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宝物の彼女  作者: 近江 由
崩壊へ~結末その1~
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波乱の朝

 

 夜が明け、朝が来た。

 疲れているはずなのに全く眠れなかった。


 疲れている日は、来て欲しくない朝なのに、今日は待ち遠しかった。


 朝には動ける。


 アランは明るくなったと思ったら飛び起きた。

 リランはまだ目をこすっている。彼の目は真っ赤だった。



「リラン。俺達も行くぞ。」

 アランはリランを軽く叩いて、身支度を始めた。


 いつもは叩き起こされる側なのだが、そんな場合じゃなかった。


 廊下に出ると、サンズとアレックスがいた。二人の目が腫れていることにアランは気付いたが、気付かないふりをした。


 そうだ。

 二人の方がアラン達よりもヒロキとの付き合いは長いのだ。


 気を遣わせてしまったなと反省したが、今はそれよりも動くことだ。


「アラン。まだ出るな。」

 サンズは念を押すためにアランを待ったようだ。


「そんな!!だって…早く皇国のやつを倒すためにライガたちを…」

 アランは縋るようにアレックスを見た。


「まずは情報整理だ。ミヤビは他の騎士が追っている。」

 アレックスは廊下の一角を指した。

 そこには険しい顔をしたマルコムがいた。

 アランは思わず顔を顰めたが、昨日マルコムが言ったことは事実だと思っている。

 だからアランもリランもこんなにマルコムに対して苦い感情を覚えているのだ。


「昨日のことは謝らないよ。」

 マルコムはアランを見て言った。


「…俺もだ。」

 アランは思った以上に小さい声になってしまったがマルコムに言った。


「ならいい。」

 マルコムはそれ以上アランに興味が無いようにアレックスとサンズを見た。


「リランはまだか?」

 サンズはアランに訊いた。


「もうすぐで来ると思います…リランは状況が掴めないままこんなことになったと思っているので…昨日はずっと混乱していました。」

 アランはヒロキの死に対してリランがただ茫然として実感できていないことを思い出した。

 彼はただ、漠然とした喪失感を覚えているのだ。


「そうか…団長は、まだヒロキさんの傍にいる。」

 アレックスは悲痛そうな顔をした。


「…なるべく団長に伝えないで欲しいですので、そのままでいいです。」

 マルコムはヒロキとジンがいる部屋を見て言った。


 アレックスとサンズは眉を顰めてマルコムを見た。


 ガチャ


「あ…」

 部屋からリランが出てきた。

 全員が集合しているのに気付いて少し気まずそうな顔をした。

 昨日の今日だからマルコムと気まずいのだろう。


「早くしな。」

 マルコムはリランを顎で呼んだ。


 リランは不満そうにしながらマルコムたちの元に来た。


「じゃあ、情報整理としよう。」

 アレックスはアランとリランを見た。


「君たちが一番情報を持っている。」

 マルコムもアランとリランを見た。


 アランは少し不満そうにマルコムを見たが、彼の目が冷たいだけで言ことに気付いて表情を変えた。


「俺は…ライガに会った。ヒロキさんはライガと闘うって…」

 アランは二人の間のことや、ヒロキがお宝様と話したことを言った。


 アレックスとマルコムとサンズは険しい顔をしていた。


「団長に…マルコムたちには言うなって言われていた。」

 アランは最後に付け足すように言った。


「…わかった。リランは…?昨日はライガの父親と言っていたけど」

 マルコムはリランを見た。


 リランも不満そうにマルコムを見たが、アランが話した手前自分が話さないということはせず、アランと同じように真面目な表情になった。


「…マルコムにも言った通り、追跡の途中で皇国のやつに襲われたのをブロック伯爵に助けられた。」

