃を真に受けたことにプライドが傷ついた様子。


モニエル・デ・ブロック(ブロック伯爵)

皇国との国境を統治する地方貴族。皇国の事情に詳しい。マルコムの父親。


レイ・タイナー:

元帝国騎士団団長。ライガの父。ジンとの決闘に敗れ団長を退いたが、歴代最強と言われるほどの剣士だった。団長時代は敵国である皇国の大臣と交流を持つなど帝国の命令から反する行動をしていた。現在行方不明。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。女性顔負けの端麗な容姿故に飾り物と陰口を言われることが多い。ジンとは付き合いが長い。流れるような剣術で他の騎士に比べて非力だが、目の良さと器用さがあり、確かな実力を持っている。皇国の元大臣の息子。一族の失脚の際、ジンとライガの父に命を助けられた。アシたちの襲撃を受けて死亡。ジンに看取られる。


コマチ:

ヒロキの母でヒロキそっくり。皇国前大臣の妻。傾国の美女と言われるほどの美貌を持っていた。ヒロキが見ているところで首を刎ねられ死亡する。現在も皇国の支配層に影響力があるらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