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宝物の彼女  作者: 近江 由
手を取り合う
20/135

魔窟の騎士

 

 騎士団団長のジンは、帝国の王族と貴族が中心の王都会、地方貴族や市民の有力者が中心の議会の代表たちと顔を合わせていた。

 正しく言うならジンは包帯を巻いているため顔を合わせているわけではない。


「警備の計画はどうなっている?」

 議会の者がジンに恐る恐る訊いた。


「当日までは隠しておこうと思っています。騎士団内だけで扱います。」

 ジンは淡々と答えた。


「そうか…」

 議会の者はどうやらジンが怖い様で、直ぐに引っ込んだ。


「おい。それはないのではないか?」

 王都会の貴族らしきものが異をとなえた。


「そうだ。情報を開示して、我々を安心させてほしいな。」

 同じく貴族らしき男が同意した。



「安心ですか?」

 ジンは鼻で笑いながら言った。


「だいたいお前は何だ?お宝様直属だからそんな面隠しを許しているが、いい加減それを取ったらどうだ?」

 ジンに異を唱えた貴族の男はジンを指差して言った。


 ジンは無言で口元に笑みを浮かべた。


「…いや、彼にはお宝様一族の対応を滞りなく任せるために騎士団の体制を変えた時に我々が命じたのだ。」

 王族の男が立ち上がって言った。


「ええ。元々は王室直属ですから、それから変更する時にこのような形にするよう王族と約束をしました。」

 ジンは自身の包帯を指差して言った。


「というわけだ。彼のこの姿は我々との契約と思ってくれていい。」

 王族の男はそう言うと座った。


 貴族の男は不満げにジンを見ていた。



「失礼します!!」

 顔合わせの場に一人の騎士が入ってきた。


「何だ?今は…」

 貴族の男が迷惑そうに声の元を見た。


「団長殿。直下部隊の騎士が戻って来て、急ぎの報告があるとのことです。」

 騎士は姿勢を正してジンに言った。


 騎士がジンにだけ敬意を表したような態度に貴族の男はさらに顔を顰めた。


「…入れろ。」

 ジンは騎士に言うと周りを見渡した。


「情報の共有ということで…ここで報告してもらいます。」

 ジンは有無を言わせない口調で言った。


 先ほどの騎士ともう一人、二人が入ってきた。


「!?」

 王族の者が息を呑んで新たに来た騎士を見た。


「…」

 ジンは黙ってその騎士を見た。


「失礼します。団長。報告があります。」

 入ってきた騎士はライガだった。






 ライガは通された話し合いの場所を見て、後悔した。


 見るからに狸おやじのような男たちがいる。


 目的の人物は、堂々と座ってライガに顔を向けていた。

「ライガ。報告は?」

 口元に笑みを浮かべてジンはライガに報告を促した。


「はい。街道沿いの詰め所に行きました。そこで、皇国軍の人間と応戦しました。」

 ライガの報告にざわついた。


「続けろ。」

 ジンはライガに続きを促すのと同時に周りに静まるような意図を込めて言った。


 ジンの声で静まった。


「えっと、お宝様の一族の者が、訴えに来ていたのを勘付かれて狙われました。ですが、それは片付けたので大丈夫です。」


 ジンはライガの報告に顔色を変えなかった。

 周りの者は大げさに顔色を変えているが


「一族の者は…もう王家に嫁がせるのを止めると言っていました。」

 ライガの言葉に王族が立ち上がった。


「何を?」


「これは、頼みではなく脅しだと言っていました。どういう意図があるのかわかりませんが…」

 ライガは今回のお宝様で終わりという言葉は飛ばした。


「誰のお陰で守られて暮らせていると思っているのだ。図々しい一族め。」

 王族の男は苦い顔をして吐き捨てるように言った。


「それは私も同感ですな。」

 貴族の男が手を挙げて言った。


「ほう。やはりそう思うか。」

 一族に対する暴言を吐いた王族の男は貴族の男を見て、安心したように頷いた。


「王族が独占するのは良くない。だいたい、一族の力があるのが前提で持っている帝国だ。一族が離れるかもしれないのに、王族との婚姻を続けるのはおかしい。」

 貴族の男はどうやら一族の主張に同意したようだ。


「何だと?」

 王族の男は貴族の男を睨んだ。


「…では、自分はここで下がらせていただきます。」

 ジンは王族と貴族の喧嘩が始まるとすぐに立ち上がり、礼をした。


 彼と同じように地方貴族の者や町の有力者たちも席を立って礼をして去ろうとした。


 ジンはライガの前に行き


「来い。他にもあるだろ?」

 と笑みを浮かべて言った。


 ライガは頷いて、彼に続いた。


 


「けが人はいないな。」

 歩きながらジンはライガに訊いた。


「はい。」


「皇国のやつらは、誰の差し金で来たと言っていた?」

 ジンは、皇国の者たちの後ろには皇国以外がいると断定しているように訊いた。


「え?…いや、それは。」


「ならいい。他に何かあるか?」

 ジンは立ち止まってライガを探る様に見た。見たわけではないが顔を向けた。


「儀式のこと…知っていますか?」

 ライガも探る様にジンを見た。


「知っている。…ひどく残酷な話だ。」

 ジンは表情を変えずに淡々と言った。


「…儀式というよりかは祭典という噂ですけど…」


「誰から聞いた?」

 ジンは祭典という言葉に引っかかった。


「え?」


「…決まってまだ間もない話だ。大げさな儀式にしては、俺に話が下ったのも数週間前だ。」

 ジンは首を傾げてライガを見ていた。


「警備は、騎士団なんですよね。」


「それ以外どこがやる?」


「俺たちはどこを守るんですか?」


「…お前らは王族とお宝様だ。」

 ジンは何かを探ろうとしているのか、ライガを見ている。


「団長は?」


「無意識にお前等の中に俺は入れていないんだな。」

 ジンは一瞬だが寂しそうに笑った。


「いえ、そんなことは…」


「その考えは正しい。俺はとりあえず王族という扱いらしい。」

 ジンはライガを見て笑った。


「…とりあえず…」


「ああ。守ってくれよ。」

 ジンはライガの肩を叩いてから歩き出した。



ライガ:

帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。


ミラ:

「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっている。ライガとは相思相愛。


ジン:

帝国騎士団団長。最年少で団長に就く。精鋭部隊の隊長でもある。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。王族の人間。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。全体的に細長い印象のある顔の造りをしている。ジンが気を許している数少ない人物。ライガとミラの関係に好意的。


マルコム:

精鋭部隊の一員。穏やかな青年。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。弟。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。兄。


サンズ:

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。


アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。




アシ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。


イシュ:

隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。


シューラ:

隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。



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