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宝物の彼女  作者: 近江 由
逃避へ~結末その1~
23/135

仲間との夜


 逃げると決めると、仲間との日々は貴重に思えてくる。

 一日一日が、もう戻らないのだ。

 少しでも長く彼らと仲間でいたいと思いながらも、一刻も早くミラと一緒になりたいと思う両立することのない思いが湧いてくる。


「飲みに行こうぜ。」

 詰め所で剣と鎧の整備をしているところに、ヒロキがやってきた。


「ヒロキさん。珍しいですね。」

 マルコムが驚いたようにヒロキを見た。


「いいだろ。お前らは全員参加な。」

 ヒロキはマルコム、双子、ミヤビ、アレックス、サンズを指した。


 そして


「お前もだからな。ライガ。」

 ヒロキはライガを見て言った。


「…は、はい。」

 ライガは何故かわからないが、姿勢を正して返事をした。


「でもいつもならヒロキさんは自分から誘うことないですよね。俺らが誘っても、団長と飲んでいて、来ない時が多いですよね。」

 サンズは何やら含みを持たせたような言い方をしていた。


「そう言うなよ。お前の言う通り、いつも包帯の変態野郎と飲んでいるんだ。たまには可愛い部下と飲みたいと思ってもいいだろ?」

 ヒロキは自分よりも背の高いアレックスの頭を撫でた。


「俺は包帯の変態野郎とは言っていないです。」

 サンズは訂正するように言った。


「じゃあ、ヒロキさんのおごりで。」

 アレックスはしめたという表情をしていた。


「いい財布がいる。」

 ヒロキはにやりと笑った。


「…まさか、ヒロキさん。」

 マルコムは彼のやろうとしていることに気付いたのか、顔を青くした。


「え?何する気なの?」

 ミヤビはマルコムの表情を見て怯え始めた。


「団長!!」

 ヒロキは詰め所の別の場所で、他の団員と話しているジンを呼んだ。



「…お前、今俺を財布と言ったな?」

 ジンは聞こえていたようで、多少の青筋を立てていた。


 彼と話していた団員は顔が真っ青だった。


「ヒロキさん。まさか…おい、嘘だろ?」

 サンズの顔がどんどん青ざめてく。


「いいじゃねーか。サンズ。お前団長と腕相撲したいって言っていただろ。」

 アレックスも顔が青かった。


「ぼくちゃんたちも逃げるなよ。」

 ヒロキは、なにやら打ち合わせして逃げる機会をうかがっている双子を見て言った。


「「…はーい」」

 アランとリランは沈んだ声で応えた。






 青筋を立てたジンを先頭に、ライガたちは町の酒場に向かった。

 完全に巡回だ。


 いつもは完全オフモードなのに、サンズとアレックスの顔がすさまじく凛々しい。


 町の人たちも何事かという顔をしていた。


「確かな経済力のあるお財布だけど…」

 リランは気まずそうにしていた。


「…全員で行けるのは、中々無いからな。」

 ヒロキはリランを見て笑った。


 おそらくヒロキはわかっているのだ。

 ライガが何を選ぼうとしているのか。

 それを思うと寂しい気持ちになった。


 酒場に着くと、なじみの店主と、いつも絡んでくれる女性たちが笑顔で迎えてくれたが、直ぐに表情は固まった。


「失礼する。」

 とジンが先頭で入ってきたからだ。


 普通に考えて包帯で顔を隠した男が入ってきたらびっくりする。

 まして、帝国騎士の精鋭たちがその後ろで縮こまっているのなら尚更だ。


「やあ。」

 アレックスは引きつった笑いで、店主たちに挨拶をした。


「なーに飲もうかなー」

 あからさまな棒読みでサンズは言った。


 店にいた女性がライガたちに駆け寄ってきた。


「ねえ、ライガ君。あの人誰?」

 女性も表情はただ混乱した顔をしていた。


「…彼は、私たちのリーダー。帝国騎士団団長よ。」

 ライガではなくミヤビが答えた。


「え?団長さん!!…てことは王族!?」

 女性は大声で驚いた。


 それを聞いた店主は慌ててジンの前に出て頭を下げた。

「いつもお世話になっています。団長さんとは知らずに…」


「いや、気にするな。世話になっているのはこいつらだ。」

 ジンは顎でアレックスとサンズを指した。

 二人は気まずそうに頷いていた。


「包帯は意味不明だけど、素敵な人ね。」

 ジンの対応を見て、ライガたちに話しかけた女性は微笑んだ。


「その包帯が決定的だと思うんだけどな…」

 マルコムはジンに聞かれないように呟いた。



 気まずさがあったが、お酒の力、アルコールの力は偉大だった。


 気まずさがあるからこそ、アルコールが回ると大惨事になる。


「聞いてくださいよー団長―。あの双子俺らに対する態度が悪いんですよー」

 サンズはアルコールが回りきって呂律の回らない様子でジンに言った。


「サンズさんだけですよ。」

「そうですよー」

 アランとリランはサンズを指さして言った。


「お前等未成年だよな。」

 ジンは双子を見て言った。



 アレックスは、いつもの調子で女性を口説きに行っている。ヒロキは女性に口説かれている。


「団長がいても、みんなあんな感じになるんだね。」

 マルコムはライガの横に来た。


「みたいだな。」

 ライガは思った以上にジンが仕事の時ほど威圧的でないことに安心していた。


「いいの?」

 マルコムはライガに囁くように訊いた。


「何が?」


「ミヤビ、口説かれているよ。」

 マルコムは、町の男に囲まれて飲んでいるミヤビを指した。


「いいんじゃないか?ミヤビも息抜きは必要だと思う。」

 ライガはみやびの様子を見て、なぜか安心していた。


「そうなんだ。…君って、鈍いよね。」

 マルコムはライガを横目で見て言った。


「え?」


「俺は君のそう言うところ好きだけどね。」

 マルコムは持ってるグラスの酒をちびちび飲んでいた。


「何だよ。急に。」