 リランは助けられたことや皇国の状況、ブロック伯爵から聞いたライガの父の話と帝国上層部がダメだと言っていた話をした。


「アレックスさん、サンズさん。ヒロキさんの死は…皇国の連中にとっても予想外だと思います。」

 マルコムは二人を見た。


 サンズもマルコムに頷いていた。

「ああ。団長に聞いたら、ヒロキさんは皇国で利用できる存在だったらしい。その証拠に皇国のやつらはヒロキさんを運び出そうとしていたし、手当ても最低限されていた。」

 サンズはジンから聞いた話をした。


「ただし、彼に関してはずさんだ。もし利用する気なら…捕まえるタイミングがあったはずだ。」

 アレックスはマルコムに問いかけるように言った。


「そう。ヒロキさんは現場の人間が気付いた。ということは、雇い主はヒロキさんを察知していない。」

 マルコムは頷いてアレックスを見た。


「お前、雇い主は帝国内にいると思っているんだな?それは間違いないと…」

 サンズはマルコムに確認するように訊いた。


「はい。…そして、皇国にも詳しい…一族のことも知っている人物だと」


 アレックスは困ったように首を傾げた。

「…今それに該当するのは、団長だ。だが、団長はターゲットだ。」


「団長のはずがありませんが、正直ヒロキさんのことが無ければ団長と考えていたかもしれないですが。」

 マルコムは首を振って険しい顔をした。


「…あの、ライガのお父さんって、今はどこにいるんですか?」

 リランは何かに気付いたように顔を上げた。


 アレックスとサンズは苦い顔をした。

 マルコムは興味深そうに二人を見た。


「…確かに、前団長は…該当する…けど…。」

 サンズは何か腑に落ちないようだ。


「絶対にありえない」

 アレックスは首を振って断言した。


「…」

 マルコムは二人の様子を見ながら険しい顔をしていた。




 


 ライガは向き合う騎士を見て苦い顔をした。

 ミヤビとは手合わせをしたことは無いのだ。

 それに、彼女はマルコムと同様ライガの同期にあたる。


 ミヤビは変わらず笑顔だった。


「ミラ…ポチと下がってて、木の影に…」

 ライガはミラをなるべきミヤビと顔を合わせさせないようにしようと直感的に思った。


「わ…わかった。」

 ミラはミヤビの方を一瞬見て頷いて、木の方にポチと向かった。


「やっぱり、ここの洞窟に来たんだね。」

 ミヤビはライガが向かおうとしていた洞窟の方を顎で指して言った。


「ミヤビ…逃がしてくれないか?」

 ライガはなるべく争いは避けたかった。


「ここの仕事、意外にチョロかったもんね。ライガが最後に盗賊を捕まえたんだよね。」

 ミヤビは懐かしむように言った。


「ミヤビ…頼む。」

 ライガは懇願するように言った。


「私が、ライガのサポートをして…ね。」

 ミヤビはライガを見て微笑んだ。


「!?」

 ライガは本能的に剣を構えた。


「なのに、なんで?命を預け合った間なのに、なんでこいつ選んだの?」

 ミヤビはミラを指して言った。


「こいつ…?ミラか?」

 ライガはミラのことを「こいつ」と言われたことに怒りを感じた。


「何でって…聞いても教えてくれないか…」

 ミヤビは腰の剣を抜いた。


「でも、私たちはこれで会話ができるよね…そいつにはできないけどね。」

 ミヤビは剣を構えた。


 彼女の構えはアレックスに似ていた。


「ミラ。なるべく出てこないで。」

 ライガはミヤビを睨んだ。


「あはははは」

 ミヤビはライガたちを見て笑った。


 そして、ミラの方を見て不敵に微笑んだ。


「あんたは出てこれないから。安心して。」

 ミヤビはミラに吐き捨てるように言うとライガに向かった。


 キイイイン

 ライガは、剣を横にしてミヤビの攻撃を受け止めた。


「ねえ。ライガ。」

 ミヤビはライガに微笑みかけた。



ライガ:

主人公。帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。ミラと深く愛し合っており、彼女が絡むことには若干頭に血が上りやすい。ミラと逃げる。彼女に求婚し晴れて結ばれる。父が前騎士団団長で行方不明。


ミラ:

ヒロイン。「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっていた。ライガと深く愛し合っており、彼と逃げる。晴れてライガと結ばれる。


ジン:

帝国騎士団団長。歴代最強と言われた前騎士団団長であるライガの父を決闘で破り、最年少で団長に就く。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。剣の腕はまさに帝国一と言われるほどである。王族の人間だが、王族に対して冷ややか。副団長のヒロキに精神的に依存しており、彼の死に放心状態。


マルコム(マルコム・トリ・デ・ブロック):

精鋭部隊の一員。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。国境の貴族ブロック伯爵の息子。槍使いで、顔からは想像し難いほど筋肉質で自分の力に自信を持っており誇っている。サンズに継ぐほどの力がある。普段は穏やかでわからないが、強いものを無条件で尊敬する反面、自分より弱い者に対してはその意識はかなり低い。ライガに激怒していたが、今は何か思うところがある様子。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。アランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。ライガの裏切りにそこまで怒っておらず、少しだけ好意的。兄。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。リランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。ヒロキが襲撃を受けたことを自分のせいだと責めている。ライガの裏切りにそこまで怒っておらず、少しだけ好意的。弟。


サンズ(サンズ・デ・フロレンス):

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。見た目通り力が強く、騎士団一の怪力を誇る。王都の貴族で父が公爵だが階級意識が無い騎士団を好む。文学青年でロマンチスト。先輩のアレックスと親友。精鋭では数少ない戦場経験者。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。剣の腕は他の精鋭に比べると劣るが、弓の名手。ライガに片思いをしていた。ライガの裏切りに激怒し、非常に荒れ、暴走して単独行動をとっている。


アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。ジンの代理で全体の指揮を任され、新団長として指名される。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。普段の生活態度とは違い、堅実で手堅い戦い方をする。また、派手な様子からは察せられないほどの苦労人。サンズ同様に戦場経験者。


チャーリー:

フロレンス家の執事。医者と共に市場に駆けつける。


アシ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。小刀を使う。ライガの逃亡に協力的だが、真意が測れず怪しい。ヒロキに剣で追い詰められたことや、彼の様子から何か思うところが出てきた。


イシュ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。弓を使う。襲撃の際、ミヤビに肩を射抜かれたが、サンズ並みのガタイのお陰で深手にならず、弓も引ける様子。ミヤビを追っているサンズを襲撃するなど、単独行動を助長させる。


シューラ:

隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。長い刀を使う。襲撃時、マルコムの攻撃を受けて肩と腰の筋を痛めた。彼の攻撃を真に受けたことにプライドが傷ついた様子。


モニエル・デ・ブロック(ブロック伯爵)

皇国との国境を統治する地方貴族。皇国の事情に詳しい。マルコムの父親。


レイ・タイナー:

元帝国騎士団団長。ライガの父。ジンとの決闘に敗れ団長を退いたが、歴代最強と言われるほどの剣士だった。団長時代は敵国である皇国の大臣と交流を持つなど帝国の命令から反する行動をしていた。現在行方不明。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。女性顔負けの端麗な容姿故に飾り物と陰口を言われることが多い。ジンとは付き合いが長い。流れるような剣術で他の騎士に比べて非力だが、目の良さと器用さがあり、確かな実力を持っている。皇国の元大臣の息子。一族の失脚の際、ジンとライガの父に命を助けられた。アシたちの襲撃を受けて死亡。ジンに看取られる。


コマチ:

ヒロキの母でヒロキそっくり。皇国前大臣の妻。傾国の美女と言われるほどの美貌を持っていた。ヒロキが見ているところで首を刎ねられ死亡する。現在も皇国の支配層に影響力があるらしい。



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