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宝物の彼女  作者: 近江 由
逃避へ~結末その1~
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意図と目的

 

 アランは立ち上がって、ヒロキの肩を掴んだ。

「ちょっと!!何を考えているんですか?」

 アランも予想していない展開のようでひたすら声を裏返して言った。


「…ヒロキさんと…ですか。」

 ライガは警戒するようにヒロキを見た。


「そうだ。俺と闘え。」

 ヒロキはゆっくりと剣を抜いて、流れるようにライガに刃を向けた。


「…追跡としてですか?」

 ライガはミラを庇うように立ちあがり、ヒロキを睨んだ。


「ヒロキさん!!団長から言われたこと忘れたんですか?無茶をするなって…」

 アランはヒロキの横で窘めるように言った。


「止めたければ、ジンでも呼び出せ。俺はライガと闘う。」

 ヒロキは横目で鋭くアランを見た。


「何を…ヒロキさん!!いいじゃないですか。闘わなくて済むなら…」

 アランはヒロキの腕を引いた。

 が、ヒロキはそれを払った。


「そうはいかない…」

 ヒロキはライガを見た。

「ライガ。お前皇国の者とどの程度の交流がある?」

 ヒロキは眉を吊り上げて訊いた。少し冷淡な口調だった。


「馬の用意や逃走のために馬を放したり…協力してくれました。俺は…最初に警備の場所を流しました。それ以降は向こうが勝手にやってくれています。」

 ライガはヒロキを睨んで言った。


 アランは少し険しい顔をした。


「アラン。お前の知りたいライガと皇国の繋がりはわかった。俺はライガと闘うまでここを動くことも、ライガを逃がすつもりもない。」

 ヒロキはライガに剣を構えたまま言った。


「…ライガ。ヒロキさんを殺すなよ。」

 アランはライガを睨んだ。


「…ヒロキさん次第だ。」

 ライガはヒロキを睨んだまま言った。


「団長を呼びに行く…言った通り、マルコムたちよりも先に団長に知らせるよう言われているからな。わかったか?ライガ。」

 アランは、向き合うライガとヒロキを見て言った。


 アランの言葉に二人は目をお互い逸らさず黙っていた。


 アランは険しい顔をしたが、仕方なさそうに小屋から急いで出て行った。


「馬、一頭だけでしたけど…いいんですか?」

 ライガは二人が連れてきた馬が一頭だけだったことを思い出した。


「言っただろ?闘うまで動かないってな。」

 ヒロキは口元に笑みを浮かべた。


「ライガ…」

 ミラは不安そうにライガを見た。


「…もう一度聞きます。追跡ですか?闘う理由は…」

 ライガは鋭い目を向けてヒロキを観察するように見た。


 ヒロキは首をゆっくり振った。

「違う。お前に頼みがあるからだ。」

 彼はライガを真っすぐ見た。


 どうやら、アランがいたら話しにくいことのようだ。


「一体…何ですか?」

 ライガもヒロキと同じく剣を抜いて、ヒロキに刃を向けた。


「お前に…ジンを倒してほしい。」

 ヒロキはライガを見て言った。


「ジンって…団長ですか?」

 ライガは声がひっくり返りそうになるほど驚いた。


「そうだ。」

 ヒロキは淡々と頷いた。


「わかりません。どうして…」

 ライガはヒロキの意図が分からなかった。


「俺にはできないからだ。」

 ヒロキは少し悲しそうに言った。


「そりゃあ、誰だってできないですよ!!…ヒロキさんでなくても…」

 ライガはヒロキを窘めるように言った。


「違う…あいつを助けることは…」

 ヒロキは俯いて、少し投げやりな様子で呟いた。


「助ける…?」

 ライガはヒロキの普通じゃない様子に、少し心配になった。


「俺がジンの対策を教えてやる。」

 ヒロキはライガを見て言った。


 



 市場の一角にある小屋に滞在しているアシ、イシュ、シューラは慎重に外を見渡してから小屋を出た。


「帝国騎士団は、いないらしいね。」

 シューラは安心したように伸びをした。


「えぐい話は聞いたけどな。あの槍の騎士。心身ともに要注意人物だ。」

 アシは苦い顔をした。


「鍛えていなかったら、俺はあの女の矢で動けないままだったぜ。あーあ。鍛えていてよかったなー。」

 イシュはシューラの様子を見て言った。


「うるさい筋肉馬鹿。僕はね、繊細なんだよ。」

 シューラはイシュを横目で睨んで言った。


「といっても、イシュは肩に矢が刺さっていたんだ。無理はするな。」

 アシは肩を押さえるイシュを心配そうに見て言った。


「大丈夫だ。幸い深くないし、いつもほどは引けないが、矢は射れる。」

 イシュは肩を叩いて言った。


「僕はまだ無理だよ。変に捻ったから、繊細な戦い方をする身としては、精度が落ちるね。」

 シューラは肩と腰を抑えて、困ったように眉を寄せて言った。


「じゃあ、俺とアシが様子を見に行くとするか。」

 イシュはアシの肩を叩いて言った。


「うまく潰し合ってくれると思う?君が会った騎士たちとライガ。二人ともライガにやられているんじゃないの?」

 シューラは冷ややかな笑みを浮かべて言った。


「精鋭は厄介と想定しておくのが一番だ。ライガは殺すまではやらないと思うし、お宝様を殺すような馬鹿をやる精鋭とも思えなかったから、大丈夫だろ。うまくいけば鑑目だけでなく手土産も手に入る。俺たちは帝国も皇国も動かせるほどのものを得られる…かもしれないんだ。」