「君の、普通に周りを見ていそうで、気を遣ってそうに見えて自分のことしか考えていない所。そして、何か奥底に潜んでいる黒い面が見えそうで見えない所…」

 マルコムはライガを見てにやっと笑った。


「黒いならマルコムだろ。」

 ライガはマルコムに言われたことを聞いてどきりとしたが、彼の表情を見て安心した。


「ひどいな。」

 マルコムはグラスの酒を一気に飲んだ。


「さてと、俺はせっかくだから団長と腕相撲しようか。」

 マルコムは小柄ながらも逞しい腕を振りながらジンの元に向かった。


「命知らずね。マルコム。」

 気が付いたらミヤビが横にいた。


「ミヤビ。いいの?向こうの男の人たちミヤビが目当てだろ?」

 ライガはミヤビを口説いていた男たちを指した。


「いいの。私はこっちの方がいい。」

 ミヤビはライガにグラスを向けた。


 カチン

 とグラスをぶつけるとミヤビは満足したような表情をした。


「さっき、マルコムとどんな話していたの?」

 ミヤビはグラスを呷りながら訊いた。


「ああ、マルコムは俺のことが好きらしい。」

 ライガは簡単に言った。


「そんなの知っているわよ。私とマルコムはほとんどあんたの話しかしないんだから。」

 ミヤビはケラケラと笑った。


「そうなんだな。二人とも俺のこと好きだな。」

 ライガは冗談半分で言った。


「そうだよ。」

 ミヤビはグラスを置いてライガを見た。


「私も、ライガが好き。」

 ミヤビは目を細めて言った。

 アルコールのせいで潤んだ目と赤くなった頬が何とも言えず、やはりミヤビは美人だった。


「ありがとう。」

 ライガは笑顔で言うと、ミヤビは溜息をついた。

 だが、直ぐに満面の笑みを浮かべた。


「男前。あんたこれから覚悟しなさいよ。」

 肘でライガの腹をつついてミヤビはマルコムの元に向かった。



「一番の怪力はサンズさんで異論はないんですよ。でも、二番は俺じゃないかなと…」

 マルコムはジンの前に腕を差し出した。


「それは今度騎士団全員で腕っぷし比べをするということか。なるほど、お前の腕は太いな。俺だって、お前の腕力は認めている。」

 ジンは差し出されたマルコムの腕を持ち、調べるように触ってそして机に上に降ろした。


「団長!!わかっていない!!」

 ジンの後ろでサンズが叫んだ。


「なら、手本を見せてくれ。」

 ジンはサンズをマルコムの前に座らせた。


「おっし、マルコム。ここらで勝負をつけようじゃないか。」

 サンズはマルコムを見て不敵に笑った。


「サンズさんと勝負したかったわけじゃないんですけど、まあいいか。」

 マルコムは挑むようにサンズを見た。


 二人の周りにはアランとリランが踊りながらいた。


「さあ、因縁の勝負だ!!「騎士団一ムキムキサンズ」対「見た目で騙す腹黒隠れムキムキマルコム」。どっちに賭ける?」


「高い方を妨害するよ!!」


 アランとリランは酒場に来ている者たちに呼びかけるように言った。



「あれ賭けだろ。いつもなのか?」

 気が付いたらライガの横にいたジンが困ったように笑っていた。


ライガ:

帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。ミラと想い合っており、彼女と逃げることを決意した。父が前騎士団団長。


ミラ:

「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっている。ライガと思い合っており、彼と逃げることを決意した。


ジン:

帝国騎士団団長。最年少で団長に就く。精鋭部隊の隊長でもある。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。王族の人間。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。全体的に細長い印象のある顔の造りをしている。ジンが気を許している数少ない人物。元皇国の人間。前団長に拾われた。


マルコム:

精鋭部隊の一員。穏やかな青年。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。地方貴族の出。槍使いで、顔からは想像し難いほど筋肉質で、サンズに継ぐほどの力がある。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。ライガに何か想いがある。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。リランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。弟。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。アランと二人で「赤蠅あかばえ」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。兄。


サンズ:

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。見た目通り力が強く、騎士団一の怪力を誇る。貴族の出。精鋭では数少ない戦場経験者。



アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。普段の生活態度とは違い、堅実で手堅い戦い方をする。サンズ同様に戦場経験者。




アシ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。


イシュ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。


シューラ:

隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。


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