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宝物の彼女  作者: 近江 由
逃避へ~結末その1~
27/135

裏切りの完成

 

 ガキン


 金属が何かとぶつかる音が響いた。


 そして


 カタン


 と弾かれた矢が広場に落ちた。


 息切れをしたヒロキが王族の席の前に立っていた。

 どうやら彼が王族の席に到達する前に弾いたようだ。


「キャアアア」


 矢が放たれたことに式典はパニックになった。


「騎士!!何をやっている!!」

 王族の誰かが怒鳴った。


 怒鳴った王族の肩をジンが掴んだ。

「逃げろ。」

 短く言うと、他の王族も立たせた。


 ジンはそのまま近くにいるヒロキの元に向かった。

「無理するな。俺らも下がるぞ。」

 ヒロキの肩を叩いた。


「あんたは先に下がれ。剣が無いとあんたでも苦しいでしょう。」

 ヒロキはジンの手を払った。



「全員逃げろ!!」

 アレックスが叫び、精鋭以外の騎士は避難指示に移った。


 サンズとリランとアランが構え始めた。


 ガタタタン


「誰か!!その馬を止めろ!!」

 どこかで騎士の声がした。


 どうやら暴走馬が祭典の会場に入り込んだようだ。


「嘘だろ!?こんな時に馬だと?」

 サンズが馬の方に走り出した。


「自分が行きます!!」

 ライガはサンズを押しのけて走り出した。




「王都の建物はチェックしてないのかよ!!」

 マルコムは舌打ち交じりに叫んだ。


「ダメよ!!マルコム。私たちはここを離れられないのよ!!」

 ミヤビは走り出そうとしたマルコムを止めた。


 苦い顔をして騎士たちの動きを見守るミヤビとマルコムの後ろでは、白い服の男達が何やら話し合っていた。

 そして


「お宝様。早く下がりましょう。」

 男の一人がミラの肩を掴んだ。


「おい。下がるときは俺たちが付くって…」

 マルコムが少し苛立ったのか、男に食いついた。


「たかが騎士が下がれ。こっちの方が優先だ。」

 男はマルコムに威圧するように言った。


「たかが?」

 マルコムはこめかみに血管を浮かせて顔を歪めた。


 ガタン

 ドカ

 何かが突き飛ばされた音がした。


「そいつを止めろ!!」

 誰かの声がして、ミヤビとマルコムは声の方を見た。


「え?」


 ドカ

 止める他の騎士たちを、馬が突き飛ばしながら進んでいた。


 そして、それに乗っているのは


「「ライガ!?」」

 マルコムとミヤビは驚いて構えを解いてしまった。


 その隙に二人の間を馬が抜けた。


 白い服の男達が慌てたようにお宝様の肩を掴み下がらせようとした。


 馬に乗ったライガはそんな男達を一瞬でなぎ倒した。


「がああ」

 男達が倒されてから、マルコムとミヤビは我に返り慌てて構えた。


 ただ、二人はまだ混乱している。


「ミラ!!」

 ライガが叫んで、馬に乗ったまま手を伸ばした。


 その声に、お宝様であるミラが立ち上がった。


「ライガ!!」

 彼女は目を輝かせていた。



 ライガがミラの手を取り、抱き上げた。


 彼女を完全に乗せると、抱きかかえるようにして馬を走らせた。


 ライガたちはそのまま王都に出る王城の門に向かった。


「…お、おい。…ふざけんなよ!!」

 マルコムは呆然としていたが、表情を変えてライガに叫んだ。


「え…ライガ?」

 ミヤビは呆然としている。


「おい!!ミヤビ。…クソ。使えねー。」

 マルコムはミヤビの肩を揺らして反応が無いのを見て舌打ちし、ライガの進んで方向に走り出した。


「ライガを止めろ!!」

 マルコムは広場に響くほどの大声で言った。


 アレックスやサンズも事態に気付いたのか慌てて剣を構えて馬の乗ったライガに向かった。




 ミラはライガにしっかりと抱き着いていた。

「ミラ、飛ばすから、しっかりと捕まっていて。」

 ライガは腕の中にいるミラに優しく言った。


「絶対に、離れないから大丈夫。」

 ミラはライガを見て頷いた。



 凄い形相をしたアレックスやサンズが向かって来た。


 だが、ここで下手に攻撃できないほどの勢いをつけてライガは馬を走らせた。


 ミラは必死にライガに捕まっている。

 ライガもミラを絶対に放さないように体中を緊張させていた。


 馬で走ると周りの景色が過去を回想するように過ぎ去っていく。

 突進する馬を皆が避けていく。


 正面に赤と白の服のヒロキが見えたが、近くにいたジンが素早く彼を退かせた。


 前方にはアランとリランの双子がいる。


 最初は二人とも構えていたが、一向に勢いの減らないライガたちに慌てて避けた。


 精鋭は全員振り切った。

 これで、完全な裏切りと別れだ。



「クソ。おい!!ライガライガ!!」

 マルコムが走って追いかけて来る。だが、いくら彼でも馬に追い付けるはずがない。


「ライガ!!」

 アレックスが叫んだのが聞こえた。


「ライガ!!」

 サンズが叫んだのが聞こえた。


「「ライガ!!」」

 リランとアランが叫んだのが聞こえた。


「…みんな。さよなら。」

 ライガは誰に聞かれるわけでもないのに、別れの言葉を口にした。



ライガ:

帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。ミラと想い合っており、彼女と逃げることを決意した。父が前騎士団団長。


ミラ:

「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっている。ライガと思い合っており、彼と逃げることを決意した。


ジン:

帝国騎士団団長。最年少で団長に就く。精鋭部隊の隊長でもある。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。王族の人間。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。全体的に細長い印象のある顔の造りをしている。ジンが気を許している数少ない人物。元皇国の人間。前団長に拾われた。


マルコム:

精鋭部隊の一員。穏やかな青年。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。地方貴族の出。槍使いで、顔からは想像し難いほど筋肉質で、サンズに継ぐほどの力がある。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。ライガに何か想いがある。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。リランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。弟。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。アランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。兄。


サンズ:

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。見た目通り力が強く、騎士団一の怪力を誇る。貴族の出。精鋭では数少ない戦場経験者。



アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。普段の生活態度とは違い、堅実で手堅い戦い方をする。サンズ同様に戦場経験者。




アシ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。


イシュ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。


シューラ:

隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。



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