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宝物の彼女  作者: 近江 由
逃避へ~結末その1~
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定まる矛先

 

 王城前の広場が見れる建物の屋上では、イシュが弓を構えていた。


「しかし、邪魔くさい騎士たちだな。精鋭は戦っているのに…」

 イシュは狙いをジンに定めようとしていたが、周りに騎士が多すぎで狙えずにいた。


「作戦は次の段階か。」

 イシュは諦めたように言うと弓を別方向に向けた。


 ヒュン

 なじみ深い風切り音が響いた。


 ザッ

「ぐあ!!」

 どこからか飛んできた矢がイシュの肩に刺さった。


「どこだ。…あの女か。」

 イシュは王城前の広場にいる弓を構えた女の騎士を見つけて舌打ちをした。


 場所をずらし、アシとシューラの周りを弓で狙い、放った。


 どうやら二人の撤退を助けるようだ。


 ガッ


 イシュの後ろから物音が聞こえた。


 慌てて振り返ると、屈強そうな騎士とまだ少年といえる年齢の騎士がいた。


 ゴン

 屈強そうな騎士がイシュに斬りかかった。

 いや、斬ると言うよりかは殴りかかるような剣筋だった。


 イシュはどうにか避けたが、衝撃で建物にひびが入った。


「よく避けたな。」

 屈強そうな騎士はイシュの動きを見て不敵に笑った。


「存在感がありすぎるからな。帝国騎士さんよ。」

 イシュは体勢を立て直すと、どう撤退するか考えた。


 二人は帝国騎士でも精鋭だろう。身に着ける鎧が式典用だ。


 ヒュン


 また風切り音が響いた。


 イシュは今度は避けれた。


 先ほど食らった矢の傷と二人の精鋭、そして矢を考えると選ぶことは一つだ。


「またな。精鋭たち。」

 イシュは二人の騎士を見ると、建物から飛び降りた。





 サンズは慌てて飛び降りた男を追おうとした。


 だが、下を見ると、別の建物に飛び移って逃げたようだ。


「…くそ!!」

 サンズは思わず建物を殴りつけた。


「…行きましょう。」

 サンズの様子を見ていたアランが彼の肩を叩いて言った。


「…ライガを逃がした上に…襲撃犯も逃がすなんてな。」

 サンズは顔を歪めて言った。


「ライガは、何であんなことを…」

 アランはまだライガの行動に対して混乱しているようだ。


「…知るかよ。」

 サンズはアランの頭を軽く叩いた。




 飛んでいた矢をさばいているうちにシューラとアシは王都に飛び込んだ。


「待て!!」

 マルコムも続いて飛び込もうとした。


「止めろ!!市民を巻き添えにする気か!?」

 アレックスが彼の前に立ちはだかった。


 アレックスは近くにいたリランに何やら視線を送った。

 リランを頷いて王都に飛び込んだ。


「何で俺を止めるのですか?…追わないと。あいつ等捕まえて吐かせて…ぶっ殺して」

 マルコムはアレックスを睨みつけた。


 バチン

「今のお前は追うな!!冷静になれ!!」

 アレックスはマルコムの頬を叩いた。


「冷静…?見てませんでしたか?さっきのこと」

 マルコムは叩かれても顔をアレックスに向けて叫んだ。


「見たならわかるはずでしょ?どう見てもあれは協力してますよ!!わかってんのか?お前!!」

 マルコムは唾を飛ばしながらアレックスに叫び続けた。


「だから、今のお前は追うなと言っている。」

 マルコムの後ろにはジンが立っていた。


「仲間が裏切った。その状況で協力者を追うなと?」

 マルコムは後ろにいたジンを睨みつけた。


「…鏡を見ろ。」

 ジンはマルコムの様子を見て溜息をついた。


「…見ても俺は変わりませんよ。…ぶっ殺すまでは…」

 マルコムは吐き捨てるように言うと、近くの騎士に当たり散らすように槍を押し付けた。


 マルコムの様子を見てアレックスは苦い顔をした。


「お前だって、あいつと同じように腸煮えくりかえっているだろうに。よく冷静でいてくれるな。」

 ジンはアレックスの肩を叩いた。


 アレックスは周りを見渡してジンの傍に寄った。


「…団長は、ライガがお宝様を連れて逃げようとしていること知っていましたよね。」

 アレックスは周りに聞かれないように囁いた。


「…悲劇を見たからだ。」

 ジンはそれだけ言うとアレックスから離れた。


「団長…」


「…お前は王都に残れ。必要な人材だ。」

 ジンはそう言うと王城に入って行った。





 ザッザッザ


 王都の外の草原を馬が駆ける。

 アシには、ライガに馬を差し向けてもらうだけでなく、追って来られないように、馬を全て放してもらった。


「これが…そとの世界?」

 ミラは一面に広がる草原を見て目を輝かせた。


「そうだ。ミラは小さい時しか王都の外にいなかったから覚えていないかもしれないけど、木が沢山あるところも地面が高くなっている山もある。」

 ライガは自分にしがみ付いて周りを見るミラに優しく微笑んだ。


「私、ライガとなら山に籠って手を泥だらけにする生活でも構わない。冷たいお水で指が痛くなっても大丈夫。」

 ミラはライガに笑った。


 それはとても幸せそうで、それと同時に悲しそうだった。