 アシはシューラを宥めるように言った。


「手土産ね…まあ、両方とも皇帝陛下は喜ぶだろうな。」

 シューラは皮肉気に笑った。


「そう冷ややかに言うな。俺の矢を弾いただけでも相当なはずだから、俺は油断すべきだと思う。」

 イシュもシューラを宥めるように言った。


「僕は別に人形が弱いとか言っているわけでないんだよ。ただ、今はイラついているだけなんだ。」

 シューラは肩を押さえて言った。


「あれは仕方なかった。お前の負傷は…」

 アシはシューラを慰めるように肩を叩いた。


「仕方なくない。視界に入っていたんだ。後ろから射られるのとはわけが違う。…そして、僕は視界に入っていて、対策を出来たのに、察知をしていなかった。人形の相手をしていたからもあるけど…」

 シューラはどうやらマルコムから受けた攻撃のことについて言っているようだ。


「リベンジしたいなら…今度、雇い主に頼めばいいだろう。」

 イシュもシューラを慰めるように言った。


「…ふん。まあ、せいぜい二人はかわいこちゃん二人を連れて来るんだね。」

 シューラは慰められたことによりさらにむくれて言った。


「じゃあ、俺たちは行くから、お前は待ってろ。帝国騎士の特に槍には気をつけろ。今はまだお前は全快でないからな。」

 アシはシューラの肩を叩くと、イシュをつれて市場から出て行った。


 二人の背中を見てシューラは溜息をついた。


「わかっているよ。」

 シューラは変わらず拗ねたように呟いた。


 市場を歩き、少し大通りから逸れたところにある小屋を見てシューラは顔を顰めた。

 小屋の前には数人の女性が困ったように立っていた。


「…マルコム・トリ・デ・ブロックか…覚えてろ。」

 シューラは小屋を見て憎々しそうに、吐き捨てるように言った。




ライガ:

主人公。帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。ミラと想い合っており、彼女が絡むことには若干頭に血が上りやすい。ミラと逃げる。彼女に求婚し晴れて結ばれる。父が前騎士団団長で行方不明。


ミラ:

ヒロイン。「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっていた。ライガと思い合っており、彼と逃げる。晴れてライガと結ばれる。


ジン:

帝国騎士団団長。歴代最強と言われた前騎士団団長であるライガの父を決闘で破り、最年少で団長に就く。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。剣の腕はまさに帝国一と言われるほどである。王族の人間だが、王族に対して冷ややか。団長から退く決意をする。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。ジンとは付き合いが長く、妖しい間柄。流れるような剣術で他の騎士に比べて非力だが、目の良さと器用さがあり、確かな実力を持っている。皇国の元大臣の息子。前団長に拾われた。ジンと共に騎士団から退く決意をする。


マルコム:

精鋭部隊の一員。穏やかな青年。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。国境の貴族ブロック伯爵の息子。槍使いで、顔からは想像し難いほど筋肉質で自分の力に自信を持っており誇っている。サンズに継ぐほどの力がある。普段は穏やかでわからないが、強いものを無条件で尊敬する反面、自分より弱い者に対してはその意識はかなり低い。ライガの裏切りに激怒し、非常に荒れている。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。剣の腕は他の精鋭に比べると劣るが、弓の名手。ライガに何か想いがある。ライガの裏切りに激怒し、非常に荒れている。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。リランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。ライガの裏切りにそこまで怒っておらず、少しだけ好意的。弟。


サンズ:

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。見た目通り力が強く、騎士団一の怪力を誇る。貴族の出。精鋭では数少ない戦場経験者。ミヤビとマルコムを抑えるため行動を共にする。


アシ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。小刀を使う。ライガの逃亡に協力的だが、真意が測れず怪しい。


イシュ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。弓を使う。襲撃の際、ミヤビに肩を射抜かれた。


シューラ:

隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。長い刀を使う。襲撃時、マルコムの攻撃を受けて肩と腰の筋を痛めた。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。アランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。式典の乱入者の追跡を任される。兄。


アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。ジンの代理で全体の指揮を任され、新団長として指名される。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。普段の生活態度とは違い、堅実で手堅い戦い方をする。サンズ同様に戦場経験者。他の精鋭とは別に王都に残る。


モニエル・デ・ブロック(ブロック伯爵)

皇国との国境を統治する地方貴族。皇国の事情に詳しい。マルコムの父親。


コマチ:

ヒロキの母。皇国前大臣の妻。傾国の美女と言われるほどの美貌を持っていた。ヒロキが見ているところで首を刎ねられ死亡する。現在も皇国の支配層に影響力があるらしい。


レイ・タイナー:

元帝国騎士団団長。ライガの父。ジンとの決闘に敗れ団長を退いたが、歴代最強と言われるほどの剣士だった。団長時代は敵国である皇国の大臣と交流を持つなど帝国の命令から反する行動をしていた。現在行方不明。


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