「どうした?ミラ。」

 彼女の表情の中にある曇りに気付いてライガは馬の速度を落としてミラにゆっくりと訊いた。


 ミラはライガに気を遣うように上目遣いで見た。

「ミラ。俺は嘘をつかないでいるのに、君は隠すのか?」

 ライガは少し意地の悪いいい方と分かっていてもミラを問い詰めずにはいられなかった。


「…ライガ、仲間にお別れ言っていたよね。…私、自分のことしか考えていなくて、ライガに手を引かれたら幸せだって…でも、それでライガはあんなに悲しそうにお別れを言った。」

 ミラは俯いていた。


「…そんなこと。」

 ライガは確かに仲間との別れは悲しく苦しかった。


 それは考えている。

 それを全て考えてミラと逃げることを選んだ。


「もうそんなこと言うな。」

 ライガは思ったよりも強い口調になって驚いたが、仕方ない。


 ミラは驚いてライガを見た。


「考えて、全て考えてミラを選んだ。だから、ミラも俺のことだけ考えてくれよ。」

 ライガはミラの目を見て言った。


 馬は走り続けている。


 ライガは自分の恰好が偉く目立つことを考えて、鎧を脱ぎ捨てながら馬を走らせた。

 国からの支給品だが気にすることは無い。

 あんな豪勢で無駄な祭典を開く国だ。


 ただ、下だけは馬に乗りながらでは脱げない。

「ライガ。不格好。」

 ミラはライガの恰好を見て笑った。


「かっこいい騎士の姿じゃなくて悪いね。」

 ライガは口を尖らせて拗ねるように言った。


「そんなことない。ライガはどんな格好でもいい。ライガだから。」

 ミラは目を細めてライガを見た。


「…幸せだ。」

 ミラの目を見たせいか、思ったことを言ってしまった。


「私も、幸せ。」

 ミラは笑顔で言った。



ライガ:

主人公。帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。ミラと想い合っており、彼女が絡むことには若干頭に血が上りやすい。ミラと逃げることを決意した。父が前騎士団団長で行方不明。


ミラ:

ヒロイン。「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっている。ライガと思い合っており、彼と逃げることを決意した。


ジン:

帝国騎士団団長。前騎士団団長であるライガの父を決闘で破り、最年少で団長に就く。精鋭部隊の隊長でもある。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。剣の腕はまさに帝国一と言われるほどであり、酒場の喧嘩も強い。王族の人間だが、王族に対して冷ややか。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。全体的に細長い印象のある顔の造りをしている。ジンが気を許している数少ない人物。流れるような剣術で他の騎士に比べて非力だが、目の良さと器用さがあり、確かな実力を持っている。元皇国の人間。前団長に拾われた。


マルコム:

精鋭部隊の一員。穏やかな青年。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。地方貴族の出。槍使いで、顔からは想像し難いほど筋肉質で自分の力に自信を持っており誇っている。サンズに継ぐほどの力がある。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。剣の腕は他の精鋭に比べると劣るが、弓の名手。ライガに何か想いがある。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。リランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。弟。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。アランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。兄。


サンズ:

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。見た目通り力が強く、騎士団一の怪力を誇る。貴族の出。精鋭では数少ない戦場経験者。



アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。ジンの代理で全体の指揮を任される。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。普段の生活態度とは違い、堅実で手堅い戦い方をする。サンズ同様に戦場経験者。




アシ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。小刀を使う。


イシュ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。弓を使う。


シューラ:

隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。長い刀を使う。



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